俳優×一般人の現パロヨンピタ

あなたは50分以内に9RTされたら、俳優と一般人の設定で同居して暮らし始めたヨンピタの、漫画または小説を書きます。 https://t.co/BWIa1TU0Bu
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イカミ @phony68

あなたは50分以内に9RTされたら、俳優と一般人の設定で同居して暮らし始めたヨンピタの、漫画または小説を書きます。 shindanmaker.com/293935

2017-08-23 23:01:13
イカミ @phony68

原作通り病死した母親と、母親を孕ませるだけ孕ませて愛人扱いのまま死なせてピーターを引き取った父親と、ピーターが小さい頃見ていた子供向けの番組で宇宙海賊ラヴェジャーズのキャプテンを演じていたヨンドゥの話かな。

2017-08-23 23:34:09
イカミ @phony68

青い肌をした宇宙人は、父を知らないピーターにとっていちばん「父親」に近いものだった。それが作られた、役を割り振られたキャラクターで、役者は肌は青くないし現実はそううまく行くことも無いと分かっているけれど、自分と同じ名前をした主人公を不器用に愛する宇宙人は、ピーターの理想だった。

2017-08-24 00:30:19
イカミ @phony68

世間からして褒められないことに手を染めながら、心はどこか子供っぽくて純粋。そんな宇宙人が、人の良いところを見ていると豪語する、父親ごっこをしたいだけの男と比べて幼いピーターには眩しく写った。名前も同じ、肌の色も髪の色も、運がいいことに瞳の色だって同じ主人公を呼ぶ胴間声が好きで、

2017-08-24 00:36:18
イカミ @phony68

録画した番組を繰り返し、繰り返し、母が諦めて苦笑するまで眺めていた。

2017-08-24 00:37:37
イカミ @phony68

こんな感じのピーター少年がメレディス亡くなってからエゴに引き取られて実子として育てられるんだけど、上流階級の暮らしは合わないし、子供の出来なかったエゴの妻とは折り合い悪いし、同じく子供を持ちながら子供を認知してもらえなかった他の愛人からは詰られるしで疲れ果てて、ある日テレビで

2017-08-24 00:42:16
イカミ @phony68

流れていた古い子供番組を見て、大好きだった声にピーター、って呼ばれて。衝動的に街へ飛び出す。赤いジャケットに青いシャツ、メレディスが大事にしていた時代遅れのウォークマンを腰に下げて、そうまるで宇宙に飛び出した“ピーター”のように、自由を求めて身一つで飛び出した。

2017-08-24 00:48:20
イカミ @phony68

どこに行きたかった訳じゃない、ただ、どこかに行きたかった。目的すらない旅の期限は、持ち出した金が尽きるまで。宇宙に比べれば猫の額より小さな街で、ピーターはつかの間の自由に浸ろうとした。

2017-08-24 12:04:21
イカミ @phony68

けれどそんな無計画の家出が長く続く筈も無く数日街を彷徨い歩けばポケットの中には小銭しか残ってはいなかった。水で腹を膨らませてもじりじりと数を減らすコインにピーターは限界を悟る。――帰りたくない。空腹で意識は薄らぼんやりとして、なんとなく、母の病室で嗅いだ香りが漂っている気もする。

2017-08-24 12:58:46
イカミ @phony68

それでもピーターの頭にあるのは、帰りたくない、という意志だった。帰る場所は無い、と心のどこかで分かっていたのかもしれない。宇宙よりは狭くとも、あの家よりは何倍も広いこの街にすら、ピーターの居場所は無かったのだ。

2017-08-24 13:08:42
イカミ @phony68

それを悟った時、ピーターは残った小銭を使って安いアイスクリームを買った。トッピングなしのベーシックなバニラ。空いた腹にはなんの足しにもならなかったけれど、懐かしさを感じる柔らかな甘さは心の隙間を埋めてくれるような感じがした。そういえば、あの主人公もアイスが好きだったなぁ。

2017-08-24 13:18:21
イカミ @phony68

主人公のコスチュームの真似をして、好物のアイスを食べて、母のウォークマンで古い音楽を聴く。ウォークマンに入った電池は家出していの一番に買ったものだ。それももう切れかけている。かつて自分が宇宙飛行士よりもなりたかった子供番組の主人公の虚像を被って、ピーターはその時を待った。

2017-08-24 13:29:13
イカミ @phony68

「おい」声がした。ぷつりと途切れた曲の続きを引き継ぐようなその声に、ピーターは顔を上げる。道端に座り込んだ自分を見下ろすように、男が立っている。「こんなところで寝るんじゃねぇ。風邪ひくぞ」低くて、暖かい声だった。口調は威圧的なのに、手を差し伸べるような優しさがあった。

