敗戦国・日本の英語教科書を読んでみよう

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1)伝説の英語教科書『ジャック&ベティ』を見ていきましょう。これは昭和29年の改訂版。復刻版が手に入ったのでそれをもとに分析。 pic.twitter.com/WJPDlQgtdl

2017-08-16 13:27:55
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2)「ORAL DRILL」(発声練習)としてこんな風に始まる。 pic.twitter.com/INNNcguXvF

2017-08-16 13:29:42
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3)やがて会話文に切り替わる。「This is a watch.」「That is a watch.」 この反復練習から体で会得する。「This」と「That」は手に持っているかいないかで切り替わるのだと。実は正しくないんですけどね「That」のニュアンス。 pic.twitter.com/dXFCDd07vg

2017-08-16 13:32:52
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4)先のページをもう一度見てみましょう。「pen」と「a pen」が並んでいます。これだけでは両者の違いが何なのかわからない。さらに「This is a pen.」といきなり繰り出されてももっとわからない。たぶんまず発声をさせて体に馴染ませるのを狙ったのです。 pic.twitter.com/eZy6AlIcgv

2017-08-16 13:36:02
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5)よくわからないけれど体に音が馴染んだところにこのページが現れる。これで多少つかめてくる。「これは時計」「それは時計」なんだなって。 pic.twitter.com/3XyGjdJwFq

2017-08-16 13:37:08
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6)「I am a teacher.」「You are a teacher.」 先のページは「is」でしたが今度は「am」と「are」がデビュー。いわゆるbe動詞に慣れさせるのが狙い。 pic.twitter.com/3uiPzlIwnK

2017-08-16 13:39:17
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7)そしてようやく本編スタート。「am」オンリーで文が並ぶ。 pic.twitter.com/45Jw58qULp

2017-08-16 13:40:38
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8)日本語で解説が挟まる。実は『ジャック&ベティ』の最初の版ではこういうのはなかったそうです。オールイングリッシュの教科書でした。しかし教師や生徒の側から要望というか不満の声があって、それで多少日本語を入れたのだとか。 pic.twitter.com/PZBV6qwPwC

2017-08-16 13:42:48
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9)「are」オンリーで文が並ぶ。シュールですね。 pic.twitter.com/nPVXwyaGUx

2017-08-16 13:44:01
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10)「are」と「am」が同時出演を始める。be動詞の基本を教えるのが狙いです。「I」のときは「am」で、「you」のときは「are」になるんですよ、と。 pic.twitter.com/RcyJDm4pkl

2017-08-16 13:45:58
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11)「I am Jack.」のときは「a」がないのに「I am a schoolboy.」には「a」が挟まる…一応先の日本語解説ページでこの規則については触れられていますが、「a」の用法について踏み込んではいなくて、何か記号みたいな扱いです。 pic.twitter.com/ppPQsnii0M

2017-08-16 13:48:13
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12)ここで私は苛立ってくる。「I have a Coke.」なら「コカ・コーラが一びんある」だけど「I have coke.」なら「コカインがある」になってしまう怖さを知っているので「a」の説明をしっかりやっていない本には苛立ってしまう。

2017-08-16 13:49:41
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13)「I ate chicken.」なら「鶏肉を食べた」だけど「I ate a chicken.」では「鶏を一匹食べた」になってしまう。たかが「a」と舐めてかかるとこんな風にえらいことになってしまいます。

2017-08-16 13:50:46
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14)シュールな会話はさらに続く。「This is a pen.」「This is my pen.」。「これはペンです」「これは私のペンです」。「my」(私の)がここでデビュー。所有格を教えようとしているページ。 pic.twitter.com/Kl7z8igsjj

2017-08-16 13:53:23
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15)「あなたは生徒ですか」「はい、わたしは生徒です」「あなたは教師ですか」「いいえ、わたしは教師ではありません」 シュールな会話ですが「not」を教えているのです。「~ではありません」文がここでデビューしているのです。 pic.twitter.com/heup5n8Ckh

2017-08-16 13:57:04
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16)スピルバーグの『未知との遭遇』で、異星人の超巨大UFOが現れて、人間側が音楽を使って交信を試みるシーン。UFOは自分たちにことばのイロハを教えようとしている、だからまず相手の演奏をなぞってこちらも音を出してみよう、と。youtu.be/S4PYI6TzqYk

2017-08-16 14:01:00
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17)シュールな音楽演奏が繰り広げられる。『ジャック&ベティ』はまさにこれです。

2017-08-16 14:01:50
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18)『ジャック&ベティ』はまさにエイリアン(外国人)とのコミュニケーション技術を体で会得することを目指した教材だといえます。

2017-08-16 14:03:53
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19)70年を経た今もその理想は生きています。 pic.twitter.com/SWi3vVaovz

2017-08-16 14:05:14
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20)ただ『未知との遭遇』の交信はおそらく数学的言語です。1たす1は2に「#」、1たす3は2と「~」、ということは「#」は「等しい」で「~」は「等しくない」のことなのだろう…こうやって共通理解語彙を増やしていく。

2017-08-16 14:10:05
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21)私たちが使う言語はこんなに厳格ではない。「Are you Ando Saki?」と問われて「Yes, I am.」なんて名札を指しながら答えたりしたら「そうです見ればわかるでしょ」と受け取られる。「Yes, ma'am.」でないと誤解される。

2017-08-16 14:12:03
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22)「月がきれいですね」が恋心の表現にもなる。それが人間の言語。それを『ジャック&ベティ』はレンガを積み上げるみたいにがっちがちに理詰めで教えこもうとしているのです。

2017-08-16 14:16:46
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23)この呪縛からもういいかげん逃れるべきです。

2017-08-16 14:17:26
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24)シュールな会話はもう廃止する。そして4歳児が実際にするような会話レベルまで引き上げる。レンガの積み上げ式の教え方も止めてしまうべき。

2017-08-16 14:23:29
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25)「トウモロコシを、お母さんに届ける気だったの?」→「Were you bringing that corn to the hospital?」 過去進行形は中二で一応習うのだけど「~するつもりだったの?」用法は教科書には載らない。レンガ積み上げ方式に馴染まないから。 pic.twitter.com/qkJUPJrqAz

2017-08-16 14:27:09
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