フォビドゥンフォレスト４話「大規模作戦・発動！」#8 「作戦会議」

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まとめを更新しました。「フォビドゥンフォレスト４話「大規模作戦・発動！」#7 「西条憐治」」 togetter.com/li/1097644

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（森の妖怪と討伐組織・僚勇会が人知れず戦い続ける町、風科。高校生の少年・片桐春夏は幼馴染や大人達と共に戦っている。新種妖怪や人里への敵の出現が起きた激動の週の金曜、英国で修行していた少年・鳩寺望が帰還した。これに合わせて、若手精鋭部隊の隊長、西条佐祐里はある作戦を準備していた）

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2017-02-05 01:03:33

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土曜日１３時。風科公民館。旧風科中学校を再利用した施設である。風科中学校は生徒数の減少と南の高月に中高一貫の風見学園が出来たことで廃校になった。同時期に旧公民館の建て替え予定が来ていた為、この様な運びになった。今では校庭は公園代わりに、校舎や体育館を公民館に使っている。 1

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そして体育館部分は、僚勇会の大規模な集会にも使用している。彼らの本拠地は風科の地下にあるが、結界維持施設や訓練所の空間を優先した結果、数百人規模で余裕を持って集まれる場所が無いのだ。事前に防音や危険物対策の必要があるのが難点だが、幸いこの規模の集会は年数回しか無い。 2

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今日は約５００名の僚勇会メンバーがパイプ椅子に着席し、椅子数脚につき長テーブルが置かれている。僚勇会の関係者は風科の総人口３千名の約４割、１２００名ほどだが、その半数近くが来ていることになる。大半は正規メンバーだ。こちらは総員約７００名なので約７割ということになる。 3

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特に戦闘員は本部や森を護る最小限以外は、ほぼ全員参加だ。この規模の集会は約半年ぶりだったが、参加者の表情は落ち着いたものだった。談笑したり、弁当などを広げて昼食を食べている者も少なくない。事前に大体の内容を聞かされている為である。動員規模こそ大きいがやることは施設整備だ。 4

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やがて、ぷつ…ぷつという音に続いて古いスピーカーから開会５分前のアナウンスが入る。一同が各々テーブルに広げていた物を片付け準備を終えた頃、僚勇会会長である篠森が数名を伴い壇上に登った。その中には、今回の作戦の立案者である西条佐祐里の姿もあった。 5

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篠森が立ち上がり開会の挨拶をする。 「皆さん、本日はお集まり頂きありがとうございます。特に今週は不測の事態が続きご多忙の中、ご出席頂いたこと感謝に堪えません」 出席者たちにとって篠森は上司…雇用主や依頼主に当たるのだが、彼は戦闘時以外はこの様に丁寧語や敬語で話す。 6

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「今、森で起きている異変については未だ不明点も多く継続調査中ですが、今日はこの件と関連した設備計画のお話となります。続きは発案者である佐祐里くんにお願いしましょう。皆さんも若い女の子の話のほうが良いでしょう？」 軽く笑いが起きる。篠森の話は１分と経たない手短さで終わった。 7

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彼らは森に何かを敷設するとは聞いていたが、それが『砦』だとは思っていなかったのだ。彼らの驚きに共感するには砦などの設備とと森の地形についての説明が必要となる。 8

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まずは風科の北、禁忌の森の地形について説明しよう。森の西側には岩橋地区とを隔てる岩山があり、森の地形も岩がちで高低差が激しい。一方、村井地区と川越しに接する東エリアは森が深くなる。そして中央は森の奥の北から、風科の人里のある南へとなだらかに傾斜する開けた場所だ。 9 pic.twitter.com/qzZ5Zl2e3Z

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僚勇会が森の奥へ向かう場合は、東西を目指す場合でもこの中央を経由して行くのが基本である。西の岩場も東の密林も環境が過酷かつ敵の奇襲を受けやすい。一方で広い中央は車両類を入れられる上に休憩所も作りやすい。森林も緊急時に敵から身を隠せる程度にはある。安全性が高いのだ。 10

