ニンジャスレイヤー:ネヴァーダイズ 【4:ザ・コードブレイカー】

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第3部最終章「ニンジャスレイヤー:ネヴァーダイズ」より

2016-06-24 14:44:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

群衆の中から看護師が名乗り出た。シノブとスモトリに対し、慰霊碑前で応急手当が行われた。「大丈夫か?病院に運ばなくても!?」サラリマンが問う。「何とかなる。出血は大したことない」看護師は止血布を巻き終えながら、ようやく気づいた。「……病院に運んだら、俺たちも捕まるんじゃないのか?」

2016-06-24 14:49:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そんなバカな話が」サラリマンは額の汗を拭いながら、ガレキ山の下を見た。そこでは囲んで棒で叩かれたハイデッカーらが気絶し、ピクリとも動かない。息つく間もなく、誰かが叫んだ。「増援だ!ハイデッカーが来るぞ!」慰霊碑前をさらなる熱が包みこんだ。いまや百名を超す市民がそこに集っていた。

2016-06-24 14:56:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

群衆の外縁部にいたのは、叛乱の熱に引き寄せられた者たち、あるいはただシノブらの安否を気遣い、その場を去ることができぬ通行人らであった。彼らは密集し盾となり、システムの接近を阻んだ。「「「直ちにテロリスト逮捕に協力せよ、市民!」」」十名近いハイデッカーが、サイバー拡声機で威圧した。

2016-06-24 15:02:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

テロリスト。ハイデッカーを襲った者は当然、叛乱分子である。だがその境目はどこだ。ごく短い睨み合い。その場にいた市民のサイバーサングラス視界に、厳戒態勢IRCチャネルを通し『奥ゆかしく』『直ちに解散しよう』などの警告と鎮静音楽が流れる。薄気味悪さを感じた者が次々にIRCを切断した。

2016-06-24 15:13:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いい加減にしろよ!俺たち、ちゃんと見てたんだよ!」現場を取り巻いていた誰かが、堪えきれず、叫んだ。徐々に、双方で怒号が飛び始めた。熱は熱を呼んでいった。慰霊碑前で、また別の叫びが上がった。誰かが、足元に広がるハイデッカーの血に気づいたのだ。「おい、何だこれ……血が緑色だぞ!?」

2016-06-24 15:23:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺がやる」逞しいメキシコ人の清掃員が、恐れもせず、慰霊碑前に倒れるハイデッカー達の装備を剥ぎ取り、あらため始めた。周囲の者達は口元を押さえ、口々に叫んだ。隠蔽され続けていた国家的規模の陰謀が、暴かれた。「製造番号だ!」「何だこいつら…全員同じ顔…」「「「クローンなのか!?」」」

2016-06-24 15:32:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムアミダブツ!一般市民はヨロシサン製薬によってクローン兵器が商品化されている事を知らぬ!無論、社会の隅々を見渡せば、これまでに何人も、ハイデッカーの欺瞞に気づき、声を上げようとした者は存在したであろう。だが彼らは皆、システムによって握り潰され、誰も知らぬ間に存在を消されたのだ!

2016-06-24 15:42:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一瞬、シシオドシが鳴ったかのように、慰霊碑前広場が静まり返った。

2016-06-24 15:47:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブン、ブン、ブン。「アイエッ?」「壊れた?」「アイエエエ!何も見えない!」慰霊碑前で未だIRC接続を維持していた市民のサイバーサングラスが、一斉にシャットダウンを始めた。外部から、強制的に。見えない誰かが、自分たちをコントロールしていたのだ。

2016-06-24 15:56:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

群衆の外縁部で、自分はまだ安全圏にいると思い、ハイデッカーを通さぬ盾となっていたサラリマンたちが、電源OFF状態で何も見えなくなったサイバーサングラスを反射的に取り外した。横の者もそうだった。他にも。何人も。気づいた時には、もう遅かった。その場の全員が、一線を踏み越えていたのだ。

2016-06-24 16:01:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「「スッゾコラー、市民!全員を騒乱罪で逮捕する!」」」システムが銃を構えた。かくのごとき理不尽が、今まで何度も、当然の如く罷り通り、叛乱を鎮圧してきたのだ。だが今日。オールド・オーボンの日、慰霊碑前に集うただならぬ怒りのアトモスフィアと熱量は、堪えきれぬ分子運動の如く、弾けた!

