「#10「望とノゾム③」　＜フォビドゥンフォレスト５話「選ばれし者、選ぶべき者」＞

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「「#9「望とノゾム②」　＜フォビドゥンフォレスト５話「選ばれし者、選ぶべき者」＞」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1121556

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2017-02-05 01:03:33

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（前回のあらすじ：生徒会室で作業をしていた俺だが、鳩寺の奴と妙に肘がぶつかる…距離が近い。書類を取ろうとしたら別に良いのに代わりに取ろうとする…どうもやたら懐かれてんだよな…。思い切って理由を聞いてみたら、俺が鳩寺を名前で呼んだからだって言う）

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（俺は覚えがなかったんだが…その時、俺の仲間のクワガタ、ノゾムが部屋を歩いてるのが目に入った…。望とノゾム。まさかとは思うが…俺がノゾムを呼んだのを自分のことだと勘違いしちまったのか？）

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フォビドゥンフォレスト５話「選ばれし者、選ぶべき者」 「#10「望とノゾム③」

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あれは確か去年の秋近く、久々に暑い日だった筈だ。俺は猟友会の詰め所…に偽装した僚勇会基地への入り口へ歩いていた。途中で、ポケットに連れ歩いてたノゾムが温かさのせいで活動的になって飛び回っていって見失っちまったんだよな、確か。暫く探し歩いて自販機の裏辺りでノゾムを見つけた。 1

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「ノゾム！何してんだ、行くぞ？それとも置いてったほうが良いか？」 俺がそんな風に声を掛けると、ノゾムが俺の方を向いて飛び立とうとして…。 「はい！お供します！！」 自販機の表側から鳩寺が勢いよく飛び出した。 「うわぁっ！？」 俺は腰を抜かしかけた。ノゾムも地面に落ちた。 2

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確かこんな感じだったと思う。思い出してきた。あの時はアイツの下の名前がうろ覚えだったとはいえ、あの場で妙な反応のことを問いただしておきゃこんなことにはならなかったんだ…。どうすっかな…言わねぇほうが良いよな…？ 3

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鳩寺を望と呼ぶのは抵抗がある。紛らわしいからな。ノゾムの名前は鳩寺にちなんだ訳じゃねぇ。アイツとの付き合いは鳩寺とより古い。当然ノゾムの呼び名を変えるのは無い。鳩寺に別のアダ名を付ける手もあるが理由を聞かれたら困るし、アダ名自体も思いつかねぇ。 4

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…俺が迷っている間に、恵里のアホが核爆弾を握って振りかぶっていた。 「あっそれって鳩寺くんじゃなくてクワガ」 そして投げた。 「あっ！うわああ！！」 俺は咄嗟に大声を上げた。全員の目線が突き刺さる。いや全員じゃねぇ、朝来は我関せずと作業中だわ…今はそのマイペースがありがてえ。 5

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冷静になると今のは奇声だった。皆から変人を見る目で見られている。いや恵里、少なくともお前にそんな目で俺を見る資格はねぇ。考えて発言しろ。『鳩寺くん、貴方ハルにクワガタ以下の親密度と思われてるわよ』つってる様なもんだぞお前。実際そうなんだが…。 6

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出会ってすぐ留学したせいもあって鳩寺の性格は掴み切れてねぇ。どう対応したもんか悩むところだ。メールではよく相談を受けてたが、実際に会うのとは違ぇ。あっ！今思えばメールのやり取りをするようになったのもこの誤解が原因か…ますます言い出しづれぇじゃねぇかよ。 7

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ともかく、そんな短い付き合いでも分かることがある。鳩寺は相当にネガティブな奴だ。この事実がバレたらどんだけ落ち込むか分からねぇ…。あと俺も会長に殺されるかも知れねぇが…それよりこの場をどう切り抜ける…？ダメだ何も思いつかねぇ…！ 8

