吹雪「司令官の結婚相手は私ではありませんでした」

吹雪と司令官(AnotherEND)
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ラスカる @Not_Araiguma

終戦を迎えて鎮守府が解散するまで結局司令官に想いを伝えられないまま別れ、数年後に司令官が名門貴族の女性と結婚したというニュースが流れ、街の人のインタビューでたまたま選ばれて 「昔、好きだった人です」 「でも、彼が幸せならOKです」と、目に薄っすら涙を浮かべながら答える吹雪さん

2017-05-18 13:59:12
ラスカる @Not_Araiguma

後日、結婚式の招待状が吹雪に届く。差出人は司令官。文面を見るに当時所属していた艦娘全員に配られているようだ。 当然、迷う。司令官が誰かと幸せそうにしているのを見るのが辛いから。 だが、その姿を見たいとも思っていた。 『彼が幸せならOKです』 インタビューでの言葉を思い出していた。

2017-05-19 21:28:25
ラスカる @Not_Araiguma

当日。吹雪は式場に来ていた。そして披露宴会場に向かう途中、司令官とお相手の女性に偶然鉢合わせしてしまう。 吹雪は困惑した。なんと言えばいいのだろう。 「結婚おめでとうございます」 「素敵なお相手ですね」 そんな言葉が頭に浮かんでは消えていく。複雑な感情が混ざる中、口を開いたのは、

2017-05-19 21:31:39
ラスカる @Not_Araiguma

「もしかして、貴方が吹雪ちゃん?」 司令官の結婚相手の女性だった。 「ど、どうして私のこと…」 吹雪がこの女性に会ったことは一度も無い。ではなぜ自分のことを? 「彼から色々と話を聞いていたの」 女性は司令官に目配せした。そして女性は続けて言った。 「…ありがとう、吹雪ちゃん」

2017-05-19 21:35:05
ラスカる @Not_Araiguma

突然の感謝の言葉に吹雪はますます困惑する。式に来てくれてありがとう、ということだろうか。その疑問はすぐに晴れた。 「戦争中、貴方に命を助けられたと聞いているの。本当に、ありがとう」 抱擁。スキンシップ等での軽いものではなく、心の底からの感謝を表すしっかりとした抱擁だった。

2017-05-19 21:37:57
ラスカる @Not_Araiguma

「俺からも言わせて欲しい」 軍人らしい直立不動を保っていた司令官が深く礼をしながら言った。 「ずっと、ずっと君にお礼を言いたかった。あの時助けてくれたことを、俺が忘れた日は無い。本当にありがとう、吹雪」 「…そう、だったんですね」 吹雪の心にもようやく落ち着きが戻ってきていた。

2017-05-19 21:44:45
ラスカる @Not_Araiguma

吹雪はずっと不安だった。司令官が自分のことを忘れていたらどうしようかと。あの日、あの場所で一緒だった記憶を無くしてしまっていないだろうかと。 けど、そうではなかった。司令官はどこまでも真っ直ぐで、憧れで、尊敬できる人物だということを。 「司令官…」 そして今なら、ちゃんと言える。

2017-05-19 21:47:48
ラスカる @Not_Araiguma

「ご結婚おめでとうございます、司令官」 今度流れた涙はあの日とは違い、嬉し涙だった。 「ありがとう、吹雪ちゃん」 「ありがとう、吹雪」 幸せそうな二人も、今は直視することができた。 「…ところでお二人はどこかに行く途中だったのでは?」 余裕が生まれ、そんな質問もしてみた。

2017-05-19 21:50:49
ラスカる @Not_Araiguma

「「あっ!」」 新婚二人揃って声を上げる。 「今から式に出るための着替えに行くとこだったのをすっかり忘れてた。すまない吹雪、話はまた後でゆっくりと!」 「ああ、教えてくれてありがとう吹雪ちゃん!急がないと!」 二人は急ぎ足で揃って駆けていった。

2017-05-19 21:54:32
ラスカる @Not_Araiguma

(…なんだか、お似合いの二人だな) 二人の背中を見ながら、吹雪はそんなことを思った。 (二人とも、どうかお幸せに)

2017-05-19 21:55:50
ラスカる @Not_Araiguma

__その後の話を少しだけ。 吹雪はその日の出来事がキッカケで結婚相手の女性と友達関係になった。話してみると楽しいし、話題もよく合う。名門貴族の方と聞いていたのにかなりサッパリとした性格だと知って少し驚いたこともあったりした。 ともあれ、二人との関係は良好なものである。

2017-05-19 21:59:21
ラスカる @Not_Araiguma

一週間後、二人に子供が生まれる。 名付け親になって欲しいと頼まれ、今日一生懸命考えた名前を二人に発表するのだ。 ……想像していた未来とは違うけれど、今、吹雪は確かに幸せだ。 (二人が幸せなら、OKです!) にっこりと笑みを浮かべながら、吹雪は二人が待つ病室の扉を開けた。 (終)

2017-05-19 22:03:21