へるげえむアリス

原作 @Hishokan_kongo 非許可の転載を禁止致します。
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はるか @Kurosu_Haruka

「え……それって」 「『三人殺したら合格』のね」  そうニヤついたのは髪の長い綺麗な女性だった。そして、わたしが口を開きかけた瞬間、背中に衝撃が走り、正面のフェンスまで何メートルも吹き飛ばされる。 「……あぐっ!?」 「あはは。まだ意識あるんだぁ」 「こ、こいつ! よくも!」

2017-03-24 16:17:26
はるか @Kurosu_Haruka

「そーれ、とどめぇ!」  「はっ…!?」  起き上がった、わたしの腕に何かがへばりついた。小さなてんとう虫のような何か。  わたしは本能的に感じ取る。  ──こいつが爆発するんだ。 「死んじゃえ!」  衝撃と爆発音。目の前を煙が覆うが、わたしはその中を突き進み、女の眼前へ飛び出す

2017-03-24 16:20:23
はるか @Kurosu_Haruka

「お前、なんで無事なん……」  女が言い切る前に、わたしは作り出した刀を振り下ろす。女の胸元から激しく鮮血があたりに飛び散る。 「あのてんとう虫ボムは……張り付いたら剥がれねぇはずなのに……」 「肉ごと引きちぎったの」  わたしは血の滴る右腕を、倒れた女に向ける。

2017-03-24 16:23:29
はるか @Kurosu_Haruka

「痛くねぇのかよ……」 「うん、全然」  わたしは女の喉に刀を突き刺し、引き抜く。ごぽごぽと嫌な音が彼女の喉から響いた。 「背中の傷もね、普通の人なら痛くてたまんなかっただろうね」  わたしは痙攣する女に背を向け、片膝をつく。 「能力は戻ってるみたいだけどぉ……」

2017-03-24 16:26:01
はるか @Kurosu_Haruka

腕と背中の血が止まらない。体力や頑丈さは普通の人間よりも遥かに上だろう。しかし、この出血では、あまり長くはもたないかもしれない。 「まあ、女の子の日よりはマシかな」  貧血なれてるし、わたしはそう呟き、屋上の建屋の扉を開き、ビルの中へと入り込んだ。

2017-03-24 16:28:00
はるか @Kurosu_Haruka

なかなか強かったなぁ、爆弾使い。背中の血止まんない。どうしようかな〜。他に二人能力者を倒せば、何か変わるのかな。そもそもこの場所どこなんだろう

2017-03-24 16:32:31
はるか @Kurosu_Haruka

でもあの白い女の人のくちぶりじゃ、あと二人倒さなきゃ、わたしまた死んじゃうんだろうなぁ。そういう能力化何かで縛られてる。気がする。生きてる理由なんてないけれど、友達には会いたいし、他人にころされちゃうのも嬉しくないし、まあ、しょうがないよね

2017-03-24 16:34:17
はるか @Kurosu_Haruka

あと二人。申し訳ないけれど、倒させてもらうから

2017-03-24 16:34:47
はるか @Kurosu_Haruka

どうやら入ったのはオフィスビル。最上階のフロアに人の気配はない。わたしは少しわくわくしてきた。これは不法侵入かもしれないが、能力により転送されてきたので不可抗力だ。 「よし、わくわくする! 探検しよう!」  しかし、わたしはそこで足を止める。 「……このビル、不自然だ」

2017-03-24 16:38:16
はるか @Kurosu_Haruka

そもそもオフィスビルの屋上の建屋が施錠されていないわけがない。そして目の前の窓。"外が"ない。 「これってまさか……」  そうだ。このビル自体がおそらく、能力で作られたものに違いない。 「そういえば、屋上の周りって、どうな──」 「いぎゃああああああああああああああ!!!!!」

2017-03-24 16:41:00
はるか @Kurosu_Haruka

外は黒い何もない空間。そんな閉鎖されたビルの中に断末魔のような叫びが満ち、わたしは驚きのあまり後ずさる。 「な、なに、なんなの、わたしサプライズ系ホラーは苦手なのに」  状況から単純に考えると能力者同士が戦い、どちらかが敗れたのだろう。

2017-03-24 16:43:52
はるか @Kurosu_Haruka

何が起きているのか確認しに行こうか迷っていると、廊下の先に青い制服の女が姿を現した。 「あ…あなたは」「あなたは」  わたしと女は同時に声を漏らす。 「死ねぇ!!!」 「うわあ……!」  女の放ってきた銀色に輝く無数の何か。わたしはそれをよく知っていた。手にした刀ですべて弾く。

2017-03-24 16:45:56
はるか @Kurosu_Haruka

弾かれた銀色の長く太い針。 ──これは千本。 「こ、こおろぎ先輩!」 「アリス、あなた、よく私の前に顔を見せられましたわね!」 「先輩の千本のおかげで、わたし貞操を守れましたっ!!!」 「知りませんわよ、ボケェ!」  こおろぎ先輩は怒り狂った表情で再び無数の千本を放ってくる。

