ウィア・スラッツ、チープ・プロダクツ、イン・サム・ニンジャズ・ノートブック ＃８

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ススキはリムジンを蛇行させ、銃弾を回避した。社用バンはギアチェンジし、グンとスピードを上げた。ニンジャスレイヤーはスリケンを連続投擲！「イヤーッ！イヤーッ！イヤーッ！」「イヤーッ！」デシケイターは片手をかざし、眉間に飛来したスリケンを挟んで止める！ 24

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして、その時！BOOOM！フロントガラスの無い家紋リムジンの中から、煙を噴いて何かが飛翔した！おお……ナムサン！それは一旦運転を捨てたススキが肩にかついだランチャーから射出されたロケット弾である！「ヌウッ！」ニンジャスレイヤーはフックロープ投擲で阻止をはかる……しかし！　25

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」右腕付け根に突き刺さったのはデシケイターの狙いすましたクナイ・ダートだ！ホロキーボード片手操作！ニンジャスレイヤーは鋼めいた筋肉でこの攻撃を軽傷に留めたが、フックロープは役割を……ロケットを絡め取りあさっての方向へ逸らす事を……果たせなかった！KABOOOM！26

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ！」「「ンアーッ！」」社用バンはつんのめるように前傾しながら吹き飛び、地面に落下！KRAAAASH！「ヌウーッ！」ニンジャスレイヤーは回転ジャンプで脱出、着地！車内からはコトブキがアンキタを庇うように抱えながら這いずり出た！「平気です……平気！」「アイエエエ……！」27

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヒュンヒュンヒュン。アダナス・ドローンを己の周囲に旋回させながら、陽炎の中をデシケイターが悠然と迫り来る。「アイエエエ！」市民が家々から飛び出し、逃げ惑う。「逃げろ」ニンジャスレイヤーはコトブキに言った。「そいつを連れて」「……！」コトブキはアンキタに肩を貸し、その場を去る。28

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さあ。面倒は終わりだ」デシケイターは死刑宣告めいて言った。彼の傍らには冷酷なウキヨ。「このニンジャは俺がやる。あっちはお前が対処しておけ」「ハイヨロコンデー」ウキヨは頷くと、即座に陸上選手めいたスプリントで走り出した。29

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは身を沈め、前傾姿勢を取る。デシケイターの周囲を鈍色の羽虫がジグザグに飛翔する。ニューロンの中で数え切れぬカラテ・シミュレーションを行う。あらゆる選択肢は断たれた。横を走り過ぎるウキヨをインターラプトすれば、デシケイターのカラテとドローンが命中するだろう。　30

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デシケイターのドローンがニンジャスレイヤーを捉えれば、例のミナヅキ・ジツが成る。四肢が損壊すれば当然そのままなぶり殺しとなるだろう。「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは様子を伺うように飛翔してきた複数のドローンを目にもとまらぬ速度でつまみ取り、押し潰す。ウキヨが……走り去った！31

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((ミナヅキ・ジツは爪や牙で敵の皮膚を傷つけ或いは掌を当ててカラテを巻き込み、瞬時に水分を抜き取る。心せよ！かつてミナヅキのタツジンとして知られたカワキ・ニンジャはエドのサムライ戦士百人をひと触れでカツオブシめいた襤褸クズに……)))ニンジャスレイヤーは敵を見据え考察する。32

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

爪や牙のかわりに、アダナス・ドローンにたからせ、恐らくは羽虫の顎や脚などで皮膚を破り、それを遠隔的なジツの取りかかりとするのだろう。ドローン・ジツの方の原理の理解は追いつかぬが、そこまで知る必要はない。「わかってきたぞ」ニンジャスレイヤーは呟いた。だが、このままでは……！　33

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いいぞ……いいぞ！来た！」キャバアーン！デシケイターは株をショート！そしてアダナス・ドローンが一斉に襲い掛かった！「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは回転の中からスリケンを立て続けに投擲した。羽虫の数匹が撃ち落とされ、爆ぜ飛んだ。さらに燃えるマフラー布が幾つかを焼き払った。　34

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヒュンヒュン、ヒュヒュン！迎撃網をかいくぐりドローンが飛来！「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは残像を伴う速度で両手を動かし、虫をつまみ取っては指のペンチめいた力で圧し潰す。「イヤーッ！イヤーッ！」一方のデシケイターは涼しい顔だ。「そこだ」ニンジャスレイヤーの踵付近！アブナイ！35

