ニンジャスレイヤー:ネヴァーダイズ 【4:ザ・コードブレイカー】

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

電波が発せられ始めた!それは、百十七階からキツネ・サインを掲げた男のサイバーサングラスだけではなかった。音楽を頼りに希望を繋ぎ、耐え偲び、潜伏を続けてきたKMCレディオのリスナー達が、ネオサイタマ各所で同時行動を起こしたのだ。目に見えぬ無数のフラッグが掲げられ始めた。反抗の旗が!

2016-06-26 15:49:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

グルーヴィなラップと、機械兵器めいた正確無比なリフ。本来全く相反する要素が混ざり合い、曲は加速する!そして声が!『…俺のレディオ!届いてくれ!タノシイ・ストリートへ!テモダマ・ストリートへ!コモチャン・ストリートへ!』既に地図から消えた場所へも、今なお呼びかけられる、息子の声が!

2016-06-26 15:57:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

まだ少ない。だがただならぬ熱気にやられ、手を止める者が少なからずいた。その多くは、スゴイタカイビル周辺で勤務中のサラリマンだった。カチグミですら、皆、不安と恐怖を抱えていた。なぜ恐怖する?それは、知らぬからだ。情報が足りぬからだ。人々は貪欲に求めた。今起こっていることの真実を。

2016-06-26 16:00:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オウ、ファック、なんだこりゃ」慰霊碑前。タダマキとスバルがカメラを抱えて到着した時には、既に多くの者の血が流されていた。「なんだこりゃ、放送できるわけがねえ」タダマキはゴクリと唾を飲み、震えた。何という場に居合わせてしまったのかと。手がガクガクと震えた。「NSTVじゃ流せねえ」

2016-06-26 16:05:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人は、NSTVの下請け番組制作会社からさらにマルナゲされたカメラマンとアシスタントであった。彼らは鎮静ワイドショー番組のために、凍りかけたタマ・リバーの中でも健気にがんばるラッコチャンについてコメントを寄せてもらうため、マルノウチ周辺を歩く人々に取材を行っていたところであった。

2016-06-26 16:10:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして取材を終え、バリキドリンクを飲み、死んだマグロじみた目で次の現場へ向かおうとした時……二人はこの騒ぎを聞きつけ、衝動的にカメラを構え、走り出したのだ!「おい!取材させてくれ!俺たちは報道特派員だ!」「これは一体何だ!?あんたらは革命組織か何かか?!」「違う!」「全然違う!」

2016-06-26 16:16:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「タダマキ=サン!ヤバイですよ!絶対ヤバイですよ!俺のサイバーグラスから、ここの全員、真っ赤ですよ!パブリックエネミー警告です!接触ヤバイですよ!」スバルが失禁しながら続く!「うるせえ!レポート続けろ!」タダマキはカメラを振り回す。放送できるはずもない記録を、ただ記録するために。

2016-06-26 16:25:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何がきっかけだ!?」「ハイデッカーが銃を!」「無差別射撃か!?」「違う、発端は慰霊碑だ!慰霊碑前で俺たちは」「慰霊碑!?」「オーボンだ!」「オーボン!?」「キュウリが踏みにじられた!」誰かが必死で叫ぶ。カメラが上下左右へ飛び、飛び、捉えた。本来この場に存在しないはずの慰霊碑を!

2016-06-26 16:32:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タダマキの手が震えた。「おい、なんだこりゃ!朝には無かったぞ!?」破壊されたシデムシ。ガレキ。コンクリート片。血。それらの上にそびえる黒い碑。周囲には、形容しがたい熱が、未だ渦巻いていた。その前で、傷ついた女性が祈りを捧げている。一人ではない。祈りを捧げる人数は徐々に増えていた。

2016-06-26 16:36:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オイ、あんたらTVか!頼むぜ!街中に知らせてくれ!全部!」労働者が叫んだ。他も叫んだ。「最初に誰がやったかなんて知るか!これが事実なんだよ!」「俺たちもう真っ平なんだよ!無かったことにしようとしても、もう遅いんだってな!」「これも頼む!」「ハイデッカーの正体はクローン兵器だ!」

2016-06-26 16:43:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんだこりゃ、まるで三つ子!製造番号がイレズミされているぞ!」カメラは震えた。戦い、傷つき、血を流した者達から、何かを伝えてくれなどど必死に頼まれたのは、サラリマンとなってから初めてのことだった。(タダマキ=サン!ヤバイっすよ、もう完全にヤバイっす!俺らも犯罪者になりますよ!)

