ストライダー：サーチ・アンド・デストロイ ＃２

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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ニンジャスレイヤー短編集「テイルズ・オブ・ジ・エイトミリオン・ニンジャソウルズ」より：【ストライダー：サーチ・アンド・デストロイ】#2

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（あらすじ：美しい夕焼けが珍しくネオサイタマの空に染みた翌日。浮浪者のジンドウは他殺体で発見された。加害者は不明。チャメシ・インシデント殺人事件は闇に葬られるだろうか？否。ジンドウに可愛がられていた犬「タロウイチ」は、ある決断を胸に行動を開始したのである）

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（タロウイチはナイトクラブ「光一」の前に佇み、夜を明かした。話しかけるネオサイタマ市民は絶えなかった。だがやがて彼らも去り、朝が訪れ……ナイトクラブから出てきた一人の無軌道大学生の後を、タロウイチは、追う！）

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「えー……あ、見て、ワンチャン」「ワンチャン？」「ほら、あれ」コバジは彼女の視線を追い、闇に光る二つの目を認めた。コバジは息を飲んだ。その敵意と怒りに打たれた。「ワンチャンってお前……」「GRRRRR！」闇の中から犬が飛び出し、コバジに襲いかかった。「ウワーッ！「GRRRRRR！」 1

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「アイエエエエ！」女子大学生はコバジを振り払い、逃げ出した。犬はコバジに専ら襲いかかった。スタジアム・ジャンパーが裂け、背中が裂けて血が流れた。コバジは路地裏へ逃れた。犬は一足飛びに追いかけ、再び襲いかかった。「GRRRRR！」「グワーッ！」 2

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コバジは地面に倒され、怒り狂った犬の目を見上げた。殺される……彼はそう思った。何故、犬に？殺される？「GRRRRR！」「グワーッ！」タロウイチがコバジに食らいついた。痛みで意識が真っ白に飛び、ソーマト・リコール現象が起こった。瞬間的に呼び起こされたのは、ほんの数日前の記憶だった。　3

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あまりにもカジュアルな行いだった為、何の引っかかりも持たなかった記憶だ。無軌道大学生のコバジは友人二人と連れ立って遊び歩き、夜のタマ・リバー河川敷で立ち小便をした。その折、すぐそばにいた浮浪者を発見。取り囲んで殴る蹴るの暴行を加えた。　4

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相手が意識を失い、痙攣を始めるまで、執拗に暴力をふるった。「まさか？あのジジイ、アバーッ！」タタリ？あの浮浪者は死んだのか？そしてそのイービル・スピリットが、オバケとなってコバジに……「GRRRRR！」「ゴメンナサイ！マジゴメンナサイ！」血と泥にまみれ、コバジは失禁し、泣き喚いた。5

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「殺さないで！」「GRRRRRR！」「自首……ホントです！マジで、自首しますから！」「GRRRRRR！」「今からマッポに出頭しますから！」 「ウーッ……」犬はコバジを解放した。しかし去らなかった。犬は数歩離れた地点で、傷ついたコバジをじっと見据えている。　6

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コバジは犬の眼差しに確固たる知性と怒りを感じ取り、再失禁した。「ほッ……本当です……今から出頭するからァ……」「……」コバジは震えながら起き上がり、足を引きずって路地を歩いた。犬はその5メートル後ろをぴったりと付いてくるのだった。　7

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数分後、最寄りのマッポボックスの赤いチョウチンにコバジは駆け込んだ。「助けてください！ヤバイんです！オバケだからァ！」「何だね君は」「助けて……許してェ」コバジはマッポにすがりつく。犬は物陰からじっと見ている。じっと見ているのだ！　8

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「僕を逮捕してください！殺したんです……僕、殺したんです！でも、殺すつもりはなかったんです！アイエエエエエ！」　9

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「ハァ！？コバジ＝サンが自首した？ナンデ！？」携帯IRC端末に向かって、タチガラは大声をあげた。「犬……オバケ？ハァ！？とにかくそっち向かうわ」タチガラは上着を着込み、玄関口へ向かった。　11

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「ワッケわかんね……アイエエエエエ！？」ドアを開けると、そこには怒りに燃える目をした犬がいた。後ずさるタチガラに、犬が襲いかかった。「GRRRRR！」「アイエエエエエエエ！」まるで狼のようなシバ種の犬だった。タチガラはボックス・カラテの有段者であったが、その心得は役に立たなかった。12

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神秘的な獣はタチガラにのしかかり、食らいついた。「やめッ……グワーッ！　グワーッ！」「GRRRRRR！」「グワーッ！」「GRRRRRRRR！」「グワーッ！……グワーッ！アイエエエエエエエ……！」　13

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匂いでわかる！タロウイチは……またの名をストライダーは、少しの逡巡もなく、一直線に、遠く離れた地点の「敵」をめがけて走った。一宿一飯の恩人であるジンドウをむごたらしく殺めた三人の、最後の一人を。　15

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犬の視力は元来低い。だがニンジャドッグである彼の視力は人間並みであった。その視界に、匂いの痕跡が人型の青いシルエットめいたイメージで焼きつき、彼を導く。煙をあげる屋台街のテント群を飛び越え、広場にごった返す人々の足元をノーブレーキですり抜ける。　16

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スクランブル交差点を行き交うクルマを飛び石めいて渡り、用水路の水面をアメンボめいて撥ね渡り、ビルの壁から壁へトライアングル・リープを繰り返し、ハイウェイのガードレール上を駆け抜け、垂直に飛び降り……グラフィティ・アートにまみれたコンクリート高架下に辿り着いた。　17

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「……」ストライダーは歯を剥き出し、眉根を寄せた。妙である。匂いの主は……頭上の高架に括りつけられたワイヤーに縛り付けられ、逆さに吊るされていた。充血した目を見開き、ストライダーを見た。……BLAM！「ギャン！」ストライダーは横殴りの衝撃を受けて倒れ込んだ。　18

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壁に描かれた「ワンパクストリート」の太字ショドー・グラフィティが歪み、バチバチと音を立てながら、それまで不可視だった者が出現した。ニンジャだった。　19

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表面に神秘的な般若心経を書き連ねたステルス外套を羽織ったニンジャがその手に構えているのは、たった今ストライダーを銃撃した武器……銃身に神秘的な般若心経をレリーフした、銀の二連拳銃だった。「現れたな」ニンジャは目を細めてほくそ笑んだ。「恐るべき邪霊……退治てくれようぞ！」20

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