【アイドル・ポリス26】#2
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ネオサイタマの街角に一軒の交番あり。ネオサイタマ警察ミリオン署39課。そこはオフィスを与えられてはいるものの、本庁から体よく追い払われた曲者達のデッドエンドである。今夜詰めている者は一人。ノートPCに向かい合って眉を寄せているのは、眠たげな眼のアンナ・モチヅキである。
2017-07-29 20:10:14アンナは画面端の時刻を確認した。もうじきウシミツ・アワーだ。調査は難航している。昨夜ハイウェイで起こったハイデッカー殺害事件。犯人は逃亡。その詳細は不明。マッポ・ネットにさえ情報が上がっていないということは、上層部が隠蔽していることは間違いないだろう。これ以上は危ない橋だ。
2017-07-29 20:15:08だが彼女には引けない理由があった。事件を追わねばならない。特に護送されていた人物について。アンナの瞳に危険な色が浮かび、もうしばらく使われていない脳のスイッチが「ドーモ、アンナ=サン」「アイエッ!?」突然声を掛けられアンナが飛び上がる。そして訪問者を見て再び叫んだ。
2017-07-29 20:20:07「シ、シホ=サン!?」更にその人物を包むアイドル装束を見、三度悲鳴を上げた。「アイエエエ!?アイドル!?アイドルナンデ!?」アンナは転がるように椅子の後ろに隠れ、ガタガタと震えた。無理もない。アイドルとは秘められし半神的な存在であり、モータルには畏怖の対象でしかないからだ。
2017-07-29 20:25:06「ダイジョブ。私を見て、アンナ=サン」穏やかな声に告げられアンナは陰から覗いた。そこには親しんだ友人の姿があった。アンナの目に涙が溢れる。「シホ=サン…よかった…」駆け寄って抱き合う二人。「…ゴメンね、シホ=サン。ゴメンね…」謝り続ける少女の背中を、シホはただ優しく撫でた。
2017-07-29 20:30:11…「あの検挙は実際電撃的で…ハイデッカーの一部でしか知らされてなかったみたい…ここにだって…何も…」二人はデスクでチャを飲みながら話した。「最近のハイデッカーはヒドイ…うちのボスは喧嘩上等って感じ…でも、よくない…特にあの警視…」アンナはシホの形相に気付いた。「アイエッ!?」
2017-07-29 20:35:04「…スミマセン」思わず浮かんだ表情を覆う指の隙間から静かな吐息が漏れる。「…アンナ=サン。頼みがあるの」「アンナに…?」「そう、貴女に。伝説のヤバイ級ハッカー、『国家機密』のベース、アンナ・モチヅキに」その瞬間、アンナの目が輝き薄暗い表情が一変した。「…オーケイ。何でも言って」
2017-07-29 20:40:10そう、アンナはマッポだが、以前はシホらと共に『国家機密』の一員であったのだ。その時に鳴らしたハッカー・ビビッドラビットと言えば今や伝説となっている。「私はこれから復讐を果たす。その為には貴女の助けが必要なの」シホは全てを語った。ライブ襲撃、相棒の死、そしてアイドルへの目覚め。
2017-07-29 20:45:03アンナは唾を飲んだ。危ない橋どころの話ではない。これは綱渡りだ。それも命懸けの。アンナは頷いた。「いいよ、やろう」「…いいの?」「うん、予定が早まっただけだから」そして二人は笑い合い、少しだけ昔を偲んで語り、友人の為にカンパイした。
2017-07-29 20:50:13