通勤電車

PoKo @Poko8_m

【通勤電車1】彼女＊side 毎朝乗る電車に幼稚園の頃に仲良かった男の子“忠義くん”と似たスーツ姿の背が高い男の人を最近よく見かける。 最後に彼に会ったのは… 確か20年以上前。 だから、彼と言う確証もない。 懐かしい子どもの頃の思い出をその人に重ねてるだけかもしれない。

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【通勤電車2】忠義＊side 先月から、転勤で地元の営業所勤務になって、実家へ戻って来た。 会社の行き帰りに、ギュウギュウおしくらまんじゅうするような都会の通勤ラッシュとは無縁の電車。 少し郊外に行くと、こうも違うんやなぁ…と思う。 やっぱり、電車を使う人が少ないからか、

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【通勤電車3】忠義＊side いつも、同じ時間の電車に乗ると、顔を合わせる面子は似ていて。 学生さんに、会社員…… 見覚えある女の人。 幼稚園が一緒で、仲良かった女の子みたいな面影がある。 大きなったら、結婚するって言うてたような子やし… 俺のファーストキスの…相手。

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【通勤電車4】忠義＊side 声を掛けようと思うことはあるけど、違ってたら嫌やな…って思って、声を掛けるを躊躇する。 そんなある日の朝… 「大倉？久しぶりやなぁ！」 「え！横山くん？」 「どうしたん？」 「おん、実は今月から地元に帰って来たんやけどさぁ…」 「ホンマに？」

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【通勤電車5】彼女＊side 朝から、駅で聞き覚えのある声。 やっぱり侯くん。そして…あの人。 2人知り合いなのかな？ 侯くん、普段は車なのにな…と思いながら、近くを通ると声を掛けられた。 「お前もこの電車に乗るん？」 「侯くんが朝、電車は珍しいね」 「今日、飲み会やねん」

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【通勤電車6】忠義＊side 「横山くんの彼女？」 「ちゃうよ。近所の奴っちゅうか、幼馴染？」 さりげなく彼女の方を見ると、幼稚園の時に仲良かった女の子に似てる人…？ 「あ、こいつ、高校の時、一緒やった大倉」 「どうも」 「あの、電車、いつも一緒ですよね？」 「そうですね」

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【通勤電車7】忠義＊side 「あの…」 「なぁ、大倉…そういえばさ…」 俺に何か彼女が言いかけたのに、その言葉を遮るように、横山くんが話し掛けてくる。 「じゃあ、また」 そう言って、彼女はいつも乗る俺の隣の乗車位置ではなく、違う車両へ行ってしまった。 「おん、またな〜」

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【通勤電車8】忠義＊side 聞きたいことあったのにな…と思いつつ、後姿を見送る。 「なぁ、大倉って独身やんな？」 「まぁ…」 「彼女は居るん？」 「彼女なぁ…。こっちに戻って来る時に遠距離は嫌って言われて別れたゎ」 「じゃあ、あいつとかどうよ」 「どうって言われてもやな」

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【通勤電車9】侯隆＊side 「あいつ、彼氏居ったことないねん」 「この歳になってまでとか、ないやろ」 「幼馴染の俺が言うんやから、間違いやないで。せやから、俺心配してんねん、いろいろとやから、あいつ…どう？」 誰にもあいつを渡す気は無いのに、何でかそういうことを言ってまう。

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【通勤電車10】忠義＊side 「横山くんこそ、どうなん？」 「いいなって思ったこともあるで？せやけど、掴み所がないっちゅうか…。それに今更…男と女っちゅうのも何かな…恥ずかしいやんか」 「それはあるな」 「せやろ？」 横山くん、本当に分かりやすい。好きなんや。あの人を。

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【通勤電車11】彼女＊side 「あの人、侯くんの友達なのか…」 彼は大倉くんって言うんだ… でも、幼稚園の頃に仲の良かった男の子の名前は、やっぱり、忠義くんってことしか思い出せなくて。 侯くんに大倉さんの下の名前、聞こうかな？ 挨拶とかした方がイイよね…とか思うけど、

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【通勤電車12】彼女＊side 翌日から、人見知りな性格が災いして、思わず避けて、わざと違う車両へ乗ってしまう。 でも、幼稚園の頃に仲の良かった忠義くんかどうかも気になってる自分も居て、声をかけてみようと思ったり… そんな感じで、日々が過ぎて行く。 そんなある日の帰り道。

