ビー・ギブアップ・オール・ホープ #2

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えみゅう提督 @emyuteitoku

「イヤーッ!」スクトゥムの巨大な拳がマンモスの脇腹に直撃!「グム!…グッフッフ効かんなぁ!」マンモスは反撃せずに、サイドチェストを見せつける。見事なポージングだが、無論イクサには無関係、隙だらけのマンモスの背中にチェルノボグのチョップが迫る。「イヤーッ!」1

2017-08-06 17:08:33
えみゅう提督 @emyuteitoku

これも直撃!だが…「効かん効かん!俺の肉体は構えなどなくともムテキ!俺を倒せるのはボスのタンソウホウのみよ!」マンモスの肉体はびくともしない。一度距離を離しスクトゥムとチェルノボグが並び立つ。「ちっくしょお、硬えなこいつ!見た目どおりのガッチガチだ!」2

2017-08-06 17:10:02
えみゅう提督 @emyuteitoku

「硬いだと?」スクトゥムの言葉にチェルノボグが眉を寄せる。「確かに貫き難いが、硬くはないだろう。柔軟に吸収してくるタイプの装甲だ」「あん?背中は俺もさっき殴ったがガチガチだったぞ?」二人の意見が一致しない。「どういうことだ?…頭は単純だが、あの装甲、複雑らしいな」3

2017-08-06 17:11:19
えみゅう提督 @emyuteitoku

「グハハハ!隙だらけだぞ!タンソウホウ発射よーい!」マンモスが腰を突き出し股間の巨大単装砲の狙いを定める。「させるかよ!ドッソイ!」スクトゥムがマンモスに組み付いた。近距離では長い砲身が仇となる。「グムー!今はスモウの気分ではない!とっとと離れんか!」4

2017-08-06 17:13:10
えみゅう提督 @emyuteitoku

マンモスは股間の単装砲を上下に揺さぶった。砲身が揺れるたびにスクトゥムの股をてちてちと叩く。「だあああ!ヤメロー!そういうのが一番堪えるんだよ!」「ならば大人しく離れてタンソウホウの餌食となれ!フンヌー!」マンモスが白い息を吐きながらスクトゥムの体を押し返す。5

2017-08-06 17:15:01
えみゅう提督 @emyuteitoku

「んぎぎ!なんつう馬力だ!チェルノボグ!」スクトゥムがマンモスの背後に回ったチェルノボグに合図する。「チョップが防がれるのならば、これはどうだ。イヤーッ!」チェルノボグ渾身のポン・パンチがマンモスの背中に命中!マンモスの反応は――「いででで!グムー!何をする!」6

2017-08-06 17:17:18
えみゅう提督 @emyuteitoku

手ごたえはあれど浅い。だが、今はスクトゥムが組み付いている!「今だ!イヤーッ!」「ヌオオ?!」マンモスの巨体が上空に投げ飛ばされた。「隙だらけだぜ!イヤーッ!」スクトゥムはチョップで追撃!ワザマエ!吹き飛ばされたマンモスは受け身も取れないまま海面に叩きつけられた。7

2017-08-06 17:18:46
えみゅう提督 @emyuteitoku

見事なコンビネーションを見せた二人は、それぞれカラテを振るった自分の腕を見た。「今度は硬かった…スクトゥム、お前の方は?」「お前の言った通りだ。や、柔かった。包み込むっていうか、まるでシャーベットでも殴ったみてえだ。どうなってる?!」二人の手ごたえは間違っていなかった。8

2017-08-06 17:20:14
えみゅう提督 @emyuteitoku

マンモスのカラテは単純で隙だらけでバカである。だが、肉体は複雑怪奇に攻撃を受け止める。「ムフー、ようやく理解できたようだな。貴様らでは俺の肉体の謎は解けん。何せ、俺自身でも何でこんなことになっているのかわからんのだからな!グハハハ!」「自分でわかってないのかよ!」9

2017-08-06 17:21:31
えみゅう提督 @emyuteitoku

少し時間は巻き戻る。ガネーシャと対峙するコールドレインは乱れる心を落ち着かせようと呼吸を整えていた。しかし、彼女の鼓動は激しく暴れたまま収まる気配がない。(勝てない)余りに単純な事実がコールドレインを焦らせた。ガネーシャは彼女の動揺に包み込むような視線を向ける。11

2017-08-06 17:23:45
えみゅう提督 @emyuteitoku

「私がなぜ君をイクサの相手に選んだかわかるか?」唐突な問い。コールドレインは口を開けたが何も言葉は出なかった。ガネーシャは続ける。「君があの中で一番弱いからだ」冷酷な事実、されどガネーシャの声にはやさしみがあった。「興味があると言ったのも事実、チャクラムの使い手だろう」12

2017-08-06 17:25:41
えみゅう提督 @emyuteitoku

「なぜそれを…」「腕の力の入れ方、肩の肉付き。武器を携えていない所を見るに宙から生成するコリ・チャクラムを主体にしたミドルレンジが君の距離だ」コールドレインの手の内は、最初の一瞬で看破されていたのだ。「全てわかった上でのご指名か。だが、時間稼ぎくらいはさせてもらう」13