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ただし、それは雪が十分に溶けた４月以降の話だ。開けた中央には遮るものがなく雪が深く積もる。しかもなだらかとは言え、一様に南へ傾斜している…つまり雪崩の危険があるのだ。月曜の事件で中央を通らなかったのもそういう訳である。移動しづらくとも冬場は東西のほうが安全なのだ。 11

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…設備についても説明しよう。森の中の設備には、木に擬態して食料や武器を貯蔵し、他の設備の位置を教えるランドマークでもある「ツリー」や、妖怪避けの結界が施された休憩所、呼んで字のごとく「山小屋」などの他にも、武装山小屋「砦」と監視所兼狙撃ポイントの「櫓」がある。 12

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砦は山小屋の倍ほどのサイズで対妖怪用の大砲や機関銃などで武装されており、人が数日交代で常駐して、大群の強襲に備えるものである。大型であることと周囲の見通しの良さが望まれることから森内部では中央エリアのみに敷設される。櫓はこの砦や山小屋の周囲に立てる見張り台だ。 13

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１月現在、ツリーは森全体に１００以上、山小屋は大小合わせて２０以上、櫓は４０以上あるが、砦はずっと少ない。森入口には居住性と備蓄空間を減らした簡易量産型が複数あるが、それを除けば森の中には２つしか残っていない。それも片方は雪の降る前の秋に何とか敷設が間に合ったばかりだ。 14

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森の深部・レベル３と４のニ箇所への砦の敷設は、急務ではある。しかし砦自体はモジュール化されており組み立て自体は容易いが、雪が邪魔となり運ぶのが難しい。川も半ば凍って船が使えない。更には森の深部での作業には瘴気を防ぐ防護服が必要であるが、これが動きにくい。 15

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現状では雪解けを待つしか無い筈で、隊員達は今砦を建てるのは性急だと思ったのだ。だがこのような事情は当然彼女も把握していた。 「ご存知の通り、砦は本来なら雪解けの始まる３月後半から再敷設を行う予定でしたが…」 佐祐里の背後、地図を映していたプロジェクターの映像が切り替わる。 16

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言わずもがな、月曜日に発覚した新種のバケグモが関わった大量捕食事件の概要である。皆、承知のことだ。映像は更に切り替わる。水曜に起きた姑獲蝶の里への侵入事件だ。こちらは片桐を始めとする皆の即応により犠牲者こそ出なかったが、この２つの事件は大きな謎と課題を残していた。 17

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どちらの事件にも共通項がある。月曜の事件では被害者達が森の中に、水曜の事件では姑獲蝶が森の外へと、結界と監視システムをすり抜けて移動しているのだ。直ちに両機構の総点検が実施されたが異常は認められず、今も真相は不明である…と佐祐里は経過を手短に説明し、話を次に進めた。 18

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「昨年の件も含め、森に異変が生じていることは充分に考えられますが、調査をしようにも、私達は深部の拠点を失ったままです。そこで、以前から検討していた再敷設計画を前倒しで進めることにしました。来週は、まずはレベル３に砦を敷設します」 映像がまた森の略地図に変わる。 19

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「今回は部隊を２つに分け、１隊は境川を遡上して資材と食料だけを運び、もう１隊は事前の除雪作業の上で、徒歩で敷設地点に来て頂きます。楽ではありませんが、荷物を最小にすることで負荷とリスクを軽減できます。こうして敷設した砦を拠点に次回はレベル４に砦を敷設する算段です」 20 pic.twitter.com/2XB4CTsAtU

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再びどよめきが起こる。境川は冬の間は半ば凍っているが、その凍り方は一様ではない。曲がりくねり、無数の小支流に分かれるこの大河の氷は厚さ２ｍを超える所もあれば、数ｃｍの部分もある。地元民の警告を無視して氷上で遊んで転落する余所者が毎年必ずおり、死者も珍しくない程だ。 21