#ダークエルフ王国見聞録 その16 ~エルフ連合と新たなオーク禍~

著者 へどばんさん pixiv版(https://www.pixiv.net/series.php?id=823771) 大戦編 白黒エルフ連合とオーク・ゴブリン・トロル連合 その1 続きを読む
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へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

燃えて爆ぜた黒焦げの木々の残骸が並び、数多の黒い煙が上る夕空に紅く照らされた大地には大小の骸がそこここに転がっていた。或いは首を刎ねられた小鬼、或いは魔道の炎に炭と化したオーク、或いは二つに裂けた巨大なトロル、そしてそこに混じる白と黒のエルフの兵。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-27 00:23:31
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私は、紫を帯びた金色の瞳に燃えるような闘志を浮かべ、長刀を鋭く振るって刀身に付いた敵の血を払うセラと彼女が率いる一隊の戦士達の背中に囲まれ、そしてその周囲、猛々しい咆哮を上げながら屍を越えて迫るゴブリン、トロルそしてオークの兵たちにも囲まれていた #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-27 00:23:54
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

走り叫びながら戦斧を振り上げるオークに対し、セラは低く大股に踏み込みながらその喉元に長刀を突き入れる。激しく血を噴き出しながらも最後の力で刀身を掴もうとするオークの戦士の首を横に裂き、その脇から殴り込もうとする別の豚鬼を、腰を引きながら袈裟に切り倒す #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-27 00:24:17
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

その横では目の下にうっすら隈を浮かべた術士が、呪文を詠唱しながら呪印に燐光を浮かべた掌を地に付けると、その正面に幾本もの土砂の槍が突き出し、数体のゴブリンやオークを貫通して屠るが、その魔術の土槍は直ぐに崩れ、串刺しの屍を地に落としながら消えていく #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-27 00:24:39
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「百卒長殿!この死地、先の戦を思い出しますな!」 斧槍の斧を小鬼の頭に叩き込み、そのまま力押しに斧槍を突き出し、後に続く小鬼の喉に槍を捻じ込んだ黒髪・隻眼の女戦士が、柄を引き戻し、獰猛な笑みを浮かべながら横のセラに語りかける #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-27 00:25:33
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「左様な軽口が出るのであれば、あれ程の死地ではあるまいよ、ヴィーペラ。とはいえ、ここが踏ん張り所ではあるな」 セラはそう答えながら、長刀を地面に転がったトロルの右腕辺りであったあろうものに突き刺して、空いた手で矢筒から取り出した短弓を構えて放つ。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-27 00:26:01
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

奮戦する彼女らの背に囲まれながら、私は傷つきぐったりとしている顔見知りの魔道兵長・ザラムドラの介抱をしていた。薬師から受け取った気付けの丸薬を皮袋からの水で飲みこませ、薬草を揉んで滴る汁を体中の怪我に刷り込んで、汗だくになりながらも包帯を巻いていく。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-27 00:26:18
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

姿こそこの場所から見えないが、左右前後のあらゆる方向から或いは味方の、或いは敵の咆哮が聞こえ、木々の燃える匂い、硫黄や泥の匂い、そして汗と血の匂いが漂っている。風に乗って響く伝令や鬨、断末魔の声が時に騒がしくなり、時に一瞬の静寂が周囲を包み込む。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-27 00:26:41
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

丸薬の効き目があったのか、ううと声を漏らしながらザラムドラの意識が頼りなさ気に戻る。これに安心すると、先程の土槍の魔術の発動を最後に消耗しすぎたのか導師が一人倒れ込み、ダークエルフの兵(つわもの)達は、この者の介抱を私に任せ、一人抜けた円陣を更に狭める。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-27 00:27:25
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

この地はダークエルフ王国の北西、ライトエルフ達の領域。遥か北の深き黒森から現れたオークやゴブリン、トロル達とライトエルフとダークエルフの軍勢が衝突した戦場に私はいた。魔道兵の体を抱え、丸薬と水を飲ませながら、この戦場へ来るに至った経緯を思い返していた #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-27 00:28:58
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

この大戦の起りは、氏族長の居城の大普請があった年の夏、大規模なオークの群れが隣国であるエルフの領域を侵しつつあるという報告であった。初めは深山を渡り歩く山床の者達の風聞であり、それらは“黒鋼の嘴と爪を研ぐ狗鷲”氏族や女王旗下の斥候に確認された #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:38:05
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

