ニンジャスレイヤー:ネヴァーダイズ 【4:ザ・コードブレイカー】

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こいつは……」斜めに降る雪の中、レッドハッグは眉根を寄せ、タバコを噛んだ。封鎖を越えて拡がってゆく市民達。アトモスフィアを彼女は肌で感じていた。頭上には黄金の立方体が輝いている。シュイイイ……ハイタカが高高度へ上昇し、彼女を照準に捉える。彼女は舌打ちし、隣のビルへ跳んだ。

2016-06-24 17:09:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「ああ、そうさ、今日も残業だ」百十七階。高層オフィスビルの回廊。バリキドリンクを飲みながら、疲弊したサラリマンが窓際に立つ。「寒波?心配だから早く帰ってこい?……そんなふざけた理由で、休めるわけないだろ。なあ、いい加減現実見ろよ。オーボン?そんなもの、知るか。これが世の……」

2016-06-24 17:12:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼はドリンク剤を取り落とし、声を失った。「おい、今……!何だ、今の……!」彼は己の目を疑い、サイバーサングラスを外して捨てた。降りしきる重金属酸性雪を切り裂いたのは、火花、銃弾。そして透明の防弾ガラス窓に突き刺さった。鋼鉄の星。スリケン。その鋭いシルエットが、網膜に焼きついた。

2016-06-24 17:14:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サラリマンはガラス窓に張り付き、目を凝らした。反射したガラス面には、自分自身の姿。その先には、ネオサイタマのふざけた現実が広がっていた。

2016-06-24 17:18:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……『ヨー、人々、解るか、俺たちが今いる所、どこだ、ブッダ、おい』……

2016-06-24 17:19:10
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ここは。ここは百十七階。防弾ガラス窓の向こうには、カタナを握った女ニンジャが二本煙草を吹かし、顔をしかめ、破れたジャケットの袖と傷を見ていた。直後、彼女はガラス窓の僅かな足場を蹴って走り、加速し、カンバンを飛び渡り、宙返りを打ちながら、危険なほど鮮やかにスリケンを投げ放った。

2016-06-24 17:21:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

暴徒鎮圧ドローン、ハイタカ3機が冷たく明滅しながら彼女を追跡し……目にも留まらぬカタナ斬撃で返り討ちにあい、爆ぜた!『グワーッ!』火花散らす無数のパーツと、破壊されたクローン脳髄の緑色の血が、防弾ガラス窓にぶちまけられた。サラリマンは茫然とそれを見ていた。そして足元に目を転じた。

2016-06-24 17:26:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

遥か下。雪に染まるマルノウチ大通りでは、いつの間にか、市民とハイデッカーの衝突が発生していた。ニュースの知らせぬ騒乱が。アマクダリの洗脳サイバーサングラスをかけ、柔らかな鎮静プログラムに浸り続ける市民には、決して見えず、決して聞こえぬ戦争が。生き残りをかけた戦いが、始まっていた。

2016-06-24 17:28:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ザリザリザリ……再び、このサラリマンのサイバーサングラスに違法電波が混入した。音楽。ノイズまみれのゲリラ放送電波が、周波数をハイジャックする!『ヨー、人々、これはKMCレディオ……!』……

2016-06-24 17:29:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おい、何だ、これ、急に…!」サラリマンは困惑し、周囲を見た。長く真っ白なオフィス回廊の先には、自分と同じくバリキドリンク小休止を取っていたと思しき、一人のサラリマンがいた。その男も自分と同じ、サイバーサングラスをかけ、眼下の光景を凝視していた。サイバーサングラスで、顔は見えぬ。

2016-06-24 17:36:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

なぜなら、彼は敵と同じ武器を用いて、顔を隠す必要があったからだ。彼はキツネの如く狡猾に、辛抱強く、この時を待ち続けていた、小さく無力な群れの一匹であったからだ。……『DJゼン・ストーム、ヒナヤ・イケル・タニグチ、そしてDJニスイ、デリヴァラーが送る……革命レディオ!』……

