俳優×一般人の現パロヨンピタ

あなたは50分以内に9RTされたら、俳優と一般人の設定で同居して暮らし始めたヨンピタの、漫画または小説を書きます。 https://t.co/BWIa1TU0Bu
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イカミ @phony68

思考と、言っちゃだめだ、と思う心がちぐはぐで苦しくなる。……ああ、そうだ。あの家ではずっと、弱みを隠して過ごしてきた。「息子」が欲しいだけの血縁上の父親と、他人でしかない義理の母。見当違いに罵倒してくる愛人たちと、不平を訴えてくるその子供たち。守ってくれる者は存在せず、

2017-08-27 23:13:11
イカミ @phony68

頼れる者も無く、どんなときも余裕ぶってふてぶてしく笑って来た。でないと何を言われるか。ピーターがしっかりしていないと、母が、馬鹿にされるから。「っ、でも!ほんとに、ほんと…ちょっとだから。休ませてもらったし、このくらいなら全然、」続けようとした言葉は今度こそ、強制的に止められた。

2017-08-27 23:30:49
イカミ @phony68

口を覆うように顔ごと掴まれて、ぶふ、と間抜けな音が漏れる。驚いて目を白黒させていると、上から、腹の底から吐き出したような溜息が落ちた。手のひらがそっと離れていく。「……腹は」「ぇ、っと……」「食欲はあるかって聞いてんだ」お腹は、空いてる。まだ体調は良くないけど、飯は、食べれる。

2017-08-27 23:49:26
イカミ @phony68

でもそれを口にしていいのか、口にするべきなのか、ピーターには分からなかった。男はピーターの側に立って、またじっとピーターを見つめている。答えを求められている。けど。でも。――――。二人の間の沈黙を割くように、電子音が走り抜けた。繰り返されるコールからして、恐らく、携帯。

2017-08-28 00:05:39
イカミ @phony68

ピーターは居場所がバレるのを危惧して家に置いてきたから、鳴っているのは男のものだ。聞こえているだろうに、男はしばらく無視していたが、それが六度目を数えた辺りで舌打ちして、ソファの方へ戻っていった。少し離れて電話の主と会話している。そのうち、ピーターのいる部屋から出て行って

2017-08-28 00:12:37
イカミ @phony68

ドアを開ける音が聞こえた。出ていくのかと思ったら、足音を増やして帰って来る。ピーターが見つめている出入り口から、男が部屋に入ってきて、その後ろに線の細い、ピーターと年齢の程近い男が続いた。その男とばちりと目が合って、ピーターは咄嗟にベッドを降りようとした。

2017-08-28 01:04:07
イカミ @phony68

多分、反射のようなものだった。ベッドを借りて、看病までさせてしまって、今更取り繕っても意味がない男以外の人間に対する、身に染みついた強がりが出てしまった。けれどまだ本調子でない体はその動きに付いていけず、ぐっ、と傾けた上半身はいとも簡単にバランスを崩す。――あ、落ちる。

2017-08-28 09:22:38
イカミ @phony68

そう思った時には、ずだんっ!と逆に小気味いいくらい、派手な音が鳴った。頭から落ちたピーターの体はベッドの端でうまいこと一回転をして、背中を強く打ち付けた。「……ッ、たぁ…!」体の中を通り抜けた衝撃が、熱で痛む間接に響く。きぃん、と電流が走り抜けて行ったようだった。

2017-08-28 10:46:05
イカミ @phony68

「おい!」男の焦った声がする。ガサガサと紙の擦れる音がして、次いで視界に男と、もう一人の顔が入ってきた。「怪我は」「だいじょうぶ…」「頭は、」「うってないよ」ちょっとベッドから落ちただけなのだから、そんなに心配そうに見ないでほしい。二人がかりで体を起こされて、嬉しいような

2017-08-28 10:55:32
イカミ @phony68

恥ずかしいような。慣れない暖かさに返事がぽそぽそと拗ねた口調になってしまった。男はピーターをベッドに座らせると、頭に手を当てたり、顔を上げさせたりと怪我の確認を始めた。大丈夫、と言ったのに、ピーターのそれには余程信用が無いらしい。一通り顔周りの確認を終えた手のひらが背中に回ろうと

2017-08-28 11:07:58
イカミ @phony68

したところで、ピーターは思わず、大丈夫だって!と声を上げた。流石に、子供でもないのに服をまくり上げられるのは勘弁してほしい。「本当だな?」不信も露わに男が尋ねる。「うん、もう痛くないよ。…ありがと」照れを抑えてピーターが礼を言えば、男は一つ息を吐いて、ピーターの髪をぐしゃぐしゃと

