笹本祐一さんによる、民間ロケットMOMOの成功/失敗の判断ほか報道対応について。

笹本祐一 @sasamotoU1

成功か失敗か。今回の打ち上げについて、最初に報道の人から出た質問。今回のＭＯＭＯの打ち上げがどうなれば成功でどうなったら失敗か。それに対する笹本の答え。「打ち上げだけなら、とりあえず見えないところまで飛んでいってくれれば成功です。でも、実験としては、データがとれなければ失敗です」

笹本祐一 @sasamotoU1

「実験はデータを取るために行います。だから、例えばＭＯＭＯが目標通り宇宙空間に到達したとしても、データがとれなければ実験は失敗です。だから、ロケットが飛んでいけば打ち上げは成功、データがとれれば実験は成功、宇宙に届けば目標達成、回収できれば万々歳ってところですかねえ」

笹本祐一 @sasamotoU1

訊かれれば訊かれただけ、同じように答えるわけです。あと、後半気付いて言ってたのが、「ＧＯ／ＮＯＧＯ判断で打ち上げが一回中止になれば、それだけひとつ失敗を遠ざけることが出来たわけです。我々がなにをおいても目指さなければならないのは実験の成功ですから」

笹本祐一 @sasamotoU1

とはいえ、こっちだって取材の立場で幾度となく打ち上げに付き合ってますからね。繰り延べされればえー！？とか思うし、ごめんちょっとたんま、今回の打上げ中止ってのも何回もやればいーかげんにしろこのやろとか思うわけだ。じっさい現地でそう思いながらじりじり待ってたし。

笹本祐一 @sasamotoU1

今回もねえ、土曜日の打ち上げは昼くらいに中止が決まったからいいとして、日曜日の一発目は朝５時予定、取材陣も見学者ももちろんそれに間に合うようにまだ暗いうちから、早い人はそれこそ午前２時３時から打上げ見学場に来るわけだ。で、待ってると、いろんな理由で打上げ中止が告げられる。

笹本祐一 @sasamotoU1

報道陣に打上げ中止を告げるってのが笹本の役目のひとつでして、そのたんびにカメラの砲列に囲まれて、ニュースじゃそんな画像がしこたま流れたわけです。んで思い出したねえ。最初の種子島での取材。Ｎ１ロケットだったかＮ２の頃の昔話。今日は中止、明日も中止って８日くらいも連続延期になったって

笹本祐一 @sasamotoU1

さすがに終わり頃になると報道も殺気立ってきて、「いったいいつになったら打上げるんだ！」って広報に迫ったって話を聞いたんだ、昔。今回、朝５時脳ウィンドウからこれが最後って予告されてた昼のウィンドウ、急遽各方面に交渉して開いた夕方のウィンドウ、ぜんぶ使ったもんねえ。

笹本祐一 @sasamotoU1

午前中の打ち上げ中止は機体側メカニカルトラブル、地上系設備トラブルでまあこっちの問題だったんだが、昼間の警戒区域への船舶進入となるとさすがに報道陣も広報に迫ってもしょうがないってわかってるからあきらめ顔。「液酸いれたまんまで待機するんですか？」「それは３０分くらいが限度です」

笹本祐一 @sasamotoU1

「それじゃどうするんですか？」「スタッフは打上げると言ってますんで、そのための方策を議論してると思います」まさか一日のうちに液酸充填と排出三回もやるとはねえ。ロケット燃焼実験だけなら一回液酸抜いて再充填して実験したことあったけど、これ本番だぜ。

笹本祐一 @sasamotoU1

日曜日最初の延期の原因になった大気開放バルブの不動作については、まず大気開放バルブとは何か、なぜそれが必要なのか、ってところから説明を始めるわけだ。そうなると、液体酸素の沸点が零下１８３度で、密閉されたタンクの中で沸騰させると圧力が延々と上がって危険で、とやらなきゃならない。

笹本祐一 @sasamotoU1

んな、「風が吹けば桶屋が儲かりますので」式の説明を、一回で理解する人はほとんどいない。思い出すねえ、親「うちの子は一回言っただけじゃ聞かないんです」先生「安心してください、大人でも一回言って聞く人はいません」でも、現地で取材してれば時間はあるから、何度でも説明できるんだ。

笹本祐一 @sasamotoU1

こっちゃあ普段から使い慣れてるしモニターしてる無線で流れてるからついそのまんま「ロックス」とか言っちゃう。「ロックスってなんですか？」当たり前だよねえ。「液体酸素のことです。リキッドオキシジェン、略してＬＯｘ、ロックスって言います」以後、液体酸素って言うように気を付けるとかね。

