火砲小話~どうしてソ連にパンター砲みたいな戦車砲は無いの?

パンターは戦車としての出来には色々論があるけれど、でも砲が素晴らしいのは確かです。んでは、これに対する赤軍にはそういう大砲は無かったのナンデというおはなし
赤軍 独軍 戦車 装甲 火砲 軍事 大砲
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えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
パンター824号車。防盾側面に45mm砲徹甲弾を受け照準装置が破損する pic.twitter.com/A9kzKaSmPX
拡大
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
「なんでソ連ってパンター砲みたいな戦車砲採用しなかったの」という話が出てましたが、パンター砲みたいな馬鹿長いのはさておき、50~60口径あたりのそこそこ長めな76mm戦車砲なら幾つか試作したり検討したりしてます。それらが採用されなかった理由は幾つかあるです
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
ひとつには、当時の赤軍は弾薬の融通性を極端に重視する軍隊だったという事情があります。既存の火砲で使っていない新規弾薬や、古くて生産から外れたような弾薬はあまり使いたがらない。そして赤軍は高射砲を76mmから85mmに切り替えてて、76mm高射砲の弾薬生産は39年に終了してるのです

ちょっと訂正

えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
ウェツ 赤軍76mm高射砲は砲本体の生産が1940年1月1日に終了、弾薬生産も1939年中に終わってる……のは確からしいものの、気になって調べ直してみたら独ソ開戦に伴って弾薬だけは生産が再開されてるようです。85mmの1~2割くらいの数ではありますが
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
そんでも76mm高射砲本体はまったく生産されてないので、やっぱりこの砲を広く使うつもりはなさそ。手元に残ってる砲を遊ばせとくのは勿体ないんで、それに使う分だけ細々と76mm高射砲弾薬を生産したって感じかしらね
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
最終的には85mm高射砲弾に対して1/20くらいにまで減ってるので、砲の消耗に伴い弾薬生産も絞られていったようです
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
というより85mmの生産がガンガン伸びてる感じだ
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
76mm高射砲弾薬の生産は、開戦直後の復活大増産を超えれば後は一定してるっぽい。大戦後半にかけて緩やかな減少。前線に押し出して戦車殺しにも使われた85mmと違って76mmは要地防空に留め置かれた感があるので、供給がなくても砲の数はあんまり減らなかったのかしらね
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
いずれにせよ76mm高射砲が去り行く運命だった事は変わらんので、昨日のお話も大筋は大丈夫なはず……

