東大病院放射線治療チーム(@team_nakagawa)による内部被曝による健康被害の解説

東大病院放射線治療チームが内部被曝による健康への影響をツイートされています。 この続きの「妊婦・胎児への影響、測定方法についての補足」は http://togetter.com/li/115041 にまとめてあります。
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東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

では、昨日の続きです。放射性ヨウ素(I)やセシウム(Cs)による内部被ばくによって、具体的にどの程度の健康被害が起きるのでしょうか。内部被ばくについて考える前に、「放射能(Bq:ベクレル)」と「被ばく量(Sv:シーベルト)」の違いについて見てみましょう。

2011-03-21 11:13:07
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

崩壊した時に出てくるベータ線やガンマ線(放射線)が、人体にダメージを与えます。そのダメージを「被ばく量(Sv:シーベルト)」で表しています。「放射能(Bq:ベクレル)」と「被ばく量(Sv:シーベルト)」は密接な関係にあります。放射能が増えると被ばく量も当然増えます。

2011-03-21 11:13:31
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

食物に含まれる「放射能(Bq:ベクレル)」が、それを摂取する私たちにどれだけ「被ばく量(Sv:シーベルト)」を与えるかは、放射性物質の種類、取り込み方(吸引か経口か)、私たちの年齢などによって変わります。これらを考慮すれば「放射能(Bq)」から「被ばく量(Sv)」に変換できます。

2011-03-21 11:13:41
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

では、まずCs(セシウム)を見てみましょう。Cs-134(セシウム134)は、3月16日8時に福島市で水道水中に1kgあたり25Bq(ベクレル)観測されました。それ以降は観測されていません。

2011-03-21 11:13:49
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

被ばく量に変換するためのCs-134(セシウム134)の「変換係数」は、大人で0.019μSv/Bqです。つまり、1Bq(ベクレル)で、0.019μSv(マイクロシーベルト)の被ばく量であると計算できます。この「変換係数」は、私たちの年齢などによって変わります。

2011-03-21 11:13:56
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

では、3月16日8時に福島市での水道水を2リットル飲んだとしましょう。体内には50BqのCs-134が取り込まれます。「変換係数」を使うと0.95μSv(マイクロシーベルト)の被ばくです。同様にCs-137では、0.86μSvの被ばくです。両方足し合わせると、1.81μSvです。

2011-03-21 11:14:04
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

3月19日、ホウレンソウに1kgあたり524Bq(ベクレル)のCs(セシウム)が観測されました。Cs-134かCs-137か内訳はわかっていませんので半分ずつだと仮定します。このホウレンソウを100g食べたとすると、トータルで0.84μSv(マイクロシーベルト)の被ばくとなります

2011-03-21 11:14:12
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

ちなみに私たちは日頃から食物に含まれる放射性K(カリウム)による被ばくを受けています。それは1年で100〜200μSv(マイクロシーベルト)と推定されています。

2011-03-21 11:14:22
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

今推定したCs(セシウム)の被ばく量は、放射性物質を一度摂取したことによって70歳になるまでに蓄積されるであろう被ばく量を表します。もちろん年齢による代謝や食生活の違いによって個人差も生じると考えられます。

2011-03-21 11:14:29
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

ここで推定されたCs(セシウム)の被ばく量は少ないように見えますが、食品衛生法上の暫定(ざんてい)規制値を越えているのも事実です。規制値を越えた食物の流通を管理することで、国民の安全が確保されると考えています。

2011-03-21 11:14:38
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

ホウレンソウで観測された放射性物質の量は、ホウレンソウが洗われていない状態で測定されているようです。したがって今皆さんが見積もった被ばくは過大評価されているかもしれないと意識しておいてください。また、乳児はお母さんの母乳から摂取するとします。乳児は、ホウレンソウは食べられません!

2011-03-21 11:15:01
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

お母さんがホウレンソウを100g摂取し、ヨウ素の1/4が母乳へ移るとして(http://j.mp/gVh9nC 原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について)、15,020×0.1×0.25×0.140 = 52.57μSv(マイクロシーベルト)が被ばく量となります。

2011-03-21 18:52:16
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

乳児の方がお母さんよりも被ばくが多くなります。ヨウ素が母乳で濃縮されることが理由ではありません。乳児に影響を与えるのは、摂取した母乳中のヨウ素の濃さではなく蓄積量ですから、ヨウ素をお母さん以上に摂取することはあり得ません。乳児は大人よりも放射線に対して敏感なことが理由です。

2011-03-21 18:52:25
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

他の食物や自然界からの放射線をすべて考慮して、被ばく量を考慮すべきというご指摘をいただいていますが、その点はまったくその通りです。

2011-03-21 18:52:41
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

なお「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」(厚労省)によると、食物の放射能測定前に水洗は行なっていないようです。数値データに関しては国際放射線防護委員会レポートを参照ください。

2011-03-21 18:52:46
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

原子力安全・保安院の文書に、福島第一原発敷地内で観測された核種(放射性物質の種類)の分析結果が出ています。http://bit.ly/dEubzR(PDF文書)。

2011-03-21 19:31:55
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

放射性物質の放射能に警戒するには、その〈量=測定値〉と〈時間=半減期〉の関係を正しく理解することが重要です。

2011-03-21 19:32:03
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

現在の福島第一原発敷地内での放射能は、I-131(ヨウ素131)で1リットルあたり5.94(Bq:ベクレル)となっており、Cs-137(セシウム137)1リットルあたり0.022Bqよりも大きいですね。現時点ではI-131のほうが「放射能」は強い、と言えます。

2011-03-21 19:32:10
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

この値から、I-131(ヨウ素131)とCs-137(セシウム137)それぞれ1リットルあたりの個数を出してみましょう。答えはI-131が69個、Cs-137が380個となります。なんと、Cs-137のほうが多いのです。

2011-03-21 19:32:18
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

@team_nakagawa こちらに誤りがございました。ヨウ素131が”69個"ではなく"600万個”、セシウム137が”380個”ではなく”3300万個”です。ご指摘くださった方、大変有難うございました。m(_ _)m

2011-03-22 00:33:02
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

I-131(ヨウ素131)は8日で半分になります。現時点での放射能は大きいけれど、3ヶ月もあればなくなります。

2011-03-21 19:32:27
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

一方、Cs-137(セシウム137)が半分になるには30年必要です。その数もI-131(ヨウ素131)に比べて初めから5倍以上多いのです。長期的に見れば放射能もCsのほうが多くなります。Cs-137が拡散すれば持続的な被ばくにつながることが理解できると思います。

2011-03-21 19:32:35
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

もちろん、これはあくまで原発事故が収束することを念頭に置いてのお話です。それを前提にすればヨウ素131の影響は「期間限定」。「今」を注意することで被害を最小限にできます。問題はセシウム137です。土壌汚染や食物などによる内部被ばくをずっと意識しなければなりません。

2011-03-21 19:33:09
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

子供や乳児についてのご質問が多数あります。その他のご質問もいくつか頂いております。明日以降、過去の教訓を下に予測し得る範囲で出来る限りお答えしていきたいと思います。

2011-03-21 19:33:18