笹本祐一 @sasamotoU1

質問してくるってことは目の前の事象に興味があって正確なところを知りたいという意欲の表れなんだから、待ってましたとばかりに何度でも説明する。まずは目の前で起きてることを正確に理解してもらわなければ正しい記事も期待できない。そんなツイート前に読んだっけ。

笹本祐一 @sasamotoU1

前後の正確な文言は覚えてないけど、夫が記者の不勉強具合を妻に愚痴ったら「それが最初のお客さんなんだから丁寧に説明しなさい！」って怒られたって話。そうよね、とにかくなにをどうしてるのか何度でも説明しなきゃ、そもそも理解してもらえないんだから。

笹本祐一 @sasamotoU1

んなことやってると、たまーに「作家の笹本さんですよね？」なんて話しかけてきてくれる人もいたり、「うちのアナウンサーが大ファンだったんです」とか教えてもらったりして、ええ、ほんっと悪いことは出来ません。

笹本祐一 @sasamotoU1

取材してたときも思ったんだが、トラブルで延期がかかるとどういうトラブルか懇切丁寧に説明されるので、トラブった部分に関してはそれだけロケットというシステムを勉強出来るんである。今回のトラブルがなければ、大気開放バルブも警戒区域の説明もしなかった可能性が大なだけに。

笹本祐一 @sasamotoU1

しかしまあ、合宿所出たのが前日の２１時、メディア受付けに入ったのが日曜午前２時、打ち上げが１６時半、その間に機体側トラブル２と地上系トラブル１、天候要因と外部要因ひとつずつと満貫全席な延期をぜえーーんぶ説明したわけで、ほんっと頼むから次はもうちょっと楽な仕事にしてロケットの神様。

笹本祐一 @sasamotoU1

ちゅーわけで、延期を告げる広報に詰め寄るようなこともなく、当たり散らすようなこともなく、軽く半日を越えるロケット打ち上げ待ちに辛抱強く付き合って頂いた現地の報道各社にはやはり感謝しかない。また次回もその次もあります。またよろしくおねがいします。

笹本祐一 @sasamotoU1

これも、結果はどうあれちゃんと機体に火が点いて飛んでいってくれたから言える台詞よね。そういうわけで最初の笹本の基準だと、打ち上げは成功、実験もデータがとれたから成功、目標は達成できず、でも機体は一部回収できて嬉しい、ってのが今回の打ち上げの結果になる。

笹本祐一 @sasamotoU1

これだけいろいろトラブル出たってことはそれだけ失敗の芽を摘めたってことでもあるし、丸二日の打ち上げで事故も怪我もなにもなくちゃあんと無事に済んだんだから、そっちは百点よ。これで次の実験もできるし、成功率も上げることが期待できる。次回、乞うご期待。

笹本祐一 @sasamotoU1

緩募。広報としてカメラの砲列に囲まれたときにぶちかましたいボケ。笹本の人生に想定してた事態じゃないんで、「巨大不明生物に関する最新情報をお伝えします」くらいしか思いつかなかったのよ。やってないけど。

笹本祐一 @sasamotoU1

林「わたし、打ち上げ、もう１７回も見ました」 笹本「……勝った。数えてませんがＨ２ロケットは２号機以外ぜんぶ、ＭＶロケットもぜんぶ見てて、他にもいろいろ行ってますんでたぶんもっと見てます」んな大人げない会話を打上げ待ちながらやっとったわけです。 twitter.com/payapima/statu…

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@sasamotoU1 それは今回とても強く感じました。大変お世話になりました。ありがとうございます。本当にお疲れ様でした。

2017-08-02 01:47:35

笹本祐一 @sasamotoU1

しかしまーよそ様の打ち上げ取材は２０１０年代以降めっきり減ってるんで、打ち上げ見学回数を林さんに抜かれるのも時間の問題かもしれない。大丈夫、まだ「日本で一番数多くの燃焼実験に立ち会った作家」の称号がある（だからやめれ

笹本祐一 @sasamotoU1

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笹本祐一 @sasamotoU1

今回のＭＯＭＯロケットに繋がったもとネタのひとつ、あさりよしとお「なつのロケット」amzn.to/2uXuTKz　ヤングアニマルで連載されたのが１９９９年なんで、ＩＳＴ社長をはじめとするメインスタッフはだいたい当時小学生で、長じてロケット打上げた計算になります。