@sousakuTL 「げ、魔女…」 目を覚ました男が思わず呟いた。 「お姉様?」 その呟きに、女は背後を振り返る。 そう呼ばれている存在がこの場所にいるという事に驚いて。 「お前だ翠奏の魔女。何でお前が此処にいるんだ」 男は嫌な予感を感じながら、眉間に皺を刻んで嘆息した
2017-09-07 10:27:36@sousakuTL 「冬麗公」 「此処ではしがない薬師だと申し上げた筈ですが」 片膝をついて深く頭を垂れる天蒼に、緑瑜は柔らかく微笑む。その名で呼ぶなという威圧を込めて。 「私の願いは一介の薬師には叶えられぬものです故」 しかし、天蒼は怖気づくこともなく、粛々と言葉を続けた
2017-09-07 10:43:29@sousakuTL バランスを崩して床についた女の手に苦無が突き刺さり、床に縫いとめられた。 「キサ……まさか…」 女の顔が驚愕に引き攣る。 「長からの最後の命だ」 機械的に言葉を紡ぐ、氷のような男。 あぁ、鴉が残っていたのか 女は悟った。この後自分が辿る道を。
2017-09-07 11:46:00@sousakuTL 酒場の主人は、紅音の隣にいる男に目を向けた。 「……彼に、何か、体力のつくようなものを、出してあげて、下さい…」 「いい体してるから良く食いそうだもんな。にーちゃん、何か食いたいものはあるか?」 主人が笑顔で問う。 どうやら紅音の護衛は飲食つきらしい。
2017-09-07 16:06:25@sousakuTL 「ん~、ミルフィアちゃんなら梔子色の色無地とか……紅柑子のはっきりしたのでも似合うかしら……」 黄砂羅がぽつりと漏らす。 「……もしかして、黄砂羅さんは和裁もおできになるのですか?」 「できるにはできるけれど、職人さんみたいなのは作れないわよ?」
2017-09-07 16:37:22@sousakuTL 「ふわふわ~」 黄砂羅は純白で柔らかな尾を持つ小さな竜――ニアを満足げに撫でる。 『ふわふわになった。水気持ちよかった』 ニアも撫でられて気持ち良さそうに目を細め、黄砂羅の手に頭を擦りつけた。 『……』 ふいにムロークが窓から飛び出し、水溜りに飛び込ん
2017-09-07 18:35:05@sousakuTL 「こんにちは。何か特注でも入りましたか?」 訪れたユズユに微笑む。彼女が自ら訪ねて来る用件といえば、自分が制作している薬に関してだろうと。 「いえ、シストちゃんの結婚式の事でご相談したい事がありまして。あ、今大丈夫ですか?」 「大丈夫ですよ。どうぞ」
2017-09-07 20:05:30@sousakuTL 左手の甲に苦無を突き立てられ、柳葉刀が地に吸い込まれる。次の瞬間、黄砂羅の忍刀が右肩を穿つべく突き進んだ。 ――ヌルッ。 突然黄砂羅の足元がぬかるみ、僅かに力が緩む。 天蒼の右手にあるシャムシールが忍刀を内側から外側へ払い、首筋に刃を突き立てられた。
2017-09-07 20:39:16