#10 「戦闘訓練」　＜フォビドゥンフォレスト４話「大規模作戦・発動！」＞

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まとめを更新しました。「４話「大規模作戦・発動！」#9 「作戦要項」＜フォビドゥンフォレスト＞」 togetter.com/li/1100259

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2017-02-05 01:03:33

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（前回までのあらすじ：俺は片桐。田舎町の風科に住む高１だ。北の森の妖怪共と戦う僚勇会の一員だ。今週の異常事態を受けて佐祐里さんは「砦」敷設計画を立てた。昨日帰った鳩寺の力で川を凍らせて資材を運ぶそうだ。実行は一週間後の土曜。俺も準備…するのは良いが…）

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（…その日は瑠梨の誕生日だ。敷設計画を立てたことで、佐祐里さんは誕生会の予定を自分の手で潰したことになる。佐祐里さんが罪悪感で死にゃあしねぇか、俺は結構マジで心配だった。）

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フォビドゥンフォレスト４話「大規模作戦・発動！」 #10 「戦闘訓練」

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「ビィィィッ！」 いつも通りの妙な掛け声と共に、ラッタの腕から光の弾が何発も飛んでくる。俺は宙を舞う刃を操作して弾を弾きながら、後ろへ距離を取る。追ってくるラッタの足元を予め床に寝かせといた刃の不意打ちで狙う。ラッタは軽く跳んで躱すが、少しは走る速度が弱まった。 1

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そこを狙って四方八方から十本の刃で同時攻撃するが、ラッタは両足を地につけたままで腕だけで全て弾く。右腕に光を溜めながら俺の追跡を再開した。俺は数本の刃をラッタを中心に宙を旋回させながら走る。手元の剣にも刃はまだ２０本残ってる。 2

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「ま…待てハル…っ」 ラッタは光弾を左腕から連射する。シャワー状で細く範囲の広いのを断続的に放ってくる。俺は８本の刃を背中に飛ばして回転させて防ぐ。２割くらいは隙間をすり抜けてきて熱いが、大したダメージじゃねぇ。それより問題はチャージを続けてる右腕だ。 3

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俺はラッタからは死角になる腰の高さに２枚の刃を浮かせる。これを踏み台にして後ろ宙返りする。無防備に背を晒してやったのにラッタは左すら撃ってこない。旋回させてた刃を踏み渡って、ラッタを飛び越える。着地の瞬間は刃で盾を作って背後を守ったがそれでも撃ってこねぇ。俺は走った。 4

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ラッタは相変わらず右のチャージを続けたまま追ってくる。今度は圧縮率の高い光弾を左から撃ってくる。頻度は低いが刃では数枚重ねねぇと防げねぇ。つっても余裕で躱せるけどな。ラッタは俺の行く先を狙って撃ってくるが、俺は刃を踏んで宙を歩けるから大した問題じゃねぇ。 5

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俺は攻撃を躱しつつ走りながら、刃を鏡にしてラッタの動きを見ている。息を切らしかけている。散々逃げ回った甲斐があるってもんだ。呼吸や目、足…体全体の動きを見てタイミングを窺う。ラッタが圧縮弾を放つ。反動で体が左に揺れる。揺れが大きい。弾を躱すと同時に俺は仕掛けた。 6

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床に落ちていた刃の一つがラッタの軸足にぶつかる。 「ッ！？」 「この」刃は一定のダメージで動かなくなるが、勿論動かねぇフリも出来る。ラッタもそれは警戒してた筈だが、俺は吹っ飛ばされた刃の背後に無事なのを隠しておいた。剣本体も死角に隠し続け、残弾を確認されねぇようにしてた。 7

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「掛かったな！！」 俺は振り返ると同時に剣から全部の刃を切り離す。少しでも重量を減らす為だ。体制を立て直すまでの一瞬が勝負だからな！刃を俺を追うように並走させながらラッタを狙う！俺はラッタを凝視する…！ 「掛かったな！！」 ラッタの右腕が真っ直ぐに俺を向いていた。 8