訂正おわり

えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
もうひとつの理由は威力面から。高射砲級76mm戦車砲の開発は1940年半ば辺りから始まるんですが、これは装甲貫通力が同時期に開発された長砲身57mm砲と変わりませんでした。それだったら既に廃止予定な76mm高射砲級なんかより、これから広く使う予定の長57mm級の方を選ぶわけです
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
このあと独ソ開戦のゴタゴタと、さらに独軍戦車が予想した程には強力ではない事が判明したことで、赤軍の大威力戦車砲開発は一旦半ば休止状態になります。次に長76mm戦車砲計画が復活するのは1943年初頭、虎戦車の存在が確認され火力強化の要求が増してからです
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
しかし鹵獲した虎に対して実施された試験では、76mm高射砲は前面装甲を貫徹できませんでした。尤も側面は抜けてるので、側面至近からでさえ抜けない76mm野砲級よりまマシだったのですが……それは57mmでも同様。やっぱり生産から外れた76mm高射砲弾薬を復活させるメリットは無い
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
それでも一応、T-34への85mm砲装備までの中継ぎとして再び76mm高射砲クラスの新戦車砲が開発されます。少なくとも野砲級76mmよりはマシだし、これなら85mmのように砲塔を拡大する必要もなかったからです。しかし85mm砲装備が思いの外早く出来たので、結局必要ありませんでした
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
そもそも赤軍の85mm高射砲は、76mm高射砲の砲架を流用しつつ威力強化できる限界として試算され生まれたものです。なので76mm高射砲級が積める車両なら、ほんのちょっと拡大すれば85mmも行けちゃうわけです。となると、あえて76mmに抑える理由はないのですね
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
質問を変えて「ソ連ってパンター砲並に長い砲は作らなかったの?」という事になると、これは結構作ってます。57mmは73口径ですし、85mmでも64~72口径で幾つか試作しました。でも76mmでは無し。76mm高射砲は消えゆく存在だったので、それをベースに大威力化ってのも無いのですね
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
なので技術的にソ連にパンター砲級のものが出来なかったという訳じゃありません。ただし徹甲弾の造りでは大きく水を開けられてるので、仮に同級のを作ったとしても威力は一回り落ちるでしょうが
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
しかし実際のところ、赤軍は長76mmどころか長85mmさえ採用しませんでした。高射砲級より一回り上の大威力85mm(それこそ独軍の8.8cm L/71に近いやつ)を幾つも作ったのですが、同時期に出来てた100mmや122mmの方が更に強力だったからです
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
実際パンター砲自体はすげえ強力で素敵なんですが、あれは弾道能力もさることながら、それ以上に徹甲弾の出来の良さに支えられてるところが少なくありません。弾の出来が良くないとああいう小口径高初速の方向性はうまく行かないので、徹甲弾の質で劣るソ連は大口径化しか道がないんですね
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
あと結果論気味ですが、パンター砲みたいな小口径高初速+弾の出来の良さで貫通力稼いでる砲は、垂直装甲に対してはびっくりするほど良い成績が出るんですが、大傾斜にはあんまり効きません。実際パンター砲は象の車体前面(!)まで抜いちゃうほど強力なのに、でも自分の車体は抜けないのです
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
パンター砲級は虎殺しにはすごく良いけど、でもパンター自身を殺せない。となると大量のパンターに直面する(と思い込んでいる)赤軍にとってはおいしい砲ではありません。垂直厚板にはそこまで効果的でなくてもいいから、それよりも大傾斜を殺せるのが欲しい。それが100mmと122mmなのです
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
まとめると……ソ連がパンター砲めいた砲を採用しなかったのは、ソ連では特殊な弾薬事情から中口径大威力砲に76mmより85mmが選ばれがちだったこと、そしてあるいは、パンター砲のような方向性がパンター世代以降の戦車の造りに噛み合っていないから、という事になるかしらん?
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
英軍17ポンド砲はパンター砲と似た印象があるかもですが、あれは初速若干割り引きつつ異様な重量弾を使ってるんで、ちょっと方向性違うんですわね
えすだぶ@C97火曜日西2つ13a @FHSWman
あとパンター砲類似の戦車砲ってえと戦後AMX-13のSA50だかが思い浮かびますが(よく言われるようにKwK42直系の祖先とかいう事はなさそ)。あれは従来徹甲弾で軽く高速な方向性を更に積めた感じなので大傾斜に対してはあんまり旨くなさそうなんですが、よくわかりません
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コメント

tama @tamama666 2017年9月10日
王虎やJS3の戦車師団をチハたんで倒すには大隊規模いるのかな
なんもさん @nanmosan 2017年9月10日
パンターの主砲威力が高性能徹甲弾によるものってのはだいたい事実なんですけど、現実は資材不足のせいで前線にはあまりそれが回ってこなくてほとんど弾芯まで鋼鉄製の砲弾使ってたわけで、M4とかT-34相手のときはそれでも大きな問題はなかったんですが、スターリン重戦車が車体埋めて防御にまわったときはお手上げだった記録もありますな。やはり国家総力戦においてはソ連式の既存の大口径砲流用のほうが健全な思想みたいです。
Hoehoe @baisetusai 2017年9月19日
メレツコフ「おかpeople?」
PlatoonLeader @442ndCombatTeam 2018年1月30日
硬化処理+傾斜装甲より、単純な分厚い装甲板の方が場合によっては強いっていう話も聞いたことがあるような(重いからか?)・・・まあ、衝撃荷重の計算は大変だからしょうがない。
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