村上信五×紫(ゆかり)1

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えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[1] 彼は、最近とても忙しそうで、会える時間がだんだん短くなっている。 覚悟はしてたつもりだったけど、やっぱり顔だけでも見たくて、疲れて帰ってくる彼に笑顔で「お帰りなさい」って言いたくて、今日も彼の部屋で帰りを待つ。

2013-10-12 16:05:37
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[2] 「おい」 ふと体を揺すられて目を開けると、彼が難しい顔してこっちを見ていた。 「あ、お帰り…」 「こんなとこで寝たら風邪引くって、いつも言うとるやろ。疲れてるなら、無理して来るな。しかもこんな時間に」 「でも…」 「でも、やない。ほら、送ったるから準備せぇ」

2013-10-12 16:12:26
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[3] 怒ってる? 呆れてる? 私が会いに来るのは迷惑? 聞きたいけど、聞きたくない言葉が返ってくるのが嫌で、ただ見つめ返す。 「何しと…おま、なに泣いとんねん」 「…っ、…」 一度溢れ出した涙が止まらない。 こんなん困らせるだけ、って分かってるのに…止められない…

2013-10-12 16:20:17
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[4] 泣き止まない私を車に乗せ、家に向かう途中、静かに彼が話し出す。 「…別れよか、俺たち」 何? 今、何て? どういう意味? 「こんな生活続けてたら、お前そのうち体壊すで。無理して俺に会いに来て、睡眠時間どんどん削って。お前の仕事だって、忙しいんやろ。」

2013-10-12 16:30:53
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[5] 「無理したって、長続きせえへん。必ず、おかしなる。お前が、今の状況が耐えられへんなら、終わりにした方が…」 「もういいよ!」 気付いたら叫んでいた。 「無理なんかしてない。どんなに短い時間でも、信ちゃんに会えたら頑張れる。顔を見て、声を聞いて、笑ってくれたら…」

2013-10-12 16:37:46
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[6] それ以上何も言えないままに、車は私の家の前に着いた。 「あんな…」 「信ちゃん、別れたいなら別れてもいいよ。私が会いたいと思ってるほど、信ちゃんは思ってないんやろ。私が好きって思ってるほど、信ちゃんは」 「おい…」 「さよなら」 ドアを開けて中に入ると、崩れ落ちる。

2013-10-12 16:48:23
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[7] 彼が追いかけて来るかと待っていたけど、しばらくして聞こえてくるエンジン音。 ああ、本当に終わっちゃったんだな…と思ったら笑えてきた。 泣きながら、クスクスと笑う。 あんなに好きだったのに。 側にいられるだけでシアワセだったのに。 壊れてしまった…

2013-10-12 16:52:29
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[8] 月日は流れる。何をしていても、何もしていなくても。 あの日の事を何度も思い出し涙を流しても、他に何か道があったんじゃないかと悔やんでいても。 皮肉な事に、体調はすこぶるいいけど、味気ない日々を過ごす毎日。 誘われて参加した飲み会で、一人の男性に声をかけられた。

2013-10-12 17:04:54
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[9] 優しくて笑顔の素敵な人だった。 どんなわがままも包んでくれそうな人だった。 この人といたら、幸せにしてくれるのかもしれない。 そう思ったけど、やっぱり駄目だった。 彼の不器用な優しさも、笑顔も、最後に見た悲しそうな顔も、忘れられなかった。 今でも、愛してる。

2013-10-12 17:10:55
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[10] そんな事を思ってる自分に呆れながら帰ってくると、玄関の前に佇む影。 私に気付くとこっちに歩いてくる。 はじめは分からなかった姿が少しずつはっきりしてくるにつれて、心臓が暴れ始める。 もう二度と会えないと、会うことのないと、それでも忘れられない彼が近づいてくる…

2013-10-12 17:17:06
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[11] 「あいつは誰?」 「え…」 「付き合ってるん? もう俺のことは、どうでもいい?」 「あの…」 「答えて。もう、俺はいらんの? ここに来たら迷惑やった?」 「信ちゃん…」 「もう、俺のとこは、好きやない?」 何がなんだか分からなくて、頭の中が整理できなくて…

2013-10-12 17:28:19
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[12] 「好き…大好き…」 意識しないままにこぼれる言葉。 次の瞬間、私は彼に包まれていた。 「家に帰るとな、アレってなんねん」 あの日と反対に車に乗せられ、彼の部屋に向かいながら、あの日のように静かに話し始める。

2013-10-12 17:57:47
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[13] 「お前がおらんだけで、部屋が淋しいねん。いつまでも慣れへん。俺が別れよ、て言うたのに、来るはずがないのに、つい探してしまう」 「…」 「おまえん家に行ったこともある。家の明かりを見て、妙に安心して。そんで、やっとお前の言うたことが分かった気がした」

2013-10-12 18:13:58
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[14] 部屋に入ると、彼が再び私を抱きしめる。 「今日、他の男といるお前見て、どうにかなりそうやった。もう俺のもんじゃない、って思うたら目の前が真っ暗になった」 絞り出すように苦しそうに言って、私を抱きしめる手に力がこもる。 「取り戻さんと、って思うたんや」

2013-10-12 18:23:18
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[15] 「勝手なこと言ってる。別れるって言ったり、取り戻すって言ったり…」 「勝手なこと言ってるのは、十分承知や。けど…」 「でも、好き。信ちゃんが、私でいいって言ってくれるんなら、この腕に何度でも戻ってくる」 「お前…」 「好きなの。どんなに素敵な人がいたって信ちゃんがいい」

2013-10-12 18:31:45
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

[16] 急に体を返されて、激しく口付けられる。 何度も繰り返されるキスに何も考えられなくなる。 夢かもしれない。 また、目が覚めて悲しい現実に涙するのかもしれない。 彼の温もりを感じながら、そんな事を考えてしまう自分がいて。 でも、幸せだった…

2013-10-12 18:42:56