ブラインド・ボトムズ #2(再放送)

デビルサマナー葛葉あきつ丸vs触手棲艦 1:https://togetter.com/li/1152214 3:https://togetter.com/li/1153539
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劉度 @arther456

「そういえば、サマナーさんだったねえ……!」自身の一斉射撃を受けて、駆逐水鬼はなおも立ち上がる。その足取りは覚束ない。「左様。葛葉の名において、貴方を討滅するであります」あきつ丸は刀を正眼に構えた。このままトドメを刺すつもりだった。23

2017-09-20 22:09:15
劉度 @arther456

「やーだよ。ボク、まだまだ元気だもん」軽い声。次の瞬間、駆逐水鬼の傷の内側から青白い肉が盛り上がった。腐肉が傷を塞ぎ、焼けた肉が剥がれ新しい肉体に変わる。「ッ!?」おぞましい治癒に、あきつ丸の切っ先が揺れた。あるいは、これは修理と呼ぶべきなのだろうか。24

2017-09-20 22:13:02
劉度 @arther456

「さあさあ、サマナーさん。ボクをぐっちゃぐっちゃにぶっ殺すって言ったよね。言ったよね?震えてないで頑張ろうよ。悪魔を呼び出してもいいし、何なら他の艦娘を呼んできてもいいよ?じゃないと……」駆逐水鬼の砲が、蔵王を向いた。「優月ちゃんが死んじゃうよ?」25

2017-09-20 22:15:09
劉度 @arther456

砲声が轟く。あきつ丸はオレンジ色の爆発を見て、息を呑んだ。駆逐水鬼の背を襲ったものだった。「ぎゃあっ!?」背中を焦がしながら駆逐水鬼が振り向く。そこにいた艦娘に、あきつ丸も駆逐水鬼も目を疑った。「え、あれ、何で……?」先ほど倒れたはずの古鷹が、砲を構えていた。26

2017-09-20 22:18:04
劉度 @arther456

「なんで動けんの!?」驚きながら、駆逐水鬼が砲撃する。古鷹はそれを避けると、水鬼に向かって駆けだした。背中の艤装から翼状のバーニアが展開、彼女の体を加速させる!「えっ!?」驚く駆逐水鬼の胴体を、古鷹の右腕が切り裂いた。右手の艤装から、湾曲する刃が伸びていた。27

2017-09-20 22:21:11
劉度 @arther456

大きく切り裂かれた駆逐水鬼の腹から腐肉が盛り上がり、傷を塞ごうとする。そこに古鷹の刃が突き刺さる。すると、水鬼の艤装の腕が古鷹をがっしりと掴んだ。「捕まえ――ッ!?」言葉はしかし、白熱する電撃にかき消される。古鷹の艤装が電撃を放ち、駆逐水鬼を灼いた。28

2017-09-20 22:24:06
劉度 @arther456

「古鷹殿……?」味方の優勢に、しかしあきつ丸は全く喜べなかった。羅刹の如く敵を屠る姿は、彼女が知る古鷹とは似ても似つかない。《まずい……!》提督が呟く。その口振りは、何かを知っているようだった。「提督殿?これは一体……」《あきつ丸、そこから20m後退!》29

2017-09-20 22:27:02
劉度 @arther456

「え?」思わず古鷹を見た。右腕で電撃を放ちながら、左手の副砲があきつ丸を狙っていた。こちらに向けられる古鷹の義眼の色は、普段の金ではなく不吉な赤。「ッ!?」咄嗟にあきつ丸は身を反らせる。頬のすぐ横を、鋼鉄の矢が掠めていった。「なんとっ!?」30

2017-09-20 22:30:16
劉度 @arther456

あきつ丸は素早く後退。結界を張り、戦いを再び注視する。「アガッ、バッ、ウアアーッ!?」電撃に痙攣しながらも、駆逐水鬼は触手を引き出し、古鷹を突き刺す。だが、喉や胴を貫かれても、古鷹の体はびくともしない。真っ当なモノじゃない。あきつ丸も駆逐水鬼も、同じ結論に達した。31