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一人だけ心配そうな眼差しを送ってくる鳩寺を騙しているようで心苦しいが、今はとにかく時間を稼いでその間になんか考えるしかねぇ！ 「どうしたのハル」 「あっ！あー！喉が渇いた！死ぬ！」 とっさに出たのは昨日と似たような雑な誤魔化しだったが、幸い疑問には思われなかったらしい。 9

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「お茶貰う？あ！私が淹れようか？」 恵里は心配そうに見つめてくる。いや、騙されんなよお前。 「いい！いい！」 両手を振って恵里を止めた。いや、恵里の茶が飲みたくねぇ訳じゃねぇ。恵里の淹れる日本茶は旨いし久々に飲みてぇが、残念ながら今はコイツを一度外に追い出すのが先決だ。 10

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放っておくとまた何を言い出すか分からねぇからな…。 「えぇと…ああ！そうだ！」 俺はポンと手を打った。…いや実はまだ何も閃いてねぇ。早まった。間が持たねぇからと勢い余っちまった。すると、何故か恵里がおもむろに立ち上がった。 「分かった！買って来るわねソーダ！」 「へ？」 11

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恵里は勢い良く駆け出すと、窓から飛び降りた。…待て。頭が追いつかねぇ。そうか…「そうだ」を聞き違えたのか。いやそれよりも大丈夫なのか？ここは３階だぞ。…勿論、あいつは怪我一つなく着地するだろうが目立つのが問題だ。恵里なら目撃されても「恵里だから」で済まされそうだがな。 12

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ともかく結果的にだがお陰で助かった。…いや助かってねぇ！元はと言えばあいつの考えなしがいけねぇんだ。俺は座ったまた窓の外を見ていたが、その視界を人影が駆け抜けた。朝来だ。窓枠を掴んで叫ぶ。 「私オレンジジューース！！」 遠くから分かったー！と恵里の返事が帰ってくる。 13

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「お前ら、うるせぇからメール使えよ」 「見落とされたら困る」 朝来は窓枠から手を離して振り向く。 「…そうかよ」 一理ある…ようでやっぱりねぇ気もする。俺が後ろを振り返ると、問題がそこにいた。キラキラした眼差しの鳩寺だ。 「…っ！…さ、さぁ仕事に戻るか…」 14

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「あのぅ…」 制服の裾を掴まれた。よせ。男にそんな真似をされても困る。女でも別の意味で困るが。 「やっぱり…名前で呼んでもらうのはおこがましいでしょうか」 「いや、そうじゃねぇんだけどな…」 俺は上目遣いの視線から逃れるように背を後ろに傾けた。横を向くと久浦と目線が合った。 15

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こいつは、というか皆さっきから俺の事情を察してくれてはいたが、突然の事態に戸惑って助け舟を出せねぇでいた感じだった。まあ恵里みてぇな勇み足よりはマシだけどな。久浦が口を開く。何か打開策を閃いてくれたのか？ 16

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「片桐、可愛い後輩の頼みだ。素直に呼んでやればいいだろ」 久浦テメェーッ！！！コイツ澄まし顔だが目が笑ってやがる。 一見、最適解な気もするが、考えてもみろ。自分の親兄弟や友達と同じ名前の奴が他にいたとしてソイツに同じ呼び方を出来るか？俺は嫌だ。鳩寺をノゾムとは呼べねぇ。 17

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結論としては、俺は鳩寺にノゾムのことを隠したままで呼び方を現状維持するかあだ名を考えてやるしかねぇ訳だ。な、何かねぇか？ 「な、なぁ鳩寺…他の呼び方じゃあ駄目か？」 「…すみません」 鳩寺の笑顔が消えた。 「ご迷惑ですよね…」 「うっ」 18

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「ただでさえメールを一日に何通も送ったり…多いときは二十通も…」 「自覚あんならちょっとは減らせ」 コイツがイギリスにいる間はしょっちゅう報告や相談が送られてきたもんだ。大半は会長と俺の両方宛だが、中には俺だけに宛てたのもあった。そういうのは主に弱音や愚痴だったな。 19