2016-06-24 17:47:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ス、スミマセン、あなたも今、おかしなものを見ましたよね!?違法レディオが聞こえますよね!?私だけじゃないですよね!?」サラリマンは不安げに、その男へと歩み寄った。その男のサイバーサングラスこそが、この狭域無線ウィルスの発生源であると知らずに。

2016-06-24 17:57:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ずっと見てたし、聞こえてたよ」その男はサラリマンのほうを振り向き、キツネ・サインを高く掲げた。「エッ!?」ほぼ同時に、サラリマンのサイバーサングラス視界が完全にハックされ、真っ白な廊下やビル壁面、全てに、KMCレディオとメガヘルツ解放戦線の巨大なバナーが投影され、音楽が流れた。

2016-06-24 18:03:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

極めて危険な行為であった。だがもはや潜伏する時ではない。今がその時だ。穴倉から飛び出すべき時だ。彼はそう考え、自ら退路を絶った。彼は無線通信を続けた。KMCレディオに、今、マルノウチで何が起こっているのかを伝え続けるために。そして自らも慰霊碑前へと向かうために。回廊を走り始めた。

2016-06-24 18:09:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ずっと見てたし、聞こえてたよ」その男はサラリマンのほうを振り向き、キツネ・サインを高く掲げた。「エッ!?」ほぼ同時に、サラリマンのサイバーサングラス視界が完全にハックされ、真っ白な廊下やビル壁面、全てに、KMCレディオとメガヘルツ解放戦線の巨大なバナーが投影され、音楽が流れた。

2016-06-26 15:15:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

極めて危険な行為であった。だがもはや潜伏する時ではない。今がその時だ。穴倉から飛び出すべき時だ。彼はそう考え、自ら退路を絶った。彼は無線通信を続けた。KMCレディオに、今、マルノウチで何が起こっているのかを伝え続けるために。そして自らも慰霊碑前へと向かうために。回廊を走り始めた。

2016-06-26 15:15:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KMCリスナーのサラリマンはビル内を駆け、違法レディオ電波受信プログラムを周囲にバラ撒きながら、レポートを続ける!慰霊碑前は、叛乱の着火点と化した!応答せよ、KMCレディオ!応答せよ、メガヘルツ解放戦線!応答せよ、応答せよ、人々!人々!人々の心に火がついた!ようやく、火がついた!

2016-06-26 15:19:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

電波に乗り、荒々しいイントロが響く。数々の地下アーティストの手でリミックスを重ねられた曲、レイズザフラッグが、電波に乗って再び流れ始める!何度でも蘇る!『ヨー、チェック、チェックワンツー。シケた顔した人々、顔あげて見てみろよ。周囲をチェック、チェック、オウ、ファック、何だこりゃ』

2016-06-26 15:25:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「「アイエエエ違法電波!?」」」受信した人々が困惑する!『ヨー、人々!これはKMCレディオ!ヴァーサス!暗黒メガコーポが人々をナメくさって、奴隷にして、八百長で勝とうとしてるクソみてえな世界!都合の悪いクローン兵器や洗脳電波やニンジャのことは、綺麗さっぱり漂白されちまう世界!』

2016-06-26 15:28:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

禁じられた音楽と言葉が電波を揺らす。オフィスビルで働く人々は困惑し、即座にそのレディオをシャットアウトせんとした。だが、幾人かの者は手を止めた。そこに乗る声が、今、確かに、スゴイタカイビルと言ったからだ!今、慰霊碑前で起こっている事実を告げている!どのチャンネルでも報じぬ事実を!

2016-06-26 15:36:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『ヨー、人々、無茶すんな!その場所でいい!今そのサイバーサングラスにゃ、どんな銃弾より強力な武器が備わってる!』レディオが語りかける。『出力あげて音声認識、ファック・オフだ!周りの人々にこの放送を届けてやってくれ。ボリューム10の電波で叫び続けろ!死ぬんじゃねえぞ!生き残るぞ!』

2016-06-26 15:44:45
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