2017-08-06 17:26:51
えみゅう提督 @emyuteitoku

決死の覚悟を決めるコールドレインの構えを前にしても、なおガネーシャの目からやさしみは絶えない。「死に急ぐな若人よ。時間稼ぎは、私がする側だ」「…?どういうことだ。ガネーシャ=サン」「チャクラムを振るうなら知っているはずだ。印の国の闘法、カラテパヤットのことを」14

2017-08-06 17:28:56
えみゅう提督 @emyuteitoku

コールドレインは頷く。「カラテの源流にして、その技は多彩にして無数。チャクラムもその中の一つと聞く」カラテパヤット、余りに多彩すぎる型を持つため習得は至難、だが一つでも流派を極めることができたのならば絶大な力をもたらす、魔技と称される古代インドカラテである。15

2017-08-06 17:30:53
えみゅう提督 @emyuteitoku

「しかし、カラテパヤットは強力さゆえに使用を禁じられ、伝わる流派は今や極僅か。ガネーシャ=サンはどの流派の型を極めたのだ?」「全てだ」「…は?」度が過ぎる物言いにコールドレインは気の抜けた声を返す。カラテパヤットは無数にして変幻、一つの身で極めるカラテではない。16

2017-08-06 17:32:10
えみゅう提督 @emyuteitoku

「全てなどできるはずがない」「いいや、できる。現に私がそうした。三つの流派、十八の構え、十八の武器、私はその全てを六肢一本一本に極めた」ハッタリも度が過ぎればジョークにすらならない。コールドレインの鼓動が途端に落ち着きを取り戻す。「貴女が強いのは認めるが、程が過ぎ――」17

2017-08-06 17:33:51
えみゅう提督 @emyuteitoku

言い終わる前に、ガネーシャが目の前にいた。ガネーシャの高い鼻先が、コールドレインのメンポに擦りついた。「なっ…あ!?」コールドレインは尻もちを付く。何も見えなかった、接近の際の風のうねりすら感じなかった、ガネーシャが通ったはずの海面には一つの波紋も見当たらない。18

2017-08-06 17:35:02
えみゅう提督 @emyuteitoku

「これは右足によるワダッカン・猪の構えの踏み込みと、左足のテッカン・蛇の構えのすり抜けを合わせた歩法だ」コールドレインは確信した。ガネーシャの言葉に一切の偽りはない。失われた古代インドの魔技の全てが目の前にある。「コールドレイン=サン、次は君のカラテを見せて欲しい」19

2017-08-06 17:36:40
えみゅう提督 @emyuteitoku

ガネーシャは左肩の装甲に手を置いた。彼女の指が触れた途端、鈍色の装甲は形状を変え、三叉槍トリシューラとなる。(己の物とはいえ、装甲の形状を容易く変えるとは、いかなるジツか…)「私はジツなど持っていない」ガネーシャは見透かしたようにコールドレインの疑問に答える。20

2017-08-06 17:38:35
えみゅう提督 @emyuteitoku

「私に特別な力はない。我が身に宿るカラテに、手を触れた物が呼応しているだけだ。――何をぼんやりとしている!かかってこいコールドレイン=サン!」ガネーシャが構えるのは前右腕一本のみ、未だ海面にへたり込んでいたコールドレインは決断的に立ち上がりバク転で距離を離す。21

2017-08-06 17:39:55
えみゅう提督 @emyuteitoku

コールドレインの手に三つのコリ・チャクラムが生成された。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」コールドレインのコリ・チャクラム三連投!決して乱射した物ではない、三つ全てがガネーシャの急所を正確に狙う。コールドレインが磨き続けてきた鍛錬の終着点、不可避の三連撃!22

2017-08-06 17:41:27
えみゅう提督 @emyuteitoku

凍り付くようなタツジンの連撃を「ハイヤッ!」ガネーシャはトリシューラで受ける。一振りの内に、三つの穂先それぞれにコリ・チャクラムを縁日出店の輪投げめいて捉えた。何たるワザマエ!「数が多ければ実際当たりやすい、だがヒサツワザだけでイクサを制すことはできん!ハイヤッ!」23

2017-08-06 17:43:05
えみゅう提督 @emyuteitoku

不可視の速度で振るわれたトリシューラからコリ・チャクラムが放たれ海面を走る。チャクラムは海を切り裂きながらコールドレインの両脇と股下をすり抜ける。切り裂かれた海が閉じるまで1秒、2秒――3秒!プチモーゼめいた海の両断、いか程の鍛錬があればこの奇跡に至るのか。24

2017-08-06 17:44:23
えみゅう提督 @emyuteitoku

「これが…カラテパヤット」戦慄するコールドレインに何かが投げつけられた。彼女はそれを咄嗟に防ぐ…いや受け取った!「ワッザ?!トリシューラ!?」「貸してやろう。構えい!」ガネーシャは右肩の装甲から練り上げたボーを手に突進!ボーの一閃がコールドレインのこめかみに襲い掛かる。25

2017-08-06 17:47:22