記憶＊大倉

まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

＊記憶＊大倉 雨音で起きる朝。 いつもより目覚めが悪いのは天気のせいか。 いや…俺そもそも寝起き悪いわ。 あいつにいつも怒られてたな、なんて思い出す。 ベッドから出るとすぐに目に入るのは、嬉しそうに笑ってる2人の写真。 海がきれいやから、記念にって撮ったやつ。 pic.twitter.com/He6wT2TnhN

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2 その時の匂いも、音も、あいつの笑顔も、全てが頭から離れないまま、俺は毎日を過ごしている。 --- 彼女との別れは、ほんの些細な事だった。 いつものようにあいつが怒って、俺は冷めたフリで。 泣いて出て行ったあいつを、俺は追いかけなかった。

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3 『忠義は、いつもそう。 私と向き合おうとしない。』 --- よく彼女が口にしていた言葉。 確かにそうやった。 でも今なら… なんて、もう遅いよな。 カタンッ 思わず写真立てを下向きに倒した。

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4 --- その数日後のことだ。 彼女とレストランで鉢合わせたのは。 『忠義…』 「…久しぶり。」 久々に見る彼女は、昔よりももっとキレイになっているような気がした。 自分の物じゃなくなったから、そう思うんかな。 いや… そう思うのは、俺がまだ彼女を好きやから。

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5 「…あのさ」 そう言いかけた時、後ろから駆け寄ってきたのは、 俺よりも背が高くて、黒髪の似合う男だった。 ［お待たせ。…あ、こんばんは。］ 「…ども。」 誰や。 『……今ね、 この方とお付き合いしてるの。』 彼女が嬉しそうに腕を組んだ。 「へぇ…。」

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6 俺、今どんな顔してんねやろ。 ［えっと…］ 『忠義！ …またね。』 「…おん。」 そう言って、彼女たちは店を出て行った。 --- ［あんな事言っちゃって大丈夫なの？ 俺らただの同僚なのに。］ 『…いいの。 合わせてくれて、ありがとう。』

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7 -- 彼女は、ちゃんと前に進んでる。 立ち止まってるのは俺だけや。 その日の夜、 何と無く彼女と一緒にいた頃の携帯を手に取った。 そこには、彼女とのメールのやり取りが消されずに残っていた。 離れてしまった、あの日のメールも。 「俺、こんなん見てどうしたいねん。」

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8 ぼやきながら、彼女が最後に送ってきたメールを見る。 【もう、無理だよね。私たち。 もっと一緒にいたかった。】 彼女は、どんな気持ちでこれを送ったんやろ。 今更あの時の後悔が押し寄せてくる。 すると、俺はあることに気付いた。 そのメールには、 続きがあることに。

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9 「…？」 下の方にスクロールしてみると、 文字が現れた。 「…なんやねん、これ。」 そこには、 【 …でも、もう一度話し合いたい。やっぱり忠義が好き。 いつもの場所で待ってるから、ちゃんと迎えに来て。】 そう書かれていた。 はっきり見えていたはずの文字が、

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10 だんだんと滲んでいく。 「こんなん…気付くわけないやん…。」 頬を涙が濡らしていく。 携帯を握りしめ、 一人部屋の中でうずくまった。 あいつは、どんな想いで… どれだけ俺を待ってたんやろ。 あの日も雨が降っていた。 その雨の中、 どんなに寒かっただろう。 pic.twitter.com/unR7HrOwjq

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11 --- 後悔しても戻らない日々を思い出にしながら、 俺は生きて行かなきゃならない。 ポツ…ポツ… 「…あ、」 今日もまた雨が地面を濡らす。 交差点で信号を待つ人々が、次々に傘を開いた。 信号は青に変わり、俺も周りに遅れをとりつつも歩き出す。 pic.twitter.com/Zioix8qd6q

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12 みんな、ちゃんと歩いてるんやな。 俺も、前に歩かな。 ゆっくり道を渡っていく。 色とりどりの花が開く交差点で、 2人、すれ違っていることも知らずに。 END pic.twitter.com/qLttSKr86M

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