2016-06-26 16:48:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『臨時ニュースドスエ。スゴイタカイビル前で、FKGによるテロが発生。誇りある市民は、ハイデッカーへの協力を……』街頭プラズマTVが、ようやく緊急プログラムに切り替わり始めた。それは10月10日における一連の戦いが生んだ、ごく僅かな、しかしアマクダリにとっては致命的な遅延であった。

2016-06-26 16:56:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ふざけやがって」タダマキは頭上から降り注ぐ、現場映像ひとつない臨時ニュースにカメラを向け、中指を突き立てた。そして人々に叫んだ。「任せろ、俺は報道特派員だ!おい!スバル!レポート続けろ!」「アイエエエエ!で、でも接触は!」「付き合わせて悪いが、お前も多分、とっくに真っ赤だぞ!」

2016-06-26 17:02:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「誰か、手を貸してくれ!負傷者が多すぎる!医療キットも足りない!」ハイタカに銃撃された負傷者を助け起こしながら、看護師は周囲の高層オフィスビルの窓に向かって呼びかけていた。タダマキらに気づくと、看護師は、どこにも繋がっていないカメラに向かって叫んだ。「頼む!誰か、いないのか!?」

2016-06-26 17:07:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ピーポーピーポーピーポーピーポー!複数のサイレン音が接近する!「ヤッタ!救急車が来たぞ!」偵察役のサラリマンが叫んだ。だが……ナムアミダブツ!『救急車到着ドスエ、救急車到着ドスエ、安心し、明日もヨロシサン』響き渡る柔らかな電子マイコ音声!車両側面にはヨロシサン製薬のエンブレム!

2016-06-26 17:16:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ダメだーッ!ヨロシサンだーッ!」『負傷者および負傷したハイデッカーを回収し、人道行為しますドスエ』ニチョーム浄化作戦で人道行為され、ヨロシ救急車に乗せられた者の中には、帰ってこなかった人が何人もいる……そのような噂を聞いていた者たちは、咄嗟に叫んだ!「「「欺瞞!通すな!」」」

2016-06-26 17:23:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネオサイタマ最大最強のメガコーポ、ヨロシサン製薬の搾取と欺瞞に、多くの市民は薄々気づいていた。だがムラハチやサイバーマッポを恐れ、感情を押し殺していたのだ。しかしこの場に居合わせた者たちには、もう後がない!『明日もヨロシサン』「「「帰れ!」」」拳を掲げ押し寄せる人々!衝突が発生!

2016-06-26 17:30:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「ウオーッ!」」「イヤーッ!」「グワーッ!」「アバババババーッ!」壮絶!「誰か、誰か!手を貸してくれ!」離れた場所では、看護師がオフィスビルに向かって呼びかけ続ける。その声は分厚い防弾ガラス窓に阻まれたが、彼が何を訴えかけているかは明白であった。圧倒的に、手が足りなかった。

2016-06-26 17:37:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……ファオー、ファオオオー……。神秘的な電子雅楽音が鳴り響くオフィスビル内は、いつもと同じ、快適な労働環境が広がっていた。末端エスイーのタダは、他の同僚たちと同じく、顔をしかめ、顎を撫でながら、ちらちらと窓の外の光景を見ていた。彼は正社員ではないため、オフィス内の地位は最も低い。

2016-06-26 17:39:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

無視が最も賢い選択だ。ようやく掴んだ安定した職だ。だが、タダはついにたまりかね、ネクタイを放り捨て、立ち上がった。「ファックオフだ」エスイーはタイピング労働者であるが、常にスーツを着てネクタイを締めることを伝統的に義務付けられている。「おい、まだ勤務時間中だぞ!」主任が叱責した。

2016-06-26 17:50:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「主任、スミマセン」タダは湯気が上がりそうなほど肩をいからせて、主任のデスクまで歩いて行った。他のサラリマンたちは、黙々と業務を続けていた。「今日こそ、退職します」「バカ!納期がいつだと思ってる!そんな身勝手が通るか!」実のところ退社届けは上司によってもう三度も突き返されている。

2016-06-26 17:53:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「知ったことか!」「君が抜けて納期が遅れたらどうなるか、胸に手を当てて考えてみろ!このチームは、この課は、大変なことになるぞ!その一人一人に家族がいるんだぞ!」主任は怒り心頭し、デスクを叩いて叫んだ!見事な卓上ボンサイの枝葉と、ハイデッカー公式マグカップの中のマッチャが揺れた!

2016-06-26 17:59:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だがタダのニューロンには、今しがた眼下の広場で起こった光景が焼き付いていた。放置されていたオイランドロイド2体が看護師の横へ歩み寄り、医療行為を手助けし始めたのである。だというのに、オフィスの医療キットを持って助けに向かうべきだというタダの声は、数分前にも黙殺されたばかりだった。

2016-06-26 18:08:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それも知ったことか!」タダは前々からタイプの邪魔だと思っていたジャケットを脱ぎ捨て、奥ゆかしさも守るべき規範も何もかも放り捨てて、両手で中指を突き立てた!「こんなクソは全部ファックオフだ!」「何だと!」主任がキレた!「イヤーッ!」「グワーッ!?」痛烈なカラテパンチがタダに命中!

2016-06-26 18:10:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

もはやカラテあるのみ!「イヤーッ!」タダは殴り返した!主任の顔面に命中!「グワーッ!?」まさか殴り返されると思っていなかった主任は、この不意打ちをくらい、さらに逆上した!「カチグミをナメるなよ!イヤーッ!」主任はデスクの上に飛び乗り、高所の利を得て、鋭いカラテキックを繰り出した!

2016-06-26 18:15:43
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