#11「燃え立つ氷」<フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」>

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まとめを更新しました。「「#10「望とノゾム③」 <フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」>」 togetter.com/li/1122537

2017-06-26 01:20:02
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(前回までのあらすじ:俺は片桐。田舎町の風科に住む高一だ。俺達の町の北には人を襲う妖怪共が出る禁忌の森がある。俺は僚勇会って組織で奴らと戦っている。俺達は最近続いた異常事態を調査する為に森の中に拠点を作ろうと準備を進めている。作戦本番の土曜はもう目前だ。)

2017-07-05 23:54:37
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フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」 #11「燃え立つ氷」

2017-07-05 23:54:57
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硬質ゴム状の床の上、涼平の周りを無数の刃が飛び交う。正面、背後、両側面、頭上、足元…全方位から十枚以上の刃が同時に降り注ぐ。涼平はその中に織り交ぜられたフェイントに惑わされずに本命だけに対処する。限界まで引きつけてから最小の動きで躱し、残りは裏拳や肘で側面から弾き飛ばす。 1

2017-07-05 23:55:30
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業を煮やした片桐は残る全ての刃と共に飛び掛かる。無謀な突撃にも思えるが、散発的な攻撃ではどの道徐々に刃の数を削られていくだけだ。片桐は宙に飛ばした刃の上を縦横無尽に跳び渡り、真正面から必殺の飛び蹴りを見舞う。涼平は刃への対処をしつつもこれを迎え撃つべく構える。 2

2017-07-06 00:03:22
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地面に叩きつけようと掴み掛かる直前、二人の間に刃が割って入る。涼平は軽く胸を反らして躱し、片桐はこの刃を蹴って後ろへ宙返りをする。両手は剣を握ったまま肘と肩で空中で側転し、涼平の左側面へと瞬時に回る。改造が済んだばかりの護拳部分で殴り掛かる構えだ。 3

2017-07-06 00:10:59
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残した二十枚強の刃は全て涼平の体すれすれを狙って飛ばす。動きの制限を優先する為だ。拳を迎撃しようと動けば切られる覚悟が必要である。半端な枚数では涼平は止められない。隙の大きい蹴り以外にも攻撃力の高い技を得て、刃の管理に余裕が出たからこそ出来る戦術である。これで詰みだ。 4

2017-07-06 00:23:17
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……と考えていた片桐は空中で目を見開いた。 「げっ!」 涼平は刃が飛来するより一瞬だけ早く飛び上がり、片桐と同じように刃を踏んで地上二メートルの位置へと駆け上がる。刃は速度がある上に狙いを正確に決め込んでいた為、咄嗟の軌道変更も間に合わない! 5

2017-07-06 00:33:33
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「ハッ!!」 涼平は、拳を振り抜きつつあった片桐の鎖骨辺りへと踏みつける様な蹴りを見舞う。 「…ガッ!」 片桐の息が一瞬止まる。拳の勢いごと押し返され体が床へと吹き飛ぶ。無数の刃は既に今の涼平の位置へ迫ってはいたが、片桐が倒れると同時にふっと糸が切れた様に床に落ちていった。 6

2017-07-06 00:41:53
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「痛ーっ…てて…」 片桐はゆっくりと起き上がると、直立して待っていた涼平の元へと歩いていく。礼を行い訓練を終了すると、二人用の特殊訓練室を出てベンチへぐったりと座り込む。 「はぁ…参ったぜ…。新技を試す機会が無かった…」 受け取ったばかりの剣の片方を弄びながら溜息を吐く。 7

2017-07-06 00:53:30
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「余程当てたかったらしいな…狙いが見え過ぎていたぞ…片桐」 涼平は買ってきた冷茶を片桐に渡す。 「マジっすか…」 受け取りながらがっくりと項垂れる。蓋を開けて茶を呷る。自前でも持ってきてはいるが、やはり火照った体にはよく冷えたものがありがたい。 8

2017-07-06 00:59:24
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片桐は刃を味方に踏ませる戦術を使うし、涼平もそれに慣れてはいる。それでも訓練で敵対する場合は別だ。完全に軌道を読み、かつ片桐に対応される前に素早く動かねば今の様な真似はできない。 「俺が特別に勘が良い訳ではないぞ…」 涼平が釘を刺す。 「今のは下手をすると妖怪にすら読まれるな」9