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土中から這い出した虫たちがニンジャスレイヤーの左踵からふくらはぎに這い上る。ナムサン！左脚がミイラ化しその場に崩れ落ちるか！「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーの目が燃えた。黒炎が足元から噴き出し、己の身を焼きながら虫を焼いた！「ハハハハ！凄い事をする。とんだ自殺行為だな！」 36

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは横へ跳び、転がりながら炎を払った。起き上がるところにデシケイターが踏み込んできていた！「イヤーッ！」「グワーッ！」前蹴り！ニンジャスレイヤーは顎に一撃喰らい、のけ反りながら飛び下がった。ヒュヒュヒュン！そこへ襲い掛かる羽虫！ナムアミダブツ！ 37

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエ！」市民の悲鳴が遠く聞こえる。ニンジャスレイヤーは両腕を交差し、防御姿勢を取る。無駄だ。金属羽虫がとりついた。彼は己の両肩を掴み、力を込めた。触れた場所から黒炎が拡がり、装束は邪悪な炎と化した。炎は己の身体と共に虫を焼き焦がした。デシケイターはただ見物していた。38

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヒュン。ヒュヒュヒュン。新たなアダナス・ドローンが彼の懐から飛び出し、隊列めいて浮遊する。ニンジャスレイヤーは膝をついた。俯いた顔をあげ、いまだ弱まらぬ戦闘意志を滾らせて、ただ目の前のデシケイターを睨んだ。デシケイターは株をショートした。羽虫の第二波が……襲い掛かる！ 39

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドクン。ドクン。心臓が強く打ち、時間感覚は泥めいて鈍化した。ソーマト・リコール現象だ。アダナス・ドローンが飛翔する。ナラクの炎でその都度己を焼く？二度？三度？ナラクすらもその行動には疑義を呈した。単なる勝機なき自傷、ジリー・プアー（徐々に不利）に過ぎぬと。 40

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

膝をついたニンジャスレイヤーはそのまま身を沈めた。「イヤーッ！」全身のバネを爆発させ、デシケイターめがけクラウチング・スタートを切った。羽虫が渦を巻くように飛び、ニンジャスレイヤーに襲い掛かる……ニンジャアドレナリンがニューロンを異常回転させ、時間はほぼ静止した。 41

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

01001010010001……0100101DAMNDAMNSHIT。考えるだけでニューロンが言葉を吐き出し、UNIXがそれを吸い込む。楽しいもんさ。オレは卑近な世界の物理肉体を見下ろしている。そのルックスときたら、カート・コベインによく似0100011これで何度目の情景。42

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「姉貴。何かおかしいな」オレは呟いた。言葉は文字となりこのコトダマ空間の0と1の滝の中に流れ去った。何かおかしい。そもそも姉貴は焼き切れて死んだんだろうに。我ながら仕方ねえな。オレは……オレは企業アカウントを前にしている。確かアダナス・コーポレーション。そう。何のためだ。 43

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

決まってる、奴だ、あの疫病神、IRC通信でいつもクソみてえな反応しか返さない。奴のIPアドレスは妙で、通信機器じゃないとしたら、じゃあ何だ？奴はアダナス・ドローンにたかられて、今にも死ぬ寸前？なんてよく見えるんだ。ワーオオー。冴えまくってる。ブラックベルトを決めた時みたいに。44

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それは貴方がブッ飛びかかってるからよ」姉貴が呆れたように言った。オレは舌打ちした。「効果あるかもわからねえクスリの為にあんなカネ払えッかよ」「それがケチのつき始めね」「だからオレは仕方なく協力…ええと、アダナスで」思考がループを始めた。机に突っ伏し……カート……待て、待て。45

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それはもうやめろ」「なら、目を覚ましな」「どうして」「知らないよ」黒髪の女が顔をしかめ、首を振った。「貴方の問題でしょうに」「お前、誰だ？姉貴じゃねえな」「バーバヤガ」「ハアそうかい。バーバヤガ。おとといファックしな」オレは見知らぬ女を追い払おうとした。「しょうのない奴だ」46

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

女はオレの頬に手を当て、視野を動かさせた。よく見えた。つまりオレは今、エテルの海に溶けかかってるッて事だ。黄金立方体の光をチリチリ感じる。ああ。よく見える。ムンバイ。ニンジャスレイヤーが今まさに死にかけてる。オイオイ。ダメじゃねえか。オレは……「グワーッ！」　47

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オレはオレの悲鳴を聞いていた。無意識が上げさせた叫びさ。寝言みたいなもんだ。痛かったからだ。見ろ。ひでえ。UNIXに突っ伏したオレの事を、あの変態野郎の研究者とコルヴェットの野郎が寄ってたかって、何回か失敗した後に、アンプルの針をブッ刺して……「なにやってやがる！？」　48