彼らの報告により、今回のオーク禍を為すオーク達の群れには、従来と異なり巨躯のトロルや狡猾なゴブリンの姿も混じっているとのことであり、またその規模もかなり大きなものであることが明らかとなったのである。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:38:21
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

この怪物達の群れはエルフの領域へと向かって南下を続けていたため、ダークエルフの女王は軍勢を派遣してエルフの国との境である北西の守りを固めると共に、この脅威について永らく敵対関係にあるライトエルフ達の王と協議をすることとした。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:38:45
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

幾たびかの戦を重ねてきた両者は、これまでの休戦の約定において、互いの種族が相手の国土に許可なく入ることを禁じ、また心理的に忌避していたため、国境に位置する“狗鷲”氏族の長を取り次ぎとしつつ、異種族の者を使者に立てて交渉をしたと聞く。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:40:10
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

互いの敵対意識の強さもあり、ダークエルフの軍勢のライトエルフの土地への進出について、交渉は紆余曲折があったと聞くが、迫りくる災厄を前にしてともかく援軍としてダークエルフの軍勢が入ること、その派兵に必要な軍費や物資をライトエルフ側が負担することに決まった #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:40:28
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

一方で、ライトエルフ側が、その領域内でのダークエルフの兵による狩猟や伐採の禁制といった一般的な取り決めに加え、王国軍の軍旗が彼らの領域に入ることは認められないという条件を付けてきた。両者の戦の歴史を鑑みれば、心情的には理解できないことはない。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:40:42
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

ライトエルフ達にとってみれば、あくまで主力は彼ら自身であり、ダークエルフの兵達は個人個人が義勇の心で参じただけ。それを受け入れる上で多少の負担はするが、鷲獅子の軍旗を掲げる王国軍や近衛の組織だった入国は彼らの矜持として許せないということであろう #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:41:06
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

ライトエルフ側の提案が明らかになると、常備軍である女王旗下の国軍の兵士達はこれに強く反発した。彼女らは軍役に従う身であるが、栄誉ある鷲獅子の軍旗の下で戦うことは、彼女らの義務であると同時に戦士としての権利でもあるからである。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:41:20
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

廷臣達の中からも、斯様に非礼な条件の下では出兵すべきではないという意見が出たが、女王は氏族軍から広く兵を募って派兵することを臣下と氏族長達に下命し、参加を希望する国軍の兵には一時的に軍籍から離脱し、出身氏族の軍勢に加わることを許可することにした。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:41:39
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万金を積む価値すらあるダークエルフの強力な軍勢による援助を、敢えて忌む様なライトエルフ側の態度に不興を覚えつつも、エルフの領域がオーク禍に飲まれた場合、エルフを孕ませ倍増した更なる災厄がダークエルフ王国に将来において降りかかることを女王は危惧した #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:41:56
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

“忌むべき異母姉妹”の救援という目的については、ダークエルフ達の士気は上がらぬものの、功を為した者には二十年に渡る税の半免という恩賞、そして何よりも戦場において功を上げるという戦士としての栄誉に与る為、多くの戦士が女王の呼びかけに応じたのである #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:42:16
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

また、“群れ為す賢き大鴉”氏族に程近い場所に領国を持つ、大貴族の宝石公オブシディアンヌ殿が、手勢の魔導兵や傭兵を率いて参加し、彼女が女王の名代として参集した氏族軍を率いることが定められた。諸兵は、各氏族領において編成された後、国境の町に参集した #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:42:37
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

さて、里の戦士を束ねるセラの母・フェラフェレスは、セラも含め参戦を望む里の者達と共に氏族長の町へと赴いた。ここで氏族長旗下の将であるシェルローキが熊鷹氏族の軍勢を率いること、軍歴を鑑みて諸隊の一つをパーンセラが与ることが定められた。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:43:03
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

この頃、神祇官の職務のため、一人で王都に赴いていた私には、援軍に帯同する従軍司祭達の監督役としてエルフの領域における戦に同行するよう、上司から支持された。監督と言っても、実際には司祭の女性達の権限の方が大きく、連絡・調整を行う仕事である #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:43:26
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

また、ダークエルフ達は、黒の女神の軍勢において他種族を束ねる将としての役割を担ったという自負があるため、私を含め、異種族を軍勢に動員することが常である。戦力として期待している訳では無いが、異種族を旗下に収めることが彼女らの自意識に重要なのである #ダークエルフ王国見聞録

2017-07-30 00:43:48
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