2017-07-06 01:03:43
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「そこまで……!」 涼平は、実際に森の深奥で知能の高い妖怪との戦闘経験が多い。その経験に裏打ちされた指摘を受けてはひたすら落ち込むしか無い。 「最後の一セットはもう少し刃のコントロールを維持できていれば俺に当てられた筈だぞ。その拳にこだわり過ぎだ」 「ううっ…!」 10

2017-07-06 01:07:20
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今の戦いは五本勝負の五本目だったが、それまでの四戦も委細は違えど同じような有様だった。クレーバーン博士によるセレクターズジックルの改良は剣本体のマイナーチェンジが主で、刃は元のまま。目に見えて変わったのは護拳部による強打撃のみだ。これを試そうと過剰に意識してしまっていた。 11

2017-07-06 01:16:01
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「もう十分分かったと思うが、新しい技や武器は手に入れた直後が一番危険だ」 涼平は片桐が落とした方をポンと叩く。 「…身に沁みました」 「新しいものを無理に使う必要はない。ただ選択肢が増えた、と思え。それで余裕と自信が生まれる筈だ。それを活かせ」 「余裕…っすか」 12

2017-07-10 00:18:52
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片桐が今ひとつ飲み込めていない、と感じた涼平は暫し腕組みをして考えた。 「お前に借りたゲームで、毒を消す呪文があったな」 「ああ、はい」 片桐は頷いた。今涼平がプレイしている序盤で主人公が習得するが正直、印象の薄い呪文ではある。毒のダメージが小さいからだ。 13

2017-07-10 00:32:37
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ゲーム全体を通すと毒を受ける機会は多く、主人公が早くに習得することもあり使用頻度自体は高いのだが、毒を治さないと死ぬのはキャラのHPの少ない序盤か、一部敵が猛毒を使ってきた場合くらいで有り難みが薄い。しかし、この呪文以外で毒を治す手段は限られている。 14

2017-07-10 00:45:17
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「今進めている辺りでは使う機会は少ないようだが、アレのお陰で毒消しをあまり持たずに済む」 この呪文が無いと、使うかも分からない毒消しがアイテム欄を圧迫する。資金の少ない序盤では馬鹿にならない痛手だ。 「つまりそういうことだ…と言って分かるか?」 「…なるほど」 15

2017-07-10 00:52:25
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「あと防御力を上げる魔法も使い所は少ないが、あると安心だな」 「最初にレベル上げ過ぎたせいでごり押し出来てるだけじゃねぇっすか?」 「だが防御を固める暇で攻撃したほうが早くはないか?現実でもそうだが、特に敵の多い場合は…」 「そうっすね…どっちかつうとボス戦向きっすね」 16

2017-07-10 00:55:17
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「なるほどな。だがそもそも雑魚相手に使う機会があるのか?防御を下げられた時くらいだろう」 「単体用じゃなくて全体用のほうが使い勝手は良いんすけど、こっちも使い所は結構…」 その時、隣のブースのドアが開く音がした。鳩寺と憐治がいる所だ。二人は佇まいを直し、反れた話題を元に戻す。17

2017-07-10 01:04:21
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「…ともかく無理が出るなら新機能は一旦忘れろ。作戦に間に合ったのが逆効果になっては、かえって博士に悪い」 「…はい」 片桐は不承不承ながら頷いた。万一の暴発に備えて、格上の涼平相手にしかまだ試していない新技だが、この分では自分と同格の相手にすら失敗しそうだと実感したからだ。 18

2017-07-10 01:09:35
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「あ、お疲れ様…です」 真面目に戦術について語り合っていたらしい先輩たちに、望が深く頭を下げる。憐治は無言のまま軽く頭を下げる。動きがどこかぎこちない。具体的には激痛を堪えながら無理に動いているかの様だ。 「そっちはどうだったんだ?」 「その…」 涼平が問いに望の目が泳ぐ。 19

2017-07-10 01:14:51
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憐治は肩で苦しげに望を押しのけると、両手を開いて片桐達に見せる。手を握ってゆっくりと悔しげに首を横に二往復させてから、望を見た。お前が続きを言えと促しているようだ。 「僕の…十戦十勝です…」 よく見ると望も肩で息をしていた。憐治よりマシに見えるが全身が痛むのも同じらしい。 20

2017-07-10 01:22:09
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フォビドゥンフォレスト5話「選ばれし者、選ぶべき者」 #11「燃え立つ氷」終わり #12「燃え立つ氷②」に続く

2017-07-10 01:24:21