2017-08-24 15:16:15
イカミ @phony68

そんなやさしい声を、母が死んでからピーターは聞いたことがなかった。じわりと熱を持つまぶたを、目を伏せることで誤魔化す。なんだか、この声を聞けただけでもう十分ではないかとピーターは思ってしまった。「…声、かけてくれてありがと。でも大丈夫だよ」上手くなるばかりの作り笑いでそう言った。

2017-08-24 19:25:56
イカミ @phony68

男はそんなピーターに顔をしかめて、目線を合わせるように膝を折った。「大丈夫には見えねぇな」丸いサングラス越しに、心配の色が伺える。声色の通り、人が良い。触るぞ、と前置きして、男の手が首元に添えられた。かさついた皮膚が薄く浮いた汗を拭う。昨日から顔を洗っただけだったことを思い出して

2017-08-24 20:02:56
イカミ @phony68

きたないよ、と呟いてみたが聞こえていただろうか。「……熱いな」男が言った。暑いね、とピーターも返す。「熱がある。気付いてねぇのか」「……ねつ…?」そうか、体がぽかぽかしているのは熱があったからか。ずっと歩き通しで夜は道端に蹲って凌いでいたから、そりゃぁ体調も悪くなるはずだ。

2017-08-24 21:55:33
イカミ @phony68

「熱かぁ…」ぼんやりと答えるピーターに男は苦虫を噛み潰したような顔をした。あ゙ぁ゙、とダミ声混じりの溜息を吐いて、頭をがりがり掻きむしる。苛々しているのに、サングラスの向こうの視線の暖かさはちっとも減らない。ピーターは嬉しくなって笑った。「アンタ、ヨンドゥみたい」

2017-08-24 22:47:46
イカミ @phony68

ピーターが知る、最上級の褒め言葉だった。久し振りに口にした名前に、意図せずへにゃへにゃと相好を崩す。だからピーターは、男が息を呑んだことに気付かなかった。「――――“俺のモンになるなら、世話してやっても良いぞ”」何度も聞いた、言葉が。何度も聞いた声音で、降ってきた。

2017-08-24 23:01:27
イカミ @phony68

ピーターは泣きそうな気持ちになった。まるで、本当に“ヨンドゥ”が来てくれたみたいだった。いい夢だ。本当に、十分過ぎるくらい。「“仕方ないから、世話されてあげるよ”」ずっと言ってみたかった主人公の台詞を、ピーターは口にする。“ヨンドゥ”と、「父親」と、こんな会話をしてみたかった。

2017-08-24 23:36:22
イカミ @phony68

「“口の減らねぇガキだ”」ハッ、と鼻で笑う声は続かなかったけれど、太くがっしりとした腕で抱え上げられて、広い背中に乗せられた。レザージャケットの、つるつるとした感触が頬に貼り付く。「よごれるよ……」「良いんだよ」背中が揺れる。時折ずり落ちそうになるピーターを背負い直しながら、

2017-08-24 23:46:33
イカミ @phony68

男はゆっくりと、通りを歩き出した。どこに行くのかは分からない。誘拐、されてしまうのかもしれない。けど、それでもいいかなとピーターは思った。捨て鉢だったことは否定しない。でも男はピーターを必要としてくれたのだ。ここにいても良いのだと、初めて言ってくれたのだ。

2017-08-24 23:50:05
イカミ @phony68

ピーター家出して誘拐されるの巻、というヨンピタの出会い編終わり。

2017-08-24 23:50:53
イカミ @phony68

ここからヨンドゥ(芸名が中の人)が昔親を演じた“ピーター”とそっくりのピーターを見つけてなんだか放っておけなくて拾って世話する感じの話になる。名前を聞いたら「ピーター」で、偽名だと思うんだけどなんだか存在がふわふわしてるから消えてしまいそうでそれ以上の身元を尋ねないヨンドゥ。

2017-08-24 23:56:58
イカミ @phony68

街灯に照らされる夜の通りを抜けて、ヨンドゥは自分の家に帰る。背中の病人をベッドに寝かせ、その足で下の階の、友人が営むバーに顔を出した。「なんだ、寝酒か?」カウンターの向こうでグラスを洗う店主――タルクが、ドアベルに反応して顔を上げた。「いや、解熱剤あるか」片眉が怪訝そうに上がる。

2017-08-25 11:44:00
イカミ @phony68

「随分しっかりした病人だな」「俺じゃねぇよ」そう返したところで、ああ、と納得の色が浮かぶ。「また”拾って”きたのか」「まあな」投げて寄越された薬のケースを軽く振って残量を確かめる。風邪、というよりは疲労から来た発熱のようだったから、ゆっくり寝かせてやればそう薬も必要ないだろう。

2017-08-25 13:07:13