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トランプ大統領がパリ協定離脱を決断した背景には、温室効果ガス排出削減措置に伴う国内経済の縮小を実質的に回避するのみならず、何より環境問題対策のために国内経済を犠牲にすることはないという姿勢を、自らの支持層にアピールする狙いがあったとされる。
2017-06-11 14:10:23![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
このアピールがアピールとして成立する裏には、経済と環境とを複数の要素において対立的なものとみなし、そのなかで経済を優先することがより正しいとする思想が働いている。具体的には、①経済が人間の生き死に関わる問題であるのに対し、環境対策は人間以外の生き物の生存に目を向けたものである。
2017-06-11 14:36:08![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
②経済の安定、成長はリアルタイムを生きる人間たちに利益を与えるのに対し、環境対策は将来(数十年~数百年後)に生じることが予測される不利益を回避するために行われるものに過ぎない。などといった相反するベクトルが挙げられる。ここで人間以外の生き物よりは人間(自国民)を、
2017-06-11 14:41:45![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
数十年~数百年後の将来よりは現在を最優先するという考え方には強い説得力があり、一定数の人間を魅了する。結果、未来的に種々の動植物(場合によってはめぐりめぐって人間)がその生存を脅かされる事態が高確率で予想されようと、今の自分たちには関係がないという観点のもと
2017-06-11 14:58:28![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
共感も危機意識もあえて排除するリアリスティックな在り方が正しく、少なくとも格好がよく、逆に環境に拘泥しているのは地に足のつかない夢見人というバイアスに結びつきやすい。
2017-06-11 15:18:34![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
温暖化に留まらず、様々な環境問題に関して、人があえて対策を施さなければならないという意識を生じさせる際、心中で強く機能しているのは、長い時を経て保存されてきた現状に対するさらなる保持欲求である。環境の保全を唱えるものが、これに異を投げかけるものからその理由を問いただされた時、
2017-06-11 17:40:02![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
例えば「生態系の多様性が保持されることで、将来的に人間社会に益を与える可能性のある生物種、遺伝子の消失を防止できる」などと答える事があるが、これは基本的に人間にとっての実利的な問題を核に攻めてくることの多い環境保護懐疑論者に対し、感情論で応じていては不利になるという恐れが繰り出す
2017-06-11 17:49:26![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
事実ではあっても核心からはそれた窮屈な建前にすぎない。素直に感情的、あるいはその先にある精神衛生上の問題を前面に出したほうが環境保護論者の考えは理解されやすくなる。すなわち、自己保存(自身の生命と身体の保存、あるいは子孫を介した遺伝情報の保存)を一大命題とする生命に属す以上
2017-06-11 18:10:08![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
人には本質的に時を越えて受け継がれてきた何かに価値を見出す傾向がある。一番身近なところには己の系譜があり、本能的に婚姻者と子孫の確保を欲するのみならず、個々人において差はあるものの、一般論として感情的には家庭を求め、思考の上では家(家系)の存続を望む。
2017-06-18 08:14:54![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
この根底にある価値観がもととなり、人は伝統文化が断絶されたり、ある野生動物種が絶滅の危機に晒される現場にあいまみえると、共感由来の不快、不安感を覚える。自分と直接係わり合いがなくとも、そのような状況をないがしろにする姿勢は、自身が自らに覚える価値をも貶めることに繋がるためである。
2017-06-11 20:07:55![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ここでこの共感をあえて遮断し、あくまでリアルタイムの自分自身に直接的に関わりのあることのみを追求する姿勢こそが、正しくスマートで格好がよいと考える実利主義者であっても、そのスタンスの起点にまず共感性の排除がある以上、心中に発生する共感の存在自体は認めている。
2017-06-12 10:01:46![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
となると、温暖化等のもたらす環境荒廃が人間に与えるダメージとしては、身体的、物的、経済的なものの他に精神的なものがあることも想定していかなければならない。そしてそれは、人間以外の生物種や、あるいは自国以外の人間が苦境に見舞われた状況に対する同情といった、
2017-06-12 10:27:28![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「他人ごと」に留まらず、自分自身に直接のしかかるケースもありうる。温暖化で気候にずれが生じ、脳内に刻み込まれた通年での気温の上下、日照の増減のパターン、サイクルが壊れてしまうと、気象を介した過去の連想(季節ごとの雰囲気を持った風に当たることで1年前や10年前の今日を思い出す等)
2017-06-12 16:42:35![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
が困難となる。食事や着衣、気候条件の影響を受けるような行事の開催時期にも変化が生じ、自分自身の意図しないところで生活習慣が書き換えられていくこととなる。植生あるいは草木の開花、落葉の周期に乱れが生じれば、身近な風景が長らく見知っていたものとは違った様相を呈してくる。
2017-06-13 12:36:32![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ここで環境とは、単なる物理的生物学的現象に留まらず人間の記憶に連続性を与え、自我を支える精神的な要素でもある。生命や家計を脅かされるほどの影響は出ずとも、自身を包む環境に歪みが生じれば当人の精神面には傷が入る。
2017-06-13 13:16:13![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
日本人が他国に誇れる自国の強みとしてよくあげる点に、繊細なる人々の心および文化を培う源流になったとされる「四季の存在」があるが、であるとするならこの四季のバランスが崩れると、日本人と呼ばれる人口集団はその心と文化面に回復不能なダメージを負う事となる。
2017-06-14 15:33:30![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
温暖化はじめ地球規模の環境変動では、精神面も含めれば誰もが被害者なりうる。しかし、実際身の回りに影響が出始めるのが数十~数百年後のことと予測される場合、自分が当事者となる可能性はそれでもまだ低いのだから、
2017-06-14 15:43:40![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
そのようなことに拘泥するより、今現在の経済的利益を優先すべきという考えについてはどうだろうか。この思考では、仮に環境変動が自分に直接害を加える余地があろうと、その未来に苦痛の場となる自分が存在しなければ問題ないことを、あえて非情となりきる根拠としている。
2017-06-18 08:20:46![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ただ環境変動の原因を現在の自分が作っているのならば、その結果が顕在化するまでに数十年~数百年後のタイムラグがあろうと、環境はあくまで苦痛の場となる己が存在する今この瞬間、自身の手で壊されているという見方が成り立つ。百年の時をへて無実の人間に確実に弾丸を到達させる拳銃があったとして
2017-06-14 16:19:46![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
自らの行為で人が死ぬのは百年後なのだから自分には関係はない、と、軽い気持ちで引き金を引ける人間かどれだけいるだろうか。多くの人間は引き金を引いたその瞬間から(まだ誰も死んでいないにもかかわらず)良心の呵責にさいなまれる事となる。
2017-06-14 16:29:22![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
長い時を超えて同一の様態を成し、結果人の記憶に連続性を与え自我を支える環境を今破壊する行為は、「保存」というものに本能的に価値を見出す人間においては現在の自身の苦痛に直接結びつく。
2017-06-18 08:30:54![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
トランプ大統領のパリ協定離脱を支持する者達は「未来の多種、他国民、他人」がこうむるダメージよりも「当代の自分たち」の利益を重視する姿勢を見せるが、環境問題は少なくとも精神的な部分では、当代の自分たちの利益ともつながっている。
2017-06-18 08:24:02