カロウシ・ノー・リモース #3

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆「イヤーッ!」KRAASH!ガラスドアを蹴り破り、ニンジャスレイヤーが運転室にエントリーした。だがエッジウォーカーは哄笑した!「どうやら最後に笑うのは俺のようだな!ニンジャスレイヤー=サン!運転者など、もはやおらんぞ!」そしてフロントガラスを拳で叩き割ったのだ!◆

2017-04-14 22:00:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴウウウ!たちまち叩きつけるような風が入り込んだ。壁めいた空気の塊に押されてニンジャスレイヤーは一瞬怯んだ。「イヤーッ!」KRAAASH!エッジウォーカーは肘打ちで運転器具を無惨に破壊し、この先頭車両の運行を不可能なものとした。「この車両は貴様の鉄のカンオケだ!」 1

2017-04-14 22:05:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」驚くべき俊敏性を発揮し、エッジウォーカーは破砕したフロントガラスをくぐって前へ出ると、ニンジャスレイヤーの攻撃を躱しながら上に消えた!「サラバ!」哄笑を残して!ニンジャスレイヤーは舌打ちし、上がり続けるスピードメーター、へし折れたハンドルを睨んだ。 2

2017-04-14 22:08:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

切迫した事態だ。遅かれ早かれ、路線の前方に位置している別の電車に後方から追突し、凄まじい惨事が引き起こされる。そしてエッジウォーカーは……否!ニンジャといえど、トップスピードの電車から無傷で飛び降りる事は不可能。ましてここはトンネル内だ。逃げ場はまだ無い。 3

2017-04-14 22:12:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーのニューロンをニンジャアドレナリンが極度刺激した。鈍化した時間の中で、彼は火を噴くほどに脳を酷使し、状況判断した。(できるか?)彼は自問した。(否、やるのだ!)「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはエッジウォーカーのように破砕ガラスから飛び出し、上の窓枠を掴んだ!4

2017-04-14 22:15:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」身体を折り曲げ、電車の屋根の上に跳び上がる!「イヤーッ!」ナムサン!エッジウォーカーはニンジャスレイヤーのこの行動を織り込んでいた。あらかじめ屋根上で身構えていた彼は、現れたニンジャスレイヤーの首をボトルネックカットチョップでアンブッシュする!「イヤーッ!」 5

2017-04-14 22:21:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エッジウォーカーの逃走は二段階の計画だった。プロセス1、まず屋根の上で待機し、ニンジャスレイヤーが追ってくれば無防備状態に攻撃を仕掛け、殺す!プロセス2、そして適切な場所に差し掛かった時点で電車を捨てる!追ってこなければプロセス1を省略し2に進むフローチャートである! 6

2017-04-14 22:23:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

非情なチョップは音速付近に至り、熱を帯びて、跳ね上がるニンジャスレイヤーに迫った。ニンジャスレイヤーの目が燃えた。「イヤーッ!」ギャリイイン!異な音にエッジウォーカーは目を見開く。ニンジャスレイヤーは空中で体を丸めながらチョップを受け、反動を利用して高く跳んだ!「イヤーッ!」7

2017-04-14 22:28:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

センコ花火めいた眼光軌跡が闇に刻まれた。「バカめ」エッジウォーカーは目を細めた。狭く低いトンネル空間で全力跳躍など命取り以外の何物でもない。この速度で天井部へ接触しようものならニンジャといえどネギトロめいて削られ、潰れるだけだ。故にこそエッジウォーカーは逃走を留まり……「何?」8

2017-04-14 22:32:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イイイイヤアアーッ!」ニンジャスレイヤーはネギトロとならなかった。エッジウォーカーは目を疑った。彼の網膜に、天井を逆さに走る赤黒の炎の姿が焼き付いた。跳躍し、天井を……それは一瞬の事だった。一瞬の事だったが……「バカな!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーが跳んだ!電車へ! 9

2017-04-14 22:35:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!?」エッジウォーカーは隕石めいて叩きつけられた上からの跳び回し蹴りを受けてその首を120度回転させた。遅れて首から下のキリモミ回転が続いた。ニンジャスレイヤーは滑るように屋根に着地し、倒れ込む敵を睨む。天井に刻まれた炎の線はあっという間に後ろに消えた。10

2017-04-14 22:39:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」エッジウォーカーは屋根の淵までバウンドしながら、かろうじて受け身を取り、転落死を免れる。だがニンジャスレイヤーはその瞬間、すでにビーチフラッグ競技めいて、振り返りながらのロケットスタートを開始していた。カラテを構えようとするエッジウォーカーに、彼は襲い掛かった。11

