これは結晶の状態じゃないとなぜ「ファントム(幽霊)」という名が付いてるか分かりにくいですが、水晶の結晶が出来て、その外側に透明度の低い鉱物が薄く沈着して、その外側にまた水晶が結晶することで、水晶の結晶内部に別の水晶があるような見た目になるんですね。日本語だと中の結晶のてっぺんが山みたいだから「山入り水晶」と言いますが、そのまんま「幽霊水晶」と呼ばれることもあります。
写真のものもほぼ同じ機序でできたものと思われますが、水晶じゃない鉱物が厚すぎる上に何層にも重なった結果としてこんな格好になったと推定され、たぶん結晶そのままではパッとしない見た目だっただろうと思います(山入り水晶とは呼んでもらえないかも)。ミルフィーユの断面は、切って初めて見えるのです。
【草入り水晶(ガーデン・クォーツ)】
クロライト入り水晶(同じ石の方向違い3枚) pic.twitter.com/2WF26XCk0u
2017-04-17 03:45:05水晶に緑泥石(クロライト)などの主に緑色の鉱物が混じり込んだもの。写真のものは緑色の成分がほとんどないですが、恐らく緑泥石の色違いではないかと思われます。色や形からは「草入り」というより「海底」という風合いで、ガーデン・クォーツ呼ばわりしていいものか迷いますが、「ガーデン・クォーツは多様性が魅力」ということなので、まぁこれもガーデンなんでしょう。
これも分類としては草入り水晶に入るんでしょうけど、これまた「草入り」というよりは「乾燥梅干しの入ったスッパイマン梅キャンディー」といった装いであまり草っぽくないです。写真だとちょっと分かりにくいですが、本当に乾燥梅干しくらいの大きさで乾燥梅干しっぽい赤色の石(一部顔を出してる似た部分の質感は泥岩っぽい)が封入されています。
【虎眼石(とらめいし - タイガーズ・アイ)】
これはリーベック閃石(リーベッカイト)の繊維状結晶の塊に石英が浸み込むようにして固まって、さらに酸化して茶色くなったものです。リーベック閃石の繊維状結晶はかの悪名高い石綿の一種で、「青石綿」という強烈な発癌性を持つタイプなんですが、石英で固まってしまえば無害なもので、その線維による帯状の反射効果(シャントヤンシーと言うそうです)が非常に美しい石です。
ちなみに「酸化して茶色くなった」と書きましたが、酸化しないとどうなるかというと、次のやつになります。
【鷹目石(たかめいし - ホークス・アイ)】
こういうやつ。ちょっと暗めの石ですが、やや強い光に当てて見ると深い青みが非常に美しいです。帯状に見えているのは赤鉄鉱のレイヤー。リーベック閃石は鉄を多く含むため、虎眼石系列にはよく赤鉄鉱が付随します。
【珪岩(けいがん - クォーツァイト)】
石英の粒がいっぱい集まって固まった石。石英なのでちょっと透明感がありますが、不均質なので透明度は低いです。安価ですがパッと見が砂金石(さきんせき - アベンチュリン)に似てるので、砂金石として売られてることもあるようです。本物の砂金石にはアベンチュレッセンスという微細なきらめきがあるので、本物がほしい人は気を付けましょう(ただし、色つきガラスに微細なラメを練り込んだ「ゴールドストーン」なる人工石もあるので、そっちにも注意)。
これはこれで控え目ながら明確な魅力(読書好きの無口な眼鏡っ娘的な)があるので、堂々と珪岩として売ってほしいものです。
【瑪瑙(めのう - アゲート)】
白瑪瑙(同じ石の方向違い2枚:2枚目に辛うじて縞模様あり) pic.twitter.com/qOPNN0TRPI
2017-04-17 04:07:49非常に微細な石英が集まった玉髄(ぎょくずい - カルセドニー)や蛋白石(たんぱくせき - オパール)などが、層状に堆積して出来た鉱物。堆積した鉱物の色や種類によって、縞模様や樹枝模様などの美しい文様を呈することが多く、また産出量も多く装飾品として鉱物マニア以外の目にもよく留まるため、一般人を突然鉱物の断面マニアにすることがよくあります(n=1)。なお、多孔質でよく染料が染み込むため、装飾品用途の色鮮やかな瑪瑙は染色してあることが多いです。
これも瑪瑙の一種。微妙に子宝祈願の神社に奉納されそうな模様なのはさておき、縞模様がしっかり出た瑪瑙らしい瑪瑙です。灰色の部分は透明感が強めなので、縞模様が層状に見えて、見ていてなかなか飽きの来ない石です。
厳密には、縞模様があるものを瑪瑙、縞模様がないものは玉髄と言うそうで、この赤いやつには一切縞模様がないので、単に「玉髄」あるいは宝飾業界流に「カーネリアン」と呼ぶべきなのかもしれません。
ただ、本によっては「縞模様があるなど美しいものを瑪瑙と呼ぶ」となってたりしますし、縞模様などは削り方や大きさなどでナンボでも変わりますし、後述の苔瑪瑙のように、明確な縞模様がなくても瑪瑙扱いされてるものがあったりするので、その辺の区別はわりとユルいようです。そもそも「縞模様がないなら瑪瑙ではないのなら、なんで『縞瑪瑙』っていう言葉があるのか」という話ですよ。
これもまぁ「玉髄」ですね。「模様が無いやつも1つくらい欲しいなー」と、よりによって色味もほぼない灰色のを取り寄せましたが、届いてみたら事前の予想を遥かに凌駕する地味さでした。(これはこれで面白いですが)
これは辛うじて瑪瑙の一種。もしかすると黒く染色したものかもしれません。瑪瑙は中心部にやや粗大な石英の結晶構造や晶洞を持っていることもよくあり、上手く削れるとこのような目玉状の模様になります。これは中心部にさらに煙水晶っぽく色づいた部分があり、ちょっと藤田和日郎先生の描く妖怪目っぽいです。
【染色瑪瑙 - ダイド・アゲート】
特に染色済みとは表記されていませんでしたが、目の粗い石英の部分まで青い色素が入っているので、これは間違いなく青く染色されたものです。ビーズや装飾品としてよく売られている鮮やかな色の瑪瑙(あるいは瑪瑙扱いされてる玉髄)は、大体染色されたもので、残念ながら元の色は全くわかりません。
そんなわけで、鉱物好きの人には嫌がられそうな石ですが、装飾品としてのアピールを増すために染色されているだけに、細かいことを気にしなければなかなか美しいです。