2017-09-20 22:33:07
劉度 @arther456

「ア、レク、セェェェイ!」駆逐水鬼が、ありったけの大声で叫んだ。何もできるはずがない、そう思ったあきつ丸は正しかった。何かするのは、彼女たちの足元に潜んでいたもう一人の敵だった。あきつ丸の、そして古鷹の足元の水面が、何の前触れもなく大きく盛り上がった。32

2017-09-20 22:36:06
劉度 @arther456

「何っ!?」驚くあきつ丸の前で、海面が鉄の地面にすり替わった。しかしそれはあきつ丸の錯覚である。実際には全長200m近い巨大な鉄の塊が、彼女たちの足元から迫り上がってきたのだ。遠くにいる提督だけが、巨大なそれを判別することが出来た。《潜水艦……!?》33

2017-09-20 22:39:02
劉度 @arther456

蔵王よりも巨大な潜水艦。それだけでも驚くべきことだが、提督は別のことに驚いていた。《レーダー、ソナー、どうなってんの!?》通信機の向こうで、提督が叫ぶ。「何事でありますか、提督殿!」《あきつ丸!その目の前の潜水艦、ソナーどころがレーダーにも映ってない!》「んなっ!?」34

2017-09-20 22:42:04
劉度 @arther456

驚愕するあきつ丸とは対照的に、古鷹はなおも駆逐水鬼を攻撃する。その横合いから、猛烈な火線が古鷹に襲いかかる!「ッ!?」魔力障壁を激しく叩く衝撃に、流石の古鷹も一瞬怯む。「ガアッ!」その隙を突いて駆逐水鬼は脱出、潜水艦の甲板を走って古鷹から逃げる。35

2017-09-20 22:46:03
劉度 @arther456

古鷹は追おうとするが、撃たれ続ける銃撃に足を止めてしまう。攻撃は潜水艦の船尾からだった。黒いフード付きコートを着込んだ大柄な影が、潜水艦のハッチから上半身を乗り出し、ガトリングガンを撃ち続けていた。駆逐水鬼は彼の後ろに走りこみ、ハッチに半身を滑りこませた。36

2017-09-20 22:48:01
劉度 @arther456

「うぐえ……体がビクビクしてる……残念、今日は諦めるよ」自分の体を掻き抱く駆逐水鬼。その顔に先程までの余裕はない。「ッ!待てっ!」我に返ったあきつ丸が、刀を構えて駆逐水鬼へ駆け出す。得体のしれない相手を逃せば、厄介極まりない。「じゃあね、また会いに来るから!」 37

2017-09-20 22:52:02
劉度 @arther456

あきつ丸は全力で駆けたが、しかしハッチが遠すぎた。刃が届く前に、鋼鉄の蓋が閉じられる。確かな使い手であれば戦艦すら切り裂く霊刀・赤口葛葉だが、あきつ丸の剣技は未だそこに至れていない。潜水艦が潜航を始める。「ぬうっ……カ号、対潜攻撃を……」《あきつ丸、それより古鷹だ!》38

2017-09-20 22:54:07
劉度 @arther456

言われて古鷹に目を向ければ、彼女は沈む潜水艦の甲板上で倒れていた。水の上に浮く気配はない。魔力を、あるいは体力を消耗しきっている。あきつ丸は駆け寄り、古鷹の体を抱え上げた。「提督殿。古鷹殿を確保いたしました!」《了解!すぐに戻ってきて!手当ての準備はできてる!》39

2017-09-20 22:57:04
劉度 @arther456

潜水艦は完全に沈んだ。追おうにもソナーが反応しない。このまま、夜の海の中を逃げていくのだろう。逃したくはなかったが、今はそれよりも古鷹のほうが大事だ。あきつ丸の腕の中の古鷹には、先程までの鬼神の如き戦いぶりは陰も形も残っていない。ただ疲れきった顔で眠っている。40

2017-09-20 23:00:09
劉度 @arther456

「……提督殿」《うん?》「今回の古鷹殿の豹変、後で話をしっかり聞かせていただきます」《……うん。それよりも、今は不知火だ。後で説明するから、お願い》提督の返事は力ない。何かを知っている。それも、提督にも古鷹にもどうしようもない何かを。そんな声色だった。41

2017-09-20 23:03:09
劉度 @arther456

【ブラインド・ボトムズ】#2おわり#3に続く

2017-09-20 23:04:12