#20 「妖の大砲撃②」＜フォビドゥンフォレスト５話「選ばれし者、選ぶべき者」 ＞

フォビドゥンフォレスト＠カクヨム投稿中 @fbd_forest

『それに関しては、ガイアさんに行って貰います』 「なるほどな。あの姉ちゃんなら飛べるか」 「ああ、それに火力もあるしな。適任だろうぜ」 紹子が告げた撃破の算段に雷牙達は頷く。ならば後は敵の位置を割り出すまで、その後はガイアが敵を倒してくれるまで砦を守るだけだ。 22

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『五発目が来ました！』 笹田達の報告を麻衣が中継する。 「くそっ！」 既に、迎撃用の強力な火器や破片を防ぐ盾を持った二十名弱が砦へと向かっている。他のメンバーは安地で待機するしかない。剣や銃如きを持って出たところで、「的」の面積が増えるだけだ。 23

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雷牙は毒づいた仲間の肩を叩き、声を抑えて囁く。 「ま、俺達はせいぜい『あっち』に備えとこうや」 「……そうだな。苛ついてても仕方ねぇや」 居間の天井にあるモニターに映像が映し出される。山小屋の屋上や北の櫓のカメラからの映像だ。 24

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五発目の岩を笹田が精密狙撃用ライフルで居抜き、周防が対物ライフルで砕く。落ちる破片を白瀬と時雨が更に細かく砕き、重徳と義子は他の面子を宙に張った魔力シールドで破片から守る。林から出た笹田隊は東西に分かれて除雪車の上に乗り、通信で連携しながら四、五発目の岩を破壊していた。 25

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「また来ます！」 義子が叫び、五発目よりやや西を指差した。彼女は聴覚強化に優れている。笹田もほぼ同時にそれを見た。森の影から二つの岩が同時に飛び出した。 「やべっ！？」 重徳が目を見開いた。 「片方は俺がやる。残りを頼む」 笹田は除雪車の上からワイヤーガンを放つ。 26

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「岩が砕けたら、全力で回避をお願いします！恐らく破片にまで手は回り切らない！」 笹田は二十メートル先の手近な木へと飛び移りながら、二台の車の運転手に無線で告げた。西側の車から飛んだ笹田は着地を終えると全く同時に、西側の岩へ射撃を放った。周防達も一瞬遅れて東の岩を狙う。 27

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二つの岩が砕け、破片が森と雪原の境に降り注ぐ。五発目までより小さめの岩だったこともあってか除雪車の回避行動は最小で済んだ。一同はすぐに体制を立て直す。 「えっ？」 両手を耳の後ろに当てていた義子が、ぎょっとした様子で空を見る。 「何だどうした？」 「…いっぱい来ます！！」 28

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空に五つの岩が現れた。 「んだと！？」 大きさは今しがた迎撃した六・七発目と同程度だ。 「二つは俺達でやる。残りは後ろで頼む！」 太い枝の上で一人身体を寝かせる笹田は無線で告げた。迷いのない口調だった。言うが早いか、岩のうち二つに立て続けに発砲する。 29

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「私達の担当は二つ…ですよね？」 西の車の上で、時雨が微かに怪訝な表情を浮かべる。 「残り三つは後ろで頼む、ってことじゃないかな。ほら」 白瀬が指差す先では笹田が三発目を放っていた。一発目を当てた岩に当たる。 「あちらを笹田さんが受け持つ。そういうことですね」 30

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東の車の上の周防が無線越しに応える。 「僕たちはもう一個の方をやりましょう。行きます！」 周防の掛け声で義子が両手で耳を塞ぎ、重徳は右手その背を抑え、左手で屋根を掴む。対物ライフルの反動で、除雪車が大きく揺れた。 31

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笹田隊が二つを砕く間に、三つの岩が雪原へと飛んでいく。一軒家ほどあった五発目までの大岩よりは小さいものの、いずれも自動車以上のサイズはある。砦の基部や資材に命中させれば一溜まりもない。砦護衛班の八名と、合流しつつある応援部隊は身構えた。 32

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「せりゃああっ！」 笹田達の頭上遥か上を飛び越したところで、岩の一つが二つに割れた。光る回転ノコギリ状の刃が遥か天空へと飛んでいく。 「うおおおっ！！」 地表二十メートルまで落ちてきた岩が、真横からの衝撃で無人の雪上へと落ちる。三つ目は集中砲火で砕け、同様に雪上に散った。 33

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「皆、ガイアを送り込むまでこの場を死守するぞ！」 岩を叩き伏せた涼平が、鉄球付きの鎖を軽く振り回して、雪上に落とす。 「砦は大事ですが、まずは自分の安全を最終戦でお願いします」 佐祐里は武器のレコードを火力型に交換する。 34

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「近接戦担当の方は、念の為周囲の警戒をお願いしますね」 佐祐里は年長者でもある桐葉と幸川に告げる。確かにこの局面で二人に出来るのはそれくらいだろう。 「分かってる」 「何があるか分からないからね」 桐葉達と佐祐里達の四人は目配せし合い、頷いた。 35

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フォビドゥンフォレスト５話「選ばれし者、選ぶべき者」 #20 「妖の大砲撃②」終わり #21 「巨岩迎撃戦」に続く