戦闘ロボのAIについて、あるいはガンダム・センチネルのラストシューティングにおけるデザインと物語

インクエッジ @02Curry

現実には人格アピールしない無人兵器でも兵士の情がうつってヤバいというハナシなので、戦闘兵器から感情芸が遠ざけられるのならそれは日本じゃなく米国や中国から率先するようになるんじゃないの。

インクエッジ @02Curry

結局のところフィクションの戦闘用ロボの感情AI搭載はその「情がうつる」というところに価値が置かれているだけで、「感情がある」のではなく「感情アピールすることでヒーロー性が備わる」というものを求めているんでしょう？ チェインバーはまさしくAIの芸がヒーロー性発露に結びついていた。

インクエッジ @02Curry

いかに戦闘ロボが人間臭く感情を表現しても、それがヒーロー活劇の心地良さに貢献しなければヒーロー活劇ファンには訴求しない(革命機ヴァルヴレイヴだ！)し、たとえ一言も喋らず感情アピールを一切せずとも「ヒーロー性を発揮するタイプの自律行動」はおおいに支持される。語りかけずとも

インクエッジ @02Curry

搭乗者の危機を察してコクピットブロック強制パージして自己犠牲の特攻をすれば「グッ」とくる。それがヒーロー活劇システム。ガンダムセンチネルのお話もストレートにその型だ。 「ALICEは今、人だった。」

インクエッジ @02Curry

ガンダムセンチネルのフォトストーリー連載最終回にオレが「グッ」ときたのは、それがヒーロー自己犠牲の型、かつロボットが死をもって人になる型、というだけでなく「おもちゃガンダムのギミックがその物語性を体現した」というところが最大だ。このオレの「見どころ」はいつも言ってるやつだ。

インクエッジ @02Curry

おもちゃ販促プログラムであろうが、ロボデザインが先にありきであろうが、そのデザインが交換不可能・唯一無二のものとして物語(チャンバラ性の充実に非らず)活かされるのがオレとしては最高の醍醐味。ガンダムのコアブロックシステムがパイロットを排除してのAI管制下での特攻を可能にするが、

インクエッジ @02Curry

そこまでなら他のコアブロックシステム搭載型ガンダムならどれでもできることだが、センチネルは主役機が他の何でもないSガンダムだからこそ成立する物語が描かれた。それはパイロット排除の仕組みと関係のない「ビームスマートガン」だ。関係なかったものが有機的に組み合わさり物語が視覚化される。

インクエッジ @02Curry

「特攻」といっても体当たりでなく射撃、所謂「ラストシューティング」っていう伝統芸。反乱組織ニューディサイズが地球降下を目論み、Sガンダムを擁する連邦追撃部隊と地球上空で決戦する。激闘のうちに高度が下がって大気圏再突入スレスレになる。それでも戦い続けかれらを阻止して燃え尽きるか、

インクエッジ @02Curry

生還のため戦闘放棄して彼らを見過ごすか。継戦していたパイロット達(Sガンダムは3人乗り)の意に反し、Sガンダムは分離してコアブロックを再突入させてしまう。Sガンダムは自我を持つロボットだ。あえて情緒豊かな落ちこぼれパイロットがあてがわれ、それを観察することで情操教育が成され、

インクエッジ @02Curry

搭載AI・ALICEは愛すべき愚かな彼らを救いたいと願ったのだ。上半身のAパーツ、腹のコアブロック(Cパーツと呼ばれる)、下半身のBパーツにバラバラになって、単体では大気圏再突入可能なコアブロックだけを地上に飛ばす。そしてALICEはバラバラになったまま、「Aパーツに備わる腕で」

インクエッジ @02Curry

「Bパーツ腰部に備わるビームスマートガンを構え」まんまと地球降下していく敵機に燃え尽きながら最後の砲撃を敢行する。…人でなかったものがついに人になる、という物語が、このSガンダムのラストシューティングの体勢、バラバラのパーツが「人のかたち」を一瞬成す、というところに表されている。

インクエッジ @02Curry

この成り行きは「銃を操作する腕」が上半身Aパーツ側、「銃そのもの」が下半身Bパーツ側に直結固定されてるSガンダムのビームスマートガンのデザインなくしては不可能なのよね。だって「銃を持つ腕を備える上半身だけ」で射撃ができてしまうから。仮に下半身に武装があってもバラバラのままでいい。

インクエッジ @02Curry

「上半身の腕が下半身に固定された銃を構える」Sガンダムのメインウェポン・ビームスマートガン。ALICE本人としてはただ射撃を目論み遂行しただけなのに、その操作が「意図せざるまま」Sガンダムを再び人間の形を纏った「ようにみえる」体勢を生んだ。この行為をもってALICEは人になった。

インクエッジ @02Curry

大気圏再突入しながら、排除されたパイロットの青年達はALICEのその人の姿を目撃する。ガンダムセンチネルはガンダムでありながらも正統ロボット的な人と人非ざる者のお話であり、そしてその定義は観測によって成されるのだということが、主役ロボのおもちゃ丸出しの機能をもって描かれた。凄い。

インクエッジ @02Curry

コアブロックシステムだけじゃもちろんダメ、パージする際バラバラにならないものもダメ。行動として無意味な再合体もダメ。物干し竿のようなビームスマートガンを構えたとき、上半身と下半身は接続されておらず胴体がぽっかり空間いている…それが「人でないものが人に見える」ロボットの真髄を生む。

インクエッジ @02Curry

ガンダムセンチネルの物語はSガンダム以外のどのガンダムタイプのデザインでも成り立たない。もっとカッコイイロボットや今ふうのロボットやリアリティあるロボットやバトルアクションが充実するロボットデザインなんかに差し替えたら、人と人非ざる者の物語が成り立たない。こういうのが「凄い」。