#14「雪中の行軍②」<フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」>

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2017-07-23 01:34:39
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フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」 #14 「雪中の行軍②」

2017-07-23 23:29:18
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(前回のあらすじ:ついに始まった砦敷設作戦。森中央の雪道を行く徒歩部隊は除雪担当の第一中隊に恵里や礼太、続く第二中隊に片桐や想良が護衛として随行していた。勢い込んで来た割に手持ち無沙汰になっていた片桐達だったが、霊波探知機がB級妖怪の一群を補足し、片桐達が跳び出した!)

2017-07-23 23:37:29
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妖怪を生まれで分類する場合、三タイプに分けられる。生物が変じるものと、物体や現象が変じるもの、そして瘴気が撚り固まって無から出来るものの三つだ。ユキモグラは如何にもモグラが化けた妖怪の様な名前だが、実のところ二つ目のタイプになる。瘴気を含んだ雪が凝縮した氷が妖怪化している。 1

2017-07-23 23:39:24
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金平糖をラグビーボール大にしたような姿で、曲線の先が釣り針のごとく鋭い。全身をドリルのように回転させて雪の浅い層を突き進んで獲物を襲い、凍らせつつ粉砕して喰らう。特筆すべきは必ず複数で行動することだ。瘴気の雪から同時に複数生まれ、そのまま行動を共にするということらしい。 2

2017-07-23 23:48:11
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「…つーわけだ。作戦は分かったな?」 雪壁間際まで駆けてきた片桐が横の想良に問う。 「…分かった」 想良はこくりと頷くと、首の黒いチョーカーを指差す。 「分ぁってるよ」 片桐は自分のスマホを手にする。彼の端末内には今、想良の能力のロックを外す権限が入っている。 3

2017-07-24 00:03:02
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片桐が想良にスマホを向け、スワイプ操作でロックを外そうとすると、想良はぴしゃり、と片桐の手を払うかのような勢いで掴んだ。 「何だよ?」 片桐は戸惑う。ロックを外せと要求したのは想良だ。要求されなくても外すのだが…。 「アレやって」 「アレ?」 「承認のやつ」 4

2017-07-24 00:12:08
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「いや別にアレは形式的なもんだし…」 『いいからやってやれよ、減るもんじゃねぇし…敵は近ぇぞ?』 中隊長の郡田隆が急かす。 「分ぁったよ…」 片桐も敵の位置は顔に掛けたサイバーグラスで把握している。そろそろ行かないと安全に迎撃出来ない。片桐は常人離れした脚力で跳躍する。 5

2017-07-24 00:20:27
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二メートル強の雪壁より更に高く跳ぶと、想良もそれを追う。それを横目に片桐は溜息混じりに宣言する。 「フォビドゥンフォース…開放承認」 想良のチョーカーが光る。能力のロックが一段階解除された証だ。 「気合が足りない。リテイク」 想良が伏し目がちに首を振る。 6

2017-07-24 00:30:04
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「もう解いちまったよ」 片桐は呆れながらも右手を剣に持ち替え、既に手にしていた左剣に続いて刃を分離して空中に撒き、それを踏みつけて跳んで雪上を渡る。想良はそれには乗らず。足元に手のひら大の黒い斥力球を次々に生じさせる。頬を少し膨らませながら球を踏み片桐を追い抜く。 7

2017-07-24 00:36:10
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フォビドゥンフォースとは、片桐達ルーキーの能力に佐祐里がつけた呼称である。本来は使用前に承認が必要で、片桐の予知のような危険性の高い能力は特に複数段階の承認が求められる。ただし、想良と鳩寺以外はロックが無いので承認無しで全開に出来る。あくまで形式的なものだ。 8

2017-07-24 00:40:49
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「グラビティ・グローブ」 司令車を中継して本部から指示された位置に付いた想良は引力球をばら撒く。彼女の重力球は引力・斥力のどちらもサイズを大きくするほど強力になるが、その分速度は下がる。今回はほぼ真上から落とした形だ。球はずぶずぶと雪に沈み込んでいく。 9

2017-07-24 00:46:58
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郡田もそれを確認する。 『よし良いぞ。3・2・1…』 片桐が刃を待機させ、後方の部隊も狙撃銃を構える。 『ゼロ!』 雪壁の中で複数の衝撃音が響く。硬い氷を岸壁に叩きつけたような音だ。 「朝来!」 「うん」 雪の中から浮上した重力球は当初の半分の直径20cmほどに縮んでいた。 10