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【通勤電車13】彼女＊side 「夜に会うの珍しいですね」 大倉さんに声を掛けられる。 「どうも」 「最近、朝も違うから、どうしたのかな？って思ったんですよ。避けられてるのかな？とか」 「そう言うわけでは…」 「だったら、いいんやけど」 そう言って笑う顔に懐かしさを感じる。

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【通勤電車14】彼女＊side 「実は、侯くんと大倉さんが一緒に居た日に…。聞こうとしたことがあって。下の名前は、もしかして、忠義くんですか？」 ドキドキしながら質問すると… 「なんで、俺の名前」 って笑ながら驚いた顔をされた。 pic.twitter.com/HVEROmtB67

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【通勤電車15】忠義＊side 横山くんの幼馴染はやっぱり、幼稚園の時に仲の良かった子やった。 「なぁ、金曜やし、明日休みやし、飯でも一緒に行かへん？」 単純に色々話したいと思った。 せやけど… 「ごめんなさい。今日は用事が…」 「じゃあ、明日は？」 「明日も、約束が…」

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【通勤電車16】忠義＊side 横山くんの言ってたことを思い出す。 掴み所がないって言うより、ガードが硬いのか… それとも… 好きな人でも居るんかな？ 「いつなら大丈夫なん？」 「来月の…」 1ヶ月近く先やんか！ 「今日やなきゃあかんな。行くで！」 「ちょっと待って…」

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【通勤電車17】彼女＊side 忠義くんに手を引っ張られて、そのまま普段は降りないような駅に降りる。 「さぁ！何、食おっか？」 知らない場所だからなのか、それとも… 侯くん以外の男の人と2人で、ご飯行くのが久しぶりだからか、少しドキドキする。 「ご飯付き合うから、手を…」

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【通勤電車18】忠義＊side 「あ、ごめん…」 幼稚園の頃は違和感なく、繋いでいただろう手を急いで離す。 あの頃とは違う手。 お互い成長したんやな… でも、勢いで彼女の手を掴んで電車降りてみたけど… 俺、この辺りよく知らん。 「とりあえず、改札出よか？」 「そうだね」

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【通勤電車19】忠義＊side 降りたら、何もなくて。 降りた駅…完全に失敗した。 2駅我慢すれば、女の子と行ってみたかった洒落た店とかあったんやけど…と思ったりもする。 唯一、駅前にあったのが、ちょっと汚い感じだけど、年季の入ったラーメン屋くらいで。 「ラーメンか…」

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【通勤電車20】忠義＊side 俺の困った気持ちを知ってか知らずか、彼女は、ニコッと笑う。 「私、お洒落なお店より、ラーメンに餃子と生ビールの方が好きだから。それに、ここのラーメン屋さん確か…有名だよ。食べログで見たことあるし、確か★4以上！」 今度は逆に俺が手を引かれる。

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【通勤電車21】忠義＊side 「そーいや、ラーメン好きやったな。思い出した！」 思わず、ククッて笑ってしまう。 変わらんな… 変わったとしたら、それに餃子と生ビールが付いたくらい？ 「忠義くんはカレーだよね？」 「せやで。今も好き♡」 そう言うと、彼女はまた、笑った。

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【通勤電車22】忠義＊side 彼女が言った通り、美味しいらしく、そこそこ列もあって。 外に置いてある簡易椅子に座って待つ。待つ間、吐く息は白く、少しずつ、季節の移ろいを感じる。 「あ、あのな…。話しとって、時々出てくる〜ですよねとか、他人行儀辞めや？知らん仲や無いんやし」

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【通勤電車23】忠義＊side 「いろんな意味で久しぶり過ぎて、接し方がわからなくて…ごめんなさい」 「いろんな意味で？」 「大倉さんとして、接したらいいのか、それとも、忠義くんとして、接したらいのか、迷って…。それに侯くん以外の男の人と2人でご飯行くのとか久しぶり過ぎて」

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【通勤電車24】忠義＊side 拒むみたいに断ったんは緊張してたからとかなんかな…？ 「何？それくらい。俺なんやし気ぃ使わんで、えぇよ。それに、ラーメンに餃子に生ビールのような子の方が俺は話てて、楽やな。まぁ、男として、カッコつけたい時はちょっと、アレやけど」 「だよね…」

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【通勤電車25】忠義＊side 俺の周りに居る子は、きゃいきゃい言いながら、ご飯とか行きましょうよ♡とか女子を振りまいて来る奴ばかりやけど、こういう子もええよな。 彼氏が今まで、居らんって横山くんが言うから、変わりもんなんかな？と思ったけど、横山くんが過保護に取扱過ぎてる気が…