Side Story 8 存在しない第参型 三幕 後編

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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-8-63「はぁ…はぁ…げほっ…」 何処とも知れぬ崖下の岩場、手近な岩に背中を預け、夕立は必死に息を整えようと努める。自分を縛っていた鎖が切れたのを察した直後から、霧の中を脇目も振らずに走り抜けてきた。 あの艦隊はまだ自分の事を探しているのだろうか?頬を嫌な汗が伝う。

2017-06-13 00:08:42
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SS-8-64 岩陰からそっと顔を覗かせると、纏わりつく霧は未だ晴れておらず視界は決して良くない。耳を欹てても追手の気配は無く、代わりに遠くを走る車の音が微かに聞こえた。自分は今沿岸部のバイパス近くに居るらしい。 「(ここまで来れば大丈夫っぽい)」 額の汗を拭い、岸に腰を下ろす。

2017-06-13 00:13:49
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-8-65「…」 気持ちが落ち着くと、この短時間の出来事が怒涛のように自分の頭の中を流れていく。あの軽巡洋艦は自分の味方だと言った。自分の居るべき場所に連れて行くのだとも。 「(冗談じゃない…!)」 落ち着いていた怒りと憎しみが、再度じりじりと夕立の身を焦がし始めた。

2017-06-13 00:16:57
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-8-66 理性の一端が「気付かれるかもしれない」と警鐘を鳴らし、叫んでしまいそうになるのをぐっと堪える。 「(私も!あの船に乗っていた艦娘も!アイツらだってそうだ!皆普通じゃない…!)」 夕立は内ポケットから何かを取り出す。 …出てきたのは、光を一切反射しない漆黒の石片…

2017-06-13 00:21:37
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-8-67「(私達をこんな姿に変えたのは誰?こんな目に合わせたのは誰?誰がこんな事を考えた。誰が元凶だ!)」 彼女は自分の掌に食い込むほどに石を握り締めて怒りに震える。 彼女が『笹蟹』の船上でこの石を目にした時、彼女の頭の中には自分『達』が経験させられた事が全て蘇っていた。

2017-06-13 00:26:26
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-8-68「…許さない」 小さな、しかし強い憎悪が口から零れ、霧の中に消えていく。 その様子を霧の中から遠目に見ている男が一人居ることに、その時の夕立は気付く由もない。男は、そんな夕立の様子をみて満足したのか、被っているフードを整え直すと、濃い白の中へと消えていった。

2017-06-13 00:35:27
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

__ Side Story 8 存在しない第参型 三幕 後編 終わり__

2017-06-13 00:35:57