北海道における木彫り熊について
「新しい工芸品」ってそういうものでしょう。木彫り熊だって例外ではないんです。作家のアートとしての1モチーフであれば別だけど、工芸品として存在する以上、ものすごく生々しいものなんですよ。
2017-09-03 17:10:44いわゆる「木彫り熊」は、旭川系のものだし、それにはアイヌ的な要素が多く含まれている。アイヌ的に生まれた形式のものだし、現在でもアイヌ民族の作家がいる。だからといっていわゆるアイヌ伝統文化でもない。そこをすっとばしたら「ペイント熊」ぐらいしかできないと私は思います。
2017-09-03 17:18:50だから私はペイント熊を評価するんです。歴史に背を向ける宣言としてのペイント熊。それによって「木彫り熊」が逆に強い歴史性(近代の)を帯びていることが示される。人によっては冒涜とも、あるいは傷に塩をすりこむ行為とも感じるでしょう。でも、かつての消費を懐かしむだけよりはずっとましです。
2017-09-03 17:23:17たとえば木彫り熊について、「八雲系と旭川系では木の取り方が違う」というでしょう。八雲のように縦に使うのはアイヌのやり方ではありません。八雲のほうが古いし、そこに着想を得ているのに旭川は「旭川発祥だ」と主張するでしょう。八雲にはアイヌの作家がおそらくいなかった。
2017-09-03 17:26:18「熊の姿を彫る」なんてことは当時のアイヌはやらなかった。いくら売れると分かっていても、納得するまで時間がかかった。そのために必要な手続きが旭川で行われたのです。旭川の形式はアイヌ的に整えられたものです。「旭川発祥だ」と主張するのはそれも大きな理由です。
2017-09-03 17:29:10「木彫り熊」の形式が固まっていてあまり変わらなかったことには、そういう背景もあると私は考えています。芸術作品ではないし、アイヌの伝統工芸でもない。でもアイヌが関わっていて、しかも熊の姿というアイヌ伝統文化において非常にセンシティヴなものです。
2017-09-03 17:32:52木彫熊はどちらが発祥なのかという関係者間での静かな論争は、この数年でかなり整理され落ち着いてきていると思う。あとは叙述の問題なのかもしれない。なぜ発生したのかという部分(そこにも歴史性があるのだが)に目を向けるべき時期だと思っていた。
2017-09-03 17:40:00確かに、八雲に住んでいたときに、熊の木彫りの文脈アイヌ民族の話は聞いたことがないな。徳川さんが農家をかわいがっていたという印象が強かった記憶がある(この辺の感覚は、四民平等に慣れた現代人には理解しづらい)。
2017-09-03 17:41:55そういうわけで、「木彫り熊」の形式は偶然できたものではなく、それなりのいきさつがあってできたものです。だからたんに「過去のもの」あるいは「過去のものだけど、今見たら面白い造形」という扱いは反歴史的な姿勢です。ならば「私の姿勢は反歴史である」と宣言して(叩かれて)みせるべきでしょう
2017-09-03 17:42:20木彫り熊の形式は、それを生んだアイヌにとっては(多くのアイヌはそれを忘れてしまっていると思いますが)いきさつがあって出来た形式です。でも和人にとっては始めからたんなる形式です。だから和人が木彫り熊を題材とするときには、形式そのもののあつかいが違うのです。
2017-09-03 17:46:21現在の作家の新品の「木彫り熊」作品を購入するときにこういったことを考える必要はないと思います。工芸品ですから。作家は歴史性を売っているのではなく、今そこにある作品を今売っているだけです。でも木彫り熊を題材として扱う(展示・二次利用)なら歴史を忘れるべきではないと思います。
2017-09-03 18:01:08和人にとっての木彫り熊は、徳川義親によりスイスから持ち込まれた小作の熊を手本に、柴崎重行のような独自の形態に至った経緯がある。木工作家・阿部吉伸氏の調査と、現在の八雲木彫り熊資料館の八雲系熊についての解説と資料からそれについて学べる。展示に解説がないと皆好き勝手言い続けられる。
2017-09-04 08:48:56数年前に道南アイヌ文化研究会という会ができたそうで、今忘却されかかっていた道南アイヌの歴史ついて私たちも少し触れられるような状況になってきました。だから住んでた時に触れられなかった部分は、なぜ触れられなかったのかも踏まえて補うこともできるようになってきました。
2017-09-04 08:58:00えみさん @emimura のツイートを読んであらためて反省している。自分は柴崎重行のことを知って、その上で資料館の木彫りグマの展示を見ていたのだけど、そういう人はほとんどいないんだよなあ。やはり、もうちょっと親切さがほしいよなあ。
2017-09-04 09:08:10八雲系と旭川系についてきちんと(単に、淡々と)記述できれば、今以上に北海道を代表する工芸未満お土産品以上の産物になるのではないかと私は可能性を感じています。
2017-09-04 09:08:25そこにあれらの立体物の現代性があると思えます。 では、両者を物として並べ飾ることで、両者の独自の歴史を一空間に展覧できる機会とはどういうものか。論文それぞれで記述すると大長編になってしまうことを、多くの人に非常にシンプルに伝えることができる可能性があります。
2017-09-04 09:11:58展覧会とはそういうパワーを持つメディアです。この特性をうまく使った作家さんも今回の芸術祭にはいました。 もうしゃべるのをやめます。すんません。
2017-09-04 09:16:46