2016-06-24 16:17:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

誰かが叫び殴りかかった。BLAMN!最初の銃声が鳴った。未だ血は流されなかった。カチグミ・サラリマンの繰り出したタックルが真正面から鮮やかに決まり、ハイデッカーを宙に浮かしたからだ。斜め上方に発射された散弾が碑に傷をつけた。次の銃声が鳴った。血が流され、ケオスが慰霊碑前を圧した!

2016-06-24 16:27:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「ウオオーッ!」」BLAMBLAMBLAM!叫び押し寄せる人々、その先陣は焼けた銃弾を受けて血を流しながら倒れる。それでも一人、また一人とハイデッカーが呑まれていく。怒号、歓声、悲鳴。しかし鎮圧部隊の動きは極めて迅速であった。「あれを!」慰霊碑に登った市民が怖気ながら指差した。

2016-06-24 16:37:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギュララララ……恐ろしい駆動音とともに広場へ突入してきたのは完全武装の装甲車両である。暴虐の鋼鉄が市民数名を轢き倒しながら停止。ルーフ部にスタンバイしていたUAV機が二機、ローターを回転させて浮上する。ハイタカだ。それらはもはや警告すら発せず。空中で静止し、機銃を展開する。

2016-06-24 16:40:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BRATATATATATATA!TATATATATATA!「アバーッ!」「グワーッ!」無慈悲な機銃掃射でなぎ倒されていく市民!誰かがハイデッカーのショットガンを手に取る。『認証エラー。ハイデッカー装備の使用は違法行為ドスエ』「エッ……」BRATATATA!「グワーッ!」

2016-06-24 16:42:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「クソーッ!」投石がハイタカのすぐ横を飛び過ぎ、隣接ビルの窓ガラスにヒビを入れる。「逃げろ!」「行け!」「フザケルナ!」ガラス瓶がハイタカに接触し、バランスを崩させる。歓声が上がった。BRATATATA!マズル光。怒号は収まらない。市民は攻撃を逃れ、周辺ブロックへ拡散を開始した。

2016-06-24 16:46:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

鎮圧部隊を逃れる市民の濁流は、様子を見に表通りへ出た人々を呑み込み、通りから通りへ支流を拡げていく。悲鳴、罵声、怒号。隣接区域へ飛び出そうとした彼らは横並びの装甲車輌と銃を構えた隊員に息を呑む。車輌の陰から巨大な長虫が身をもたげ、怪異な駆動音を鳴らす。「ズカカカ!ブザブザブザ!」

2016-06-24 16:50:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ハイデッカー愛好家ならば、その長虫の正式名称は当然知っている。シデムシだ。ショウケースに並ぶ勇ましい鋼の装甲、ハイデッカーのパレードで楽しげに装飾されてユニークに動きまわっていた平和の守護者が、今、市民に対し無表情な複数のカメラアイの焦点をあわせ、顎を鳴らすのだ。「アイエエエ!」

2016-06-24 16:53:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

鎌首をもたげたシデムシは顎の左右にミニガンの砲身を展開、警告無しに掃射を開始した。BRRRTTTT!「アイエエエ!」「アイエエエ!」「アバーッ!」ナムアミダブツ!BRRRTTT!BRR「イヤーッ!」KRAASH!黒い影がシデムシの頭部に飛び乗り、また飛んだ。シデムシが倒れ込んだ。

2016-06-24 16:56:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

何人かがたまたまその一瞬を網膜に焼き付けていた。沈黙のコンマ5秒を。シデムシの頭部AIにカタナを垂直に突き刺し、再び飛んだ女の姿をしっかりと見ていた者はいない。それにはニンジャ動体視力が必要だ……。「ウ……ウオオーッ!」後ろから追いついた者達の怒号が、沈黙を上塗りした。

2016-06-24 17:00:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「イヤーッ!」シデムシ破壊者はネオン看板からネオン看板へ飛び、隣接ビルの屋上に着地。カタナの脳漿を拭い去った。「気持ち悪」女は顔をしかめた。女のジャケットの背には逆さ向きの「婆」の漢字がある。「一体こりゃ、何だってンだい」レッドハッグは道路を見下ろす。市民が封鎖に押し寄せる。

2016-06-24 17:04:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ザッケンナコラー市民!」「スッゾ市民!」BRATATATATA!ハイデッカーが銃撃を行う!「ザッケンナコラー!」「バカハドッチダー!」市民が押し寄せる!倒れこむ人々の背に、肩によじのぼり、ハイデッカーに覆いかぶさり、殴りつけ、その上に更に市民が押し寄せ、装甲車によじのぼる!

2016-06-24 17:05:39
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