ブラインド・ボトムズ #2(再放送)

デビルサマナー葛葉あきつ丸vs触手棲艦 1:https://togetter.com/li/1152214 3:https://togetter.com/li/1153539
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劉度 @arther456

【ブラインド・ボトムズ】#2

2017-09-20 21:01:29
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2017-09-20 21:02:06
劉度 @arther456

空に僅かに残っていた紅色が消える。日没だ。「不知火たちと合流できるまで、あと何分!?」「20分です!落ち着いて下さい、提督!」「……ごめん」指揮艦・蔵王は全速力で東へ進んでいた。先行した不知火たちが、敵の奇襲を受けているからだ。1

2017-09-20 21:03:17
劉度 @arther456

ドラム缶しか積んでいない矢矧たちとは違い、不知火の部隊はある程度装備を整えている。だが、新型の深海棲艦と棲姫を相手にするには力不足なはずだ。故に提督は急いでいた。蔵王と護衛の艦娘たちが合流すれば、不知火たちを助けられる。2

2017-09-20 21:06:05
劉度 @arther456

だが、トップが焦るというのは組織にとって致命傷だ。提督はそれを、特に自分がトップであるということを忘れていた。「ッ!?海中から魔力反応!?」「何ッ!?距離は!」「1時方向の2000m!」「目の前じゃない!?索敵は何してたの!?ええい、護衛部隊、戦闘態勢に移って!」3

2017-09-20 21:09:17
劉度 @arther456

蔵王が慌てて戦闘態勢に入る中、それは海の中から飛び上がるように姿を表した。黒い鎧を身に纏った、土気色の肌の少女だった。背負う艤装は黒い腕を象っている。彼女の体の中には、直視すれば思わず目を背けてしまいたくなる、禍々しいオーラが宿っていた。4

2017-09-20 21:12:03
劉度 @arther456

『アロー、アロー!』突然、提督の頭の中に声が響き渡った。「づう……っ!?」大きすぎる音と精神波が、提督に頭痛を引き起こす。『横須賀33地区の皆さん……あれっ、周波数が違う』呼びかけていた声が、頭の中からプツリと消えた。《アロー、アロー!》同じ声が艦内のスピーカーから流れた。5

2017-09-20 21:15:18
劉度 @arther456

《改めまして、横須賀33地区の皆さん、こんばんは!駆逐水鬼です!》新手の深海棲艦はそう名乗った。《輸送作戦、ご苦労様!色々頑張ってたみたいだけど、いい加減鬱陶しいから、ここで指揮艦を沈めちゃうね!》「……しまった!?」相手は提督を直接狙いに来たようだ。6

2017-09-20 21:18:02
劉度 @arther456

「まずは魚雷のご挨拶から!」駆逐水鬼が魚雷を放った。遠距離から放たれたにも関わらず、正確に蔵王の横腹を狙っている。「回頭!右に30!」「了解!」進路を変え、同時に機銃を作動。避けきれない分の魚雷をなんとか迎撃する。その間に護衛部隊が反撃を始めた。7

2017-09-20 21:21:11
劉度 @arther456

「提督は、やらせません!」古鷹が三号砲を斉射!駆逐水鬼は艤装から伸びた外装腕でやすやすと防ぐ。今度は駆逐水鬼が砲撃!「きゃっ!?」大きな水柱に古鷹が怯む。口径の割に、爆風が強い!駆逐水鬼が肉薄、古鷹の頭上に巨大な外装腕を振り下ろす!8

2017-09-20 21:24:07
劉度 @arther456

「ひゃっはぁ!」「くっ!」古鷹は右腕を覆う巨大艤装でこれを防御。金属同士がぶつかり合う、けたたましい音が海上に響く。駆逐水鬼は着水、古鷹の足に水面蹴りを放つ。足首を蹴られた古鷹だが、艤装の重みが転倒を防いだ。足を踏ん張り、眼前の駆逐水鬼に拳を振り下ろす!9

2017-09-20 21:27:02
劉度 @arther456

「えいっ!」「あいたあっ!」ヘルメット越しに殴られた水鬼は、たまらず後ろに引き下がった。「駆逐艦じゃ重巡にはパワー負けしちゃうかあ……いてて」頭をさすりながら、駆逐水鬼は立ち上がる。その様子に不穏なものを覚えた古鷹は、咄嗟に防御姿勢を取った。10

2017-09-20 21:30:16
劉度 @arther456

「って訳で、搦手でGO!」駆逐水鬼の右腕、外装腕ではない生身の腕がほどけた。紐のようにバラバラに解けた右腕は、無数の肉の鞭となり古鷹に殺到!古鷹の体が打ち据えられる。幸い、威力はそれほどでもなく、太ももや二の腕に血が滲む程度で済んだ。11