2017-03-24 16:48:09
はるか @Kurosu_Haruka

「う、うわわ……!?」  必死に刀を振り、千本を叩き落とす。しかし、数の暴力には逆らえず、数本腹部に刺さってしまった。 「こ、こおろぎ先輩も生き返ってたんですね! やったぁ! 嬉しいなぁ!」 「私をぶっ殺しておいてよく言えましたわね!」 「あ、あれは正当防衛でしょ……!」

2017-03-24 16:50:28
はるか @Kurosu_Haruka

「後ろから斬りつけておいて正当防衛もなにもなくってよ!」 「そ、そんなのこれから戦うって決めてたのに背中向ける先輩がアホなんじゃないですかぁ……!!」 「今度は同じ手にはかかりませんわよ!」 「こっちこそ、背中に致命傷負ったくせに、さんざん抵抗されて体中ボロボロにされたんです!」

2017-03-24 16:54:24
はるか @Kurosu_Haruka

「それは抵抗しますわよね!?」 「おとなしく不意打ちで死んでくれてたら、わたしは死ななくて済んだのに!」 「ふざけんじゃなくってよ……!」 「ふざけてません、本気です!!」 「余計、悪いわ!」  こおろぎはこれ以上ないかといった怒りの表情で我武者羅に千本を投げつけてくる。

2017-03-24 16:57:38
はるか @Kurosu_Haruka

「死ねえ、アリスううううう!!!」 「ひいいいい、ごめんなさああい……!」  正直、こおろぎ先輩相手では分が悪い。なにせ、不意をついて後ろから斬りつけた上で全身を串刺しにされたのだ。それが致命傷となり、わたしが一度死ぬ要因となった。そういえば、あの男の子も生き返え──

2017-03-24 16:59:29
はるか @Kurosu_Haruka

「死ねえええええええええ!!!!!!」  わたしの思考は先輩の怒りに満ち満ちた叫びで掻き消された。このまま千本を受け続けるのは不可能と考え、わたしは近くの部屋へと入り込む。 「な、何をあんなに怒ってるんだろう……生理重いの? 信じられない……」  いや、ころされたら誰でも怒るか。

2017-03-24 17:01:34
はるか @Kurosu_Haruka

「一対一の決闘の美学とかわけのわからない価値観押しつけてきて、背中を向けて数歩進んでせーのでバトル? 冗談じゃないよね……」  こおろぎ先輩に強引に承諾させられた決闘。わたしはすぐさま振り返り、彼女の背中を深々と斬りつけたのだ。

2017-03-24 17:04:30
はるか @Kurosu_Haruka

「か、勝手にルールおしつけてきて、こっちのルールで戦ったら、キレられたらたまんないよ……!」 「出てきなさい、アリス! 出てこなければ!こっちからいきますわよ!」 「ルールは、わたしが決める!!!!!」  わたしは半身を部屋の外へだし、こおろぎへ思い切り刀を投げつける。

2017-03-24 17:07:10
はるか @Kurosu_Haruka

「ごふゅ……!」  気の抜けるような声とともに、こおろぎ先輩は廊下に倒れ込んだ。腹部にわたしの放った刀が突き刺さっている。 「先輩、痛いですか?」 「この……クソガキ……」  こおろぎはわたしに向けて、ひたすら千本を投げてくるが、部屋に戻れば壁が立てになりこちらには届かない。

2017-03-24 17:09:39
はるか @Kurosu_Haruka

「ま、待ってください! 提案があります!」 「あ、あん!? さっさと私を殺して去るか、私にぶっ殺されなさい!」 「共闘しませんか!」 「はぁ!? 腹に刀、ぶっ刺す前に聞きたかったですわね!」 「まあまあ、それは正当防衛ですから」 「ふざけんじゃなくってよ……!?」

2017-03-24 17:12:09
はるか @Kurosu_Haruka

「そもそもですよ、わたしはこちらから戦おうなんてしてなかったじゃないですか」 「そ、それはまあそうですが」 「勝手に挑んで来て勝手に負けておいて、わたしにキレるのって良い迷惑だし、わけわかんないですよね」 「こ、こいつ、言わせておけば」 「こおろぎ先輩は理不尽です!!!!」

2017-03-24 17:14:11
はるか @Kurosu_Haruka

「は!? 私が理不尽ですって!?」 「そうです。わたしの命を脅かそうとするから、返り討ちにあうんです」 「あなた、それは──」 「わたしたちは分かり合えるはず!!!」 「……!?」 「このよく分からない状況で巡り会えた先輩と後輩! 知り合いなんです!!!」 「そ、そうだけど」

2017-03-24 17:18:03
はるか @Kurosu_Haruka

「いいですか、先輩。わたしは運命を感じます。この状況で旧知の相手と出会えたの、まさに共闘をしろという運命の女神からのおぼしめし」 「そ、そうなのかしら」 「そうです!!!!!!!」  わたしは廊下に飛び出し、先輩のもとへとゆっくりと足をすすめる。 「わたしに敵意はありません」

2017-03-24 17:19:27
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