2017-08-28 14:31:11
イカミ @phony68

かき回した。さりげなく頭の後ろを気にする手付きに、何とも言えない衝動が沸き上がる。だから、汗かいてるし、きたないってば。さっきからずっと引かない顔の熱を自覚しながら、ピーターは口の中でもごもごと何度目かになる注意を繰り返した。「それくらいにしといてやってくださいよ」

2017-08-29 09:15:50
イカミ @phony68

顔を真っ赤にしながら、それでも逃げるに逃げられないピーターを見兼ねたのか、テーブルで何かをしていた青年が呆れた顔で男に声をかけた。ああ、と男が頷いて、手のひらが離れていく。ピーターはようやく、詰めていた息を吐きだした。思っていたより溜息っぽくなってしまって、ぱっと口に手を当てる。

2017-08-30 11:16:53
イカミ @phony68

そろそろと視線を上げると、近くに来ていた青年が同情するように苦笑していた。「悪いな、この人過保護だからさ」「…過保護、」「そうそう」だから早いとこ諦めてくれ、と。そう言われて男に視線を移すと、男は不本意そうに顔をしかめていた。鼻の辺りに皺を寄せたその顔は、ギャングもかくやと

2017-08-30 11:29:56
イカミ @phony68

ばかりの凶悪さだ。「まーた人相悪くなってる」青年に指摘されて、男は顔を手で覆って表情を揉み解す。手のひらの隙間から小さな声で、うるせぇ、と言葉が漏れてきて、ピーターは少し笑ってしまった。「なぁ、」ピーターの空気が緩んだことを見て取って、青年が話しかけてきた。

2017-08-30 13:54:51
イカミ @phony68

「腹減ってるだろ。飯持ってきたから食おうぜ」青年が指した方を見ると、さっきまで何も無かったテーブルにテイクアウト用の容器が中身と共に並んでいた。サンドイッチやカロリーのありそうな肉料理の他に、多分、ピーター用だろうスープがある。そういえば、電話が来るまで男とそういう話をしていた

2017-08-30 14:19:42
イカミ @phony68

のだった。けれど、そこに自分の分まで用意されていることが不思議だった。ピーターは、男の質問には答えていなかったのに。「遠慮すんな」戸惑うピーターに、男が言う。「俺の朝飯のついでだ。食えンなら付き合え」「ああ…うん。じゃあ」「よし。食ったら風呂だ。そんで熱が下がるまで寝てろ」

2017-08-30 14:46:47
イカミ @phony68

「え、…ッはぁ!?」当たり前のように続けられて、反応が遅れた。「いっ、いやもう十分だって!寝床借りて飯までもらってんのに」「うるせぇ。知らん。それにテメェが言ったんだろうが。“世話させてやる”ってな」「それは、」言った。記憶はおぼろげだが、“ピーター”の台詞を真似て確かに言った。

2017-08-30 15:04:03
イカミ @phony68

けどそんなもの、誰が本気にすると思うんだ!言い募ろうとするピーターをスルーして、男は皿を取ってくる、とキッチンの方に行ってしまった。先にソファに座っていた青年が、ピーターに憐れむような顔を向けてくる。その顔にはだから言っただろ、と書いてあるように見える。「…あれ、本気なの」

2017-08-30 15:21:37
イカミ @phony68

「ああ、本気だぞ」びっくりするよな、と青年はテーブルに手を伸ばしてつまみ食いを始めている。ソースの掛かった一口大に切られた肉が、ピーターの空きっ腹を刺激した。「こっち来いよ。うまいぞ」「うん…」ピーターはなんだか脱力して、おいしそうな匂いに釣られるままにテーブルへと移動した。

2017-08-30 15:35:41
イカミ @phony68

差し出された容器から、青年を真似て肉をつまむ。「そういえば、名前教えてなかったよな。俺はクラグリン・オブフォンテリ」お前は?と尋ねられてピーターは迷ってファーストネームだけで答えた。青年――クラグリンは、予想していたのか何も言わずによろしくな、と言葉を返す。「…うん、よろしく」

2017-08-30 15:53:32
イカミ @phony68

事情を聞かれない安心と、気にかけてもらっているバツの悪さを感じながら、ピーターは男の名前を聞いてなかったことを思い出した。……ただまあ、置いてくれるようだし、後でも、いいかもしれない。空腹にせかされて食べた肉は、甘じょっぱいソースが絡んでいておいしかった。

2017-08-30 16:07:44
イカミ @phony68

自己紹介回というメモを盛大にぶっちぎっていったのでどうにかクラグリンの自己紹介をねじ込んだ編、終わり。

2017-08-30 16:09:09