エピローグ「デュラブル・フォート：オールドワン」

えみゅう提督 @emyuteitoku

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「その後は…ずっと目をつぶっちゃってて、気が付いたら、廃人みたいな顔のソーシャークがへたり込んで、ソルトレイクシティ＝サンはいなくなってた」「その…つまり、ソーシャークは健在なのか？」リンクスがタイプの手を止め、問いかけた。話の中ではソーシャークは沈んでいない。27

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「たぶん、生きてるけど、もう戦えないと思う。だって…あれは――」フューリアスと変わらない。リンクスはアンダーテイカーの言葉をタイプし記録に残す。「やれやれ、とんでもない所に借りができてしまった」［ならば道は疾く示さねばな！］フッドの声がびりびりと船内を揺らした。28

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リンクスはキーボードから手を放し、船内の端に転がっている王剣に向き直る。「どうした急に…」［喜べ、次の行き先は決まった。…おい童！拾え］「黙れフッド。まだ決めたわけではない。皆の意見を聞いてからだ」ライオンハートが王剣を拾い上げ、ボトムレスの前、船内の中央に立つ。29

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「邪魔をしてはいけないと遠慮していたら、話すのが遅れてしまった。次の進路は極東、レムリアの泊地にしようと思っている」「レムリアぁ！？」声が裏返り、リンクスは肺の動きが分かる痩せた体で激しくむせた。「ゲッホ…艦娘の拠点の一つじゃないか。何故、その…アレがいる所に」30

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リンクスのニューロンに忌まわしくも心躍るヒーローメロディーが流れる。「うっ…嫌な記憶が。いや、それはいい。行くにしても、今の私達では戦えないだろう」［愚か者。戦いに行くのではない、戦えぬからこそ話を付けねばならんのだ。【堅牢】を有する勢力である以上、衝突は避けねばならん］31

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フッドの話しは続く。［フューリアスとの戦闘で多くの装備が破壊された。メンポはともかく、各種通信機器、破損した装甲、童の主砲、損害は甚大だ。特にスクトゥムの艤装は生半な技術では復旧できん］「補給と入渠が急務だ、だが知っての通り、私達は寄る辺なくして集まった。基地はない」32

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会話の主導がライオンハートに移る。「故に、極東のレムリアを頼ろうと思う。形はどうあれ、深海棲艦に理解があり、技術も十分。無論、奴の所業を許す気はないが、艦娘と深海棲艦両面に幅を利かせるような奴だ。こちらの腹積もりに関係なく、利益があれば協力してくれるだろう」33

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「利益って…何か出すものなんてあるか？」［我だ！］王剣がびりびりと震えた。「…で、フッドが何を出すと」［だから我だと言っておろう。聞けば江見とやら、深海棲艦の成り立ちに執心しているそうではないか。ならば、オールドワンの一柱を手にする機会は十分な交渉材料となろう］34

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「私は止めたのだが…フッド本人の提案だ。他に案もなくてな」ライオンハートが不満げにこぼす。［どうした童？あれか？我の肢体に他の者の手が触れるのが、気に入らんかぁ？！］「黙れフッド！」恒例となった二人の王のやり取りはさらりと流され、話は先に進む。「気は乗らないが、賛成しよう」35

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リンクスの同意に他二人も続く。「私は約束済ませたけど…コールドレイン達の約束もあるし、反対しないよ。気は乗らないけど」「あー…ほら！アルフォンシーノには前に助けた友達もいるし、皆に会いに行くついでだと思えば！ね！」ボトムレスのフォローで皆の迷いは微かではあるが晴れた。36

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ライオンハートはいつかに悪夢の入江から助け出した友達の顔を思い出す。「そうだな、あの海はひどく厳しい環境だ。会いに行かねばならないな」優しみを称える彼の表情の横に、申し訳なさそうにリンクスの痩せこけた手が上がる。「次の航路とは言うが、元の作戦はどうするんだ？」37

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リンクスがいう元の作戦とは大西洋を訪れた理由、北アメリカ東海岸にある衛星基地の調査だ。「戦力の復興が必要なのは承知しているが、放っておいてよいものかと…」［心配はいらん。しばらくは大きな動きは見せんだろう］フッドがリンクスの疑問に答えた。38

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［スクトゥムの話しによれば、その基地を仕切るのは快気の蛇。メデューサの奴も道化と同じく行動は慎重に行う。フューリアスという最強の守りを失った今、目立つ行動は避けるだろう。安心するがよい、我が保証する］「ナルホド」フッドが言った、それだけなのだがリンクスは納得する。39

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「すでにチェルノボグ達には説明してある。皆の同意は得ている」友達の意見は一つとなった。ならば、次に進む。「――行くぞ、幌筵へ」変幻の道化師を打ち砕いたディープオーダーだが、彼らの航路に安息はない。次に向かうのは永劫不変の砦が聳える入江、魔人の居城。40