稲川淳二の『つぶやき怪談』(2017.11.30)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、彼が、 「ええ、実は自分で３つぐらい行ったことあるけど、 そのうちの１つが、すごく怖いとこだった」 って、言うんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「２年ぐらい、前ですけど」 って、で、私が「そこ、どんなとこ？」 聞いたらば、話をしてくれたんです-----。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

このお兄ちゃんが、２年前、友達と連絡とって、 「おい、ちょっと会おうや」 と、まだ暑い時期ですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

夜中です。 ぜんぜん、用も何にもなかったんだけど、 「会おうや」 と、いうので、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「じゃあ、会おうか」 と、いうんで、 男が３人、みんなスクーターで、やってきたわけだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、あっちこっち回ろうってんで、ウウーッと回って。 で、そうこうするうちに、あてがないもんだから、 「おい、どうもつまらないな。あてもないし、遊びもないし。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

また帰るっていうのもばかばかしいしなあ。どうしようかなあ」 と、言ってたら、ひとりが、 「どうする？　怖いとこ、行ってみる？」 って。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おまえ、知ってんの？」 言ったら、 「うん。ある」 「どのあたり？」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

聞いたらば、沖縄本島のちょうど、まん中へん。 結構、怖いらしい。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おまえ、それ、行ったことあんのか」 聞いたら、 「いや、場所は知ってるけど、自分は行ってない。話は聞いてるよ」 と、言うんだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「へえー。行ってみようか。時間もあるし」 「それ、どういうとこなんだ？」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

聞いたらば、その友達が、 「なんでもねえ、建物があるらしんだけど。 その建物の初めの持ち主っていうのは、わからない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

でも、それが、どんどんどんどん持ち主、代わってる。 二番目にその建物を買った人というのが、 妙な病気でもって亡くなってる----。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、売りに出されて次にそれを買った人、というのがいるんだけど、 これが妙な事故で死んでる---。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、またオーナーが代わったんだけど、この人が自殺をしてる----。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

これがまた売りに出されて、買った人がいるんだけど、 この人、聞いた話によると殺されてるんだってさ------」 「ほんとか」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「いや、そうらしいよ。 だから、地元の人間は絶対その建物に行かないんだって」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「えー？」 「すごい、怖いとこらしいんだけどね」 「行ってみようか」 と、いう話になった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、スクーターで、ドゥウーッと。 それでも、結構な時間がかかるんですが、行ったわけだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

県道があるんですよね。 広い県道があって、県道のわきにちょっと空き地がある。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ちょうど山の間を、切り抜いたというかな、 切り通しってありますよね、山と山の間を抜ける切り通し。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その片側に山があって、切り通ししてるから、 反対側にもちょっと山が残ってる。 そういう場所。 で、空き地があるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そこへ、スクーターを停めた。 「おい、ここだよ」 見ると-----。 立入禁止の看板がある。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

どうやら道の入り口で、その両端には鎖がわたってる。 鎖だから、越すことは簡単なんですが、 夜の黒い闇の中でも、鬱蒼とした南国独特の雑草がすごい草。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その向こうに、長い枝が何本も地べたを這うように、 からみ合って伸びている。