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光り輝く右腕を左で支えながら俺を狙う。あれが直撃したら俺は一発アウトだ。 「げっ！」 体制を立て直したにしちゃ早過ぎる。俺の刃での足払いを読んでわざと転んだのか？いや、光弾を撃った反動でよろけたのからもうフリか？ 「ビィィィム！！」 ラッタが極太のビームを放った。 9

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「うわっ！？」 声を上げたのは…ラッタだ。…正直ちょっと違和感があったからな。足元に刃を一枚落としといて、振り返る瞬間にラッタの右側へ斜めに蹴っておいた。チャージした光が邪魔になって下が見辛い右側にな。で、発射の瞬間にそれをぶつけた。光線は明後日に飛んで行く。 10

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俺はその光線の下へスライディングして飛び込む。ラッタは大技の技後硬直で動けねぇ。俺は下から斬りつける。ラッタは後ろに倒れ込むようにして躱す。だがそこまでた。俺に追い付いた分離刃がラッタの体に突き刺さる……正確には先端が命中したことで「突き刺さった判定」になる。 11

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『勝者、片桐春夏』 無機質な電子音声がアナウンスする。ここは僚勇会地下の訓練場の一角。一対一のバトル用に作られたスペースだ。自動車二十台くらいは入る広さだ。サシでやるには十分広いほうだな。広いだけじゃなくて、訓練で怪我をしねぇように色々と工夫もされてる。 12

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まず武器だ。俺が使ってた剣は、形や重さ、機能はいつものと同じだがゴム製の剣だ。表面も金属っぽい加工がされてて、さっきみてぇに後ろを映すくらいは出来る。そしてラッタの光線なんかの魔力攻撃は訓練用スーツや周りの壁に吸収されて、ダメージ判定だけが残る。 13

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スーツはダメージを防ぎつつ、痛みや熱さなんかは控え目に伝えてくれる優れものだ。僚勇会以外でも魔術戦闘の訓練でよく使われているらしい。後は素手の格闘が問題だが、腕や足に付いたリングがリミッターの作用をする。相手に致命打を与えかけた時に重圧を掛けて抑えるんだ。 14

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今使ったのと同じサイズの戦闘部屋は４つだけだが、もっと小さめのもいくつかある。その他に、この部屋の倍はデカい集団戦用の部屋や、魔力を使わずに素の身体能力だけで戦う部屋も有る。後は森での戦闘や移動を鍛えるための物騒なアスレチックが、訓練場全体の半分以上を締めている。 15

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戦闘部屋やスーツは至って普通のもんだが、組織の規模を考えると数は多い方らしい。俺は外の訓練所は殆ど利用したことがねぇから詳しくねえが、それはこの地下施設で間に合っちまうからでもあるよな。例外は鳩寺も行ったクロスロードくらいだ。仮想空間訓練の施設は今はまだあそこにしかねぇ。 16

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ウチにもあれば便利だが、クロスロードも好きで仮想訓練技術を独占してる訳じゃねぇらしい。むしろ国内外からの短期留学の受け入れが半ば義務化して面倒だと向こうでボヤかれた。何でも開発中に開発者が死んじまったせいでシステムがブラックボックス化して複製とかが難しいって噂だ。 17

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ウチの殺人アスレチックも、流石にあれ程の唯一性はねぇが、隣の県からやりに来る奴もいる程の人気がある。森の外で戦う機会があまりねぇ俺にはピンとこねぇ所もあるが、他所の奴にも結構良い訓練になるようだ。ただし最凶モードだと普通に死を覚悟するレベルだから一見さんにはやらせられねぇ。 18

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「くっそー負けたか…」 床に座ったラッタはスポーツドリンクを飲みながら汗を拭く。 「へっ。俺に騙し討ちなんて二・三年早ぇぜ…」 「えぇ…そんなに…？」 「じゃあ二・三ヶ月に負けといてやるよ」 心底がっかりした表情に釣られてついおまけしちまった。 「よっしゃ！」 19

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ラッタは両腕でガッツポーズをして笑顔になる。 「そんな喜ぶかよ…」 「次は負けないぜ！」 「体力は大丈夫か？」 ラッタは誰と戦っても戦績が五分くらいになるが、それはスタミナのせいだ。自分と互角の相手なら前半は圧倒出来るが、後半は飛ばし過ぎて負けが込んでくる。今が正にそれだ。 20