2017-09-20 21:33:07
劉度 @arther456

「これなら……っ!」戦える。そう思いながら古鷹は再び砲を構えた時、駆逐水鬼はそこにいなかった。「――え?」振り返ると、いつの間にか相手は自分の横をすり抜け、蔵王に向かっていた。追おうとするが、体が言うことを聞かない。訳が分からないまま、古鷹は海上に倒れ伏した。12

2017-09-20 21:36:11
劉度 @arther456

《古鷹!?どうしたの、古鷹!》「提督殿、落ち着いていただきたい」そう呼びかけたのは、陸軍の艦娘、あきつ丸だった。《でも古鷹が!》「恐らくあれは麻痺毒です。生命反応は落ち着いております。この場は、自分にお任せを」あきつ丸は洋上で、愛刀・赤口葛葉を抜いた。13

2017-09-20 21:39:22
劉度 @arther456

《いや、無茶だよ!重巡がやられてんだよ!?》「確かに、深海棲艦が相手ならその通りでしょうな」提督の言う通り、艦娘の枠組みで語るなら、あきつ丸は古鷹よりもずっと弱い。だが、あきつ丸の考えは違っていた。「ですが、あれは深海棲艦ではありません」《なん……だと……!?》14

2017-09-20 21:42:05
劉度 @arther456

あきつ丸は、駆逐水鬼と名乗った怪物の言動を冷静に観察していた。聞かれもしないのに名乗った名前は、日本海軍が深海棲艦に対して一方的につけるコードネームだ。深海棲艦自身が名乗ることなどあり得ない。あの怪物は、深海棲艦を騙っている。15

2017-09-20 21:45:04
劉度 @arther456

それに、駆逐水鬼が肉の槍を放った時に感じた異様な気配。デビルサマナー葛葉あきつ丸が普段相手にしている、妖怪や悪魔といった妖と同じだった。ならばここは自分の出番だ。懐に忍ばせた道具の重みを確認し、あきつ丸は駆逐水姫の前に躍り出た。16

2017-09-20 21:48:02
劉度 @arther456

「おっと……?」詰襟姿の艦娘に、駆逐水鬼は足を止めた。「えっとぉ、陸軍の艦娘さん?」「日本陸軍所属、あきつ丸であります」油断なく刀を構え、あきつ丸は名乗る。「海軍じゃないのか……。ええと」少し考える素振りをしてから、駆逐水鬼は言った。「ま、いっか。やっちゃえ!」17

2017-09-20 21:51:03
劉度 @arther456

駆逐水鬼が主砲を放つ。あきつ丸はこれを避け、敵に肉薄する。水柱を突き抜け、首めがけ刀を一閃!「ひゃっ」駆逐水鬼が飛び退き、切っ先は肌をかすめるに留まった。「危ない危ない。ボクだって、首をはねられちゃあオシマイだからね」戯言には付き合わず、あきつ丸は刀を振るう。18

2017-09-20 21:54:07
劉度 @arther456

振り下ろし、薙ぎ払い、袈裟懸けに斬り付けると見せかけ刃を突き出す。駆逐水鬼は間合いを保ちつつ、それらを避ける。動きに論理がある。本能任せに戦う深海棲艦とは違う、訓練された人間の身のこなしだ。「隙ありっ!」駆逐水鬼の艤装が刀を掴み、あきつ丸ごと空中に投げ飛ばす!19

2017-09-20 21:57:05
劉度 @arther456

空中に放り投げられたあきつ丸に、駆逐水鬼は砲を向け、更に両腕を解いて毒の肉槍に変えた。「ゴール目前だからね!一斉射撃で、一気に決めるよ!」砲声が響き、無数の触手があきつ丸に殺到する。空中にいるあきつ丸は避けることができない。全弾、無情に命中した。20

2017-09-20 22:01:10
劉度 @arther456

「うぐえっ!?」だが、潰れた蛙のような叫び声を上げて吹き飛ばされたのは、あきつ丸ではなく駆逐水鬼だった。「アガッ……な、何?」体のあちこちが一瞬で穿たれ、焼け焦げている。駆逐水鬼はあきつ丸を睨みつけた。彼女の体に傷はなく、代わりに紫色の燐光がまとわりついている。21

2017-09-20 22:03:11
劉度 @arther456

あきつ丸の手には、小さな鏡があった。「……それ、なあに?」駆逐水鬼は鏡から放たれるギザギザした魔力を感じ取っていた。「物反鏡。物理的な脅威を相手に跳ね返す護符の一種であります」鏡が砕け散る。一度しか使えない絶対的な守護結界。あきつ丸の切り札の一つだった。22

2017-09-20 22:06:07