2017-04-14 22:42:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イイイヤアーッ!」それはまるで怒り狂った獣だった。エッジウォーカーは何故己がこのような憤怒に晒されるのか不可解に感じた。ガードが間に合わない。ニンジャスレイヤーの右手がエッジウォーカーの胸を打った。彼は後ろへ吹き飛ばされ……なかった。右手は胸を貫き、そのまま彼を吊り上げた。12

2017-04-14 22:46:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバッ…アバーッ!?」エッジウォーカーは血を吐いた。高速走行する電車の屋根の上で、ニンジャスレイヤーはエッジウォーカーの胸に右腕を上腕までうずめて持ち上げた。エッジウォーカーの背中からは貫いた右手の先が生え、摘出心臓を掴む。「サツガイという男を知っているな」「アバーッ!」13

2017-04-14 22:51:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは左手でエッジウォーカーの頭を掴む。黒炎が注ぎ込まれ、瀕死のニンジャの目は熱で濁り、メンポ呼吸孔から煙が噴き出す。「すぐに死にたければ話せ。貴様の同胞ブラスハートは、サツガイの居場所を知るすべを持っている筈」「そんな……アバーッ!」「ブラスハートはどこだ!」14

2017-04-14 22:54:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「奴の居場所は……知らない……」ジゴクの炎に自我を焼かれ、エッジウォーカーは朦朧と、己の知る答えを垂れ流す。「だが奴らは連絡を取り合っていた……あの三人……ブラスハート……エゾテリスム……デシケイター……特にカラテやジツに長けたあいつらは……サツガイの秘密を……きっと……」15

2017-04-14 23:01:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「デシケイター」ニンジャスレイヤーの目が光った。ゴウ……風が吹き抜け、電車はトンネルを抜け出た。なかば炭化したエッジウォーカーを、ニンジャスレイヤーは振り払った。「サヨナラ!」爆発四散!世界が開け、レールは急角度で上に勾配する。頭上にはスモッグ。眼下にはネオサイタマの夜景。16

2017-04-14 23:04:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

高低差の激しい歪なエリアを、たった一両の電車が走る。タマ・リバーを越える高架だ。川面には無限のネオンライトが映り込み、滲んでいた。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは後ろに飛び降り、レール上に着地した。乗客を満載した電車が走り去る。ニンジャスレイヤーは引きずられ始めた。何故に!17

2017-04-14 23:07:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン。水上スキーめいた姿勢で両脚を前に出し、足元から火花を噴き上げながら、ニンジャスレイヤーはレールの上を滑っていた。彼の腕からは燃える縄が一直線に伸び、尖端部の鉤爪で暴走車両の後部をがっきと噛んでいた。一つではない。右腕と左腕。それぞれから放たれた二つのフックロープだ!18

2017-04-14 23:12:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タカマバシ駅はタマ・リバーを渡った先、目と鼻の先。先行の電車が停止し、乗客の乗り降りの最中だ。ホームには異常事態が伝わり、なかば暴動状態となっている。ニンジャスレイヤーは体をねじり、速度に抵抗した。電車はミシミシと軋み音を発し始めた。赤黒の装束に縄めいた筋肉が盛り上がった。19

2017-04-14 23:17:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((マスラダ……くだらぬぞ!)))ナラクが呪った。(((ニンジャに関係無し!いわんやサツガイをや!)))「黙れ」ニンジャスレイヤーははねつけた。「黙れ……黙れ!」見開かれた目から赤黒の炎が噴き出し、その背がブスブスと音を立てて爆ぜ始める!「イイイイ……イイイイヤアアーッ!」20

2017-04-14 23:20:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

筋繊維が爆ぜ、血が噴き出し、その血が燃えて装束を再生し、不浄の力をなお与える。破滅的なサイクルを自ら引き起こしながら、ジゴクめいた男は叫び続けた。ゴギン……ゴギン……ゴギン……ゴギン。ゴギン。電車の速度が緩み始めた。ゴギン。ゴギン。ゴギン。電車が……止まった。 21

2017-04-14 23:24:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サラリマン達が状況を知るには車内は混雑し過ぎていた。彼らはただ、確定的な死に向かって猛スピードで導かれつつあった事、何らかの要因でその結末から逃れたという事実を漠然と感じただけだ。車体を引っ張るフックロープが燃え落ち、高架からタマ・リバーにニンジャが落下した事も知らぬままに。22

2017-04-14 23:32:36