ZK -瑞雲仮面- #5

OMIKATAが、城内に突入しました! 4:https://togetter.com/li/1176894 6:https://togetter.com/li/1178246
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劉度 @arther456

「できんな!今は全力を尽くすべき時だ。のうのうと出し惜しみをすれば、すぐ死神に影を掴まれるだろうよ!」「なら、せめて私より後ろにいなさい!」リシュリューが、ダンデスを庇うように前に立つ。「おのれぇ……!」重巡棲姫は、彼らに憎々しげに砲を向けた。22

2017-12-02 22:00:15
劉度 @arther456

重巡リ級改・"将軍"は、オランダの海を進んでいた。ほんの数時間前まで賑やかな市街地だったこの場所は、今や僅かな建物を残して水底へ沈んでいる。「惨いことを……」瑞雲の仮面越しにも、惨状はわかる。足元にどれだけの命が沈んでいったのか、彼女には想像もつかない。24

2017-12-02 22:03:00
劉度 @arther456

前方で、攻撃機の一隊が飛んでいる。編隊が狙う先には、屋根の上に追い詰められた人々がいた。「いかん!」将軍が高角砲を放つと、編隊は散開して逃げた。「お主ら、無事か!」将軍は屋根に近付く。「し、深海棲艦!?」水上に浮く将軍を見て、人々は顔を引きつらせた。25

2017-12-02 22:06:01
劉度 @arther456

「瑞雲仮面だ!」「ズイウン……?」「早くここから逃げろ!」「逃げろって言われても……」すると、エンジン音が鳴り響いた。振り返ると、1台のホバークラフトが近付いてくるところだった。「みんな、無事か!」「早く乗り込んでくれ!」乗っているのは、危険を顧みず救助活動を行う消防団だ。26

2017-12-02 22:09:01
劉度 @arther456

「急いで避難せよ!ここは危険だ!」「わかってるよ、そんな事!」消防団の男が叫ぶ。「だけどまだ、人が残ってるんだ!」「何ッ!?」「さっき、アンタと同じ、瑞雲仮面が教えてくれたんだ!この先の教会の中に、人が残ってるって!」「その者は、今どこに?」「……航空機に襲われて……」27

2017-12-02 22:12:01
劉度 @arther456

「……わかった。しかし、この先か」将軍のレーダーは、この先に展開する機動部隊を捉えていた。これ以上近付けば補足される。ホバークラフトでは太刀打ち出来ないだろう。将軍はしばし考え、そして頷いた。「ならば、私も同行しよう」「……本当か?」「うむ。義を見てせざるは勇無きなり、だ」28

2017-12-02 22:15:01
劉度 @arther456

「すまねえ、恩に着る!」将軍とホバークラフトは並んで進む。やがて、目的地らしい教会が見えた。その先の海上には、空母棲姫が率いる機動部隊も見える。消防団の男は斧を担いだ。「救助は20分で終わらせる。虫の良い話だけど、それまで俺たちを守ってくれ!」「承知した」29

2017-12-02 22:18:00
劉度 @arther456

将軍は刀を抜き、ホバークラフトを先導する。沈みかけた建物に隠れつつ、教会に近付く。あと一息というところで、敵の偵察機が頭上を横切った。「気付かれたかっ!」もう後戻りはできない。ホバークラフトは強引に直進、教会の窓にとりつく。「仮面の人!しばらく時間を稼いで……!?」30

2017-12-02 22:21:00
劉度 @arther456

将軍はホバークラフトを離れ、機動部隊へと駆け出していた。「おい、アンタ!?」将軍は教会の方へ振り返り、ニヤリと笑った。「時間を稼ぐのはいいが、別に倒してしまっても構わんのだろう?」そう言い残して、将軍は全速で敵へ突進する。31

2017-12-02 22:24:01
劉度 @arther456

――空爆を受ければ、ホバークラフトは5分と保たない。しかしこうして自分が前に出れば、戦い続ける限り敵の目を引きつけることができる。そしてこれは、無謀な突撃でもなかった。突進する将軍に、護衛の駆逐ロ級が気付き、砲撃してくる。32

2017-12-02 22:27:00
劉度 @arther456

将軍は砲弾を掻い潜り、すれ違いざまにロ級の胴を薙ぎ払う。「一つ、人の世生き血を啜り!」前にいた軽母ヌ級が慌てて逃げ出そうとするが、遅い。背中を袈裟懸けに切り捨てる。「二つ、不埒な悪行三昧!」次に見つけたのは空母ヲ級。驚いて動きを止めた彼女の心臓を、刀で貫いた。33