2017-07-24 00:53:58
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重力球に捕われて現れたユキモグラは、凝縮し淀んだ氷色の体でじたばたと藻掻く。その様は捕獲罠か蜘蛛の巣に掛かった多足類のようだった。内向きに歯の並んだ円形の口からガラスを擦るような不快な悲鳴を上げる。片桐達はヘッドホンを兼ねたイヤーパッドのお陰で耳をやられることはない。 11

2017-07-24 01:00:50
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このまま重力で握りつぶせば終わる話だが、それには想良のロックをもう一段階外す必要がある。今はそれには及ばない。郡田を真似たのか、想良もカウントを開始する。 「5……4…3……2…」 「おい、間隔保てよ」 「1・ゼロ」 想良は重力球を消した。 12

2017-07-24 01:05:34
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解放されたユキモグラはしかし、何をすることも出来なかった。八体全ての氷の体が同時に砕け散る。 「ああ、もう!」 間近に待機していた片桐の刃だ。多少カウントがずらされようとも外しようもない位置取りだった。想良もそれを承知の上でからかったのだろう。二人は攻撃と共に横へ飛び退く。 13

2017-07-24 01:10:26
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二人が開けた射線に狙撃が降り注ぐ。氷の体から飛び出した核を破壊する為だ。ダイヤモンドダストめいて舞う細かい破片は、既に想良が新たに速度の速い小引力球で吸い寄せ、大きな破片は片桐が刃で退けている。核の内五つは一射目で、残る二つは二射目、最後の一つは片桐が二枚の刃で掴んだ。 14

2017-07-24 01:15:13
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「どうしたの」 宙に浮いたままの想良が首を傾げる。 「いや…」 片桐は構えを解いた。新技を試そうと思いかけていたが止めた。初披露にこのちっぽけな敵では役者不足だし、下手に接近して一歩間違えば逆に食い付かれる。 「何でもねぇ」 分離状態の刃が最後の核を砕いた。 15

2017-07-24 01:21:57
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「お疲れ様」 ジープに戻った二人に、柳原が湯気の立つ焙じ茶を差し出す。 「あんがとな…つっても疲れるほどじゃ無かったけどよ」 「余裕」 二人は一息つく。その間に司令車を中心として霊波の再測定が行われ、安全が確認されると、一同は妖怪に黙祷してから再出発した。 16

2017-07-25 00:23:39
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「…戦い足りない」 走り出して一分と経たない内に想良が呟いた。不満げな表情を隠しもしない。 「あのなぁ、朝来。だから俺らが暇なくらいが良いんだっての…」 「ハハ、さっきと逆だなぁ」 笑う柳原に片桐は顔を顰めてみせた。言われなくても自分で分かっていた。 17

2017-07-25 00:28:15
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「早く合流したい」 「あと一時間は掛からないと思うよ」 今、第一・第二中隊が進むのは森のレベル2。奥のレベル3とは谷で隔てられており、仮設の橋で繋がっている。残念ながら車両を渡すには強度と幅が厳しい為、谷の手前で中隊を合流・再編する予定だ。 18

2017-07-25 00:35:58
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想良の瞳に光が戻る。髪はキラキラと白く光り輝き肌は瑞々しく潤い、辺りには白銀の華が咲き乱れた……ような気がした。 「順調に行けばね」 「このまま妖怪が出てこなきゃな」 片桐が皮肉げに笑う。 「急ごう……全速前進!」 起き上がると共に立ち上がり、ビシッと前を指差す。 19

2017-07-25 00:45:38
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「座んな」 運転手が前を向いたまま釘を刺す。 「座んな」 想良は不満げに腰を下ろす。 「全速前進…」 「しねぇからな」 ジープは徐行速度を維持する。 「急がば回れっつう先人の言葉があるだろうがよ」 「先人…余計なことを…」 想良は虚空の先の先人を睨みつける。 20

2017-07-25 00:50:18
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想良が大人しくなった所で、片桐の頭にあることがよぎった。 「合流といやぁさ…」 「なんだい?」 周囲を見回していた柳原が片桐に顔を向ける。 「瑠梨ってどこにいるんだっけ?」 「え?あ~。そっか今日はいるんだったね」 瑠梨は普段は森には同行しないが、今回は来ている筈だ。 21

2017-07-25 00:58:41
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砦敷設に伴う地鎮などの儀式の為には鳥姫の巫女が必要となるのだ。神主である彼女の父でも代行は出来るが、少なくとも今回は瑠梨が来ると聞いていた。しかし考えてみればどこの隊に同行するのかを聞いていなかった。というよりも…。 「会議でも説明された覚えがねぇんだよな…」 22

2017-07-25 01:03:37