2017-12-02 22:30:06
劉度 @arther456

「三つ、醜い浮世の鬼を、退治てくれよう瑞雲太郎!」名乗りを上げた将軍は、輪形陣の中央にいた。隊長らしい空母棲姫は、もう目の前にいる。「こんな簡単に突破を許すなんて……!」歯噛みしても遅い。輪形陣を組むには、護衛の巡洋艦が少なすぎた。「年貢の納め時だ」34

2017-12-02 22:33:00
劉度 @arther456

「……フ、フン!威勢がいいのは結構だけど、これだけの数に囲まれて、果たして無事でいられるかしら?」周囲の深海棲艦が将軍に砲を向ける。護衛が少ないとはいえ、1人しかいない将軍と比べれば数の差は圧倒的だ。更に、将軍の持つ刀は、ヲ級を突き刺した時に刃こぼれしてしまった。35

2017-12-02 22:36:00
劉度 @arther456

「確かに、刀一振りで凌げる数ではないな」将軍は刀を海面に突き立てた。「え……?」液体に刀が突き立つはずがない。不自然な現象に空母棲姫が眉をひそめた、次の瞬間、刀を中心にして、赤い魔法陣が海上に展開した!「くっ!?」大規模な攻撃を予想し、空母棲姫たちは身構える。36

2017-12-02 22:39:01
劉度 @arther456

予想に反して、それは攻撃のための魔法ではなかった。魔法陣から紫電を帯びて現れたのは、真新しい日本刀。それも1本ではない。100本以上の刀が、将軍を中心に召喚される。そのうちの一本を、将軍は手に取った。「これぞ我が秘剣・武衛陣!剣豪将軍の最期を再現した、大魔術なり!」37

2017-12-02 22:42:01
劉度 @arther456

室町幕府第13代将軍、足利義輝。彼は最期の戦いで、秘蔵の名刀を畳に突き刺し、寄せる逆賊を次々と斬り捨てたと伝わる。「これより貴様らが挑むは無限の剣、剣戟の極地!」四方を囲む敵勢に、将軍は堂々と言い放った。「恐れずしてかかってこい!」38

2017-12-02 22:45:01
劉度 @arther456

軽巡棲姫は内陸部への侵攻を続け、遂に最深部の堤防へ大穴を空けた。しかし、オランダ軍はここを最終防衛ラインと定め、戦力を結集させている。「流石にハードねえ、もう!」熾烈な砲撃に、軽巡棲姫は建物の影から出ていくことができない。穴は空いたのにそこまで辿り着けない状況だ。40

2017-12-02 22:48:07
劉度 @arther456

一方、ここを守るオランダ軍もまた、追い詰められていた。「残りの砲弾、40%を切りました!」「各地の戦況は!」「第12大隊は後退中、第44大隊は交信途絶!」「このままでは保たんぞ……!」ドイツ基地航空隊と瑞雲仮面たちの力を借りても、戦線を維持するのが精一杯だった。41

2017-12-02 22:51:01
劉度 @arther456

そこに、戦況を動かす新たな報告が入った。「海から多数の飛行物体を確認!」「どっちだ!?深海棲艦か、瑞雲か!?」「深海棲艦です!」敵のさらなる増援が、空を黒く染めつつ現れた。これでは、制空権を奪われる。「砲兵部隊に通達!防空陣地まで後退させろ!」42

2017-12-02 22:54:04
劉度 @arther456

「やったあ!ナイスタイミングじゃない!」砲撃が収まり、軽巡棲姫たちは物陰から飛び出した。彼女たちの進軍を妨げるものはもう無い。「さあ、レッツゴー、アムステルダム!一直線にゴーアヘッドよ!」堤防の破孔へ一直線に突進する彼女たちの前に、突如大量の水柱が吹き上がった!43

2017-12-02 22:57:01
劉度 @arther456

「キャアッ!?」正体不明の攻撃に、軽巡棲姫たちは立ち止まる。「どこから!?」「前からです!」軽巡ヘ級が指差した先には、堤防の破孔があった。海面下から、穴を塞ぐように、何か巨大な物体がせり上がってくる。「なになに、なんなの!?」軽巡棲姫は慌てて主砲を構える。44

2017-12-02 23:00:08
劉度 @arther456

「おい、また何か出たぞ!?」一方、オランダ軍も突如現れた謎の物体に混乱していた。「深海棲艦の新兵器か!?」「それにしては大きすぎます!」「ってか、ビームかなんか撃ちませんでしたかあれ!?」双方が困惑する中、巨大物体は遂に海上へと姿を現した。45

2017-12-02 23:03:01