【けもフレ連載小説】#けものフレンズAF

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

「あ、ありがとうございます……」 「飛びついたりして、ご、ごめんなさいなのだ……」 「いえそんな、別に……ええと」 アライさんから帽子を受け取って、ぼくはアライさんとフェネックさんを交互に見やりました。「ああ、そうだったねー」とフェネックさんはぽんと手を叩きます。 #けものフレンズAF

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「ここは、ジャパリパークのさばんなちほーだよー。私はフェネック」 「アライさんはアライさんなのだ！」 「アライさんはアライグマねー」 「あ、はじめまして……おふたりは、このあたりに住んでいるんですか？」 「ううん、私の家はさばくちほーだよー」 #けものフレンズAF

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「アライさんはへいげんちほーの湖のあたりなのだ！　でも今はフェネックと一緒にパークを冒険しているのだ！」 「そう、それでさばんなちほーに来たんだけどー。そこでアライさんがその帽子を見つけてねー。風に飛ばされたり鳥に持って行かれたりするのを追いかけてきたのさー」 #けものフレンズAF

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「はあ……」 「ところで、君は何のフレンズなのかなー？　耳も翼も尻尾もないフレンズは珍しいけど、思いだせない？」 「え、ええと……だめです、全然……」 ぼくは首を横に振りました。自分が何者なのか、考えても全く思い当たることがありません。 #けものフレンズAF

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何かを思いだそうとしても、記憶には草原で歩いている以前のことは何も浮かび上がってこないのです。 「フェネック、フードがあればヘビのフレンズなのだ！」 「なさそうだよー？」 「ぐぬぬ……」 「他に特徴は……あ、背中のそれは何かなー？」 #けものフレンズAF

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フェネックさんが、ぼくの背中のかばんを指さして言いました。 「これですか？　ええと……かばん、かなあ……」 「かばん？　かばんって何なのだ？」 「中にものが入りそうだよー。背中に背負える袋みたいだねー」 「袋があるなら、コアラかカンガルーなのだ！」 #けものフレンズAF

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「アライさーん、コアラもカンガルーも背中に袋はないと思うよー」 「うぬぬ……」 「背中に何か背負ってるっていえば、カメかなー？　でも、カメの甲羅にしては柔らかいねー。何か中に入るものを背負ってる動物……あ、わかったかもー」 「わ、わかりますか？」 #けものフレンズAF

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ぼくはごくりと唾を飲みました。フェネックさんはぼくを見つめて、 「カタツムリのフレンズじゃないかなー」 そう言いました。 「か、カタツムリ？　ぼく、カタツムリなんですか……？」 「おおー！　やっぱりフェネックはすごいのだ！」 #けものフレンズAF

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「あ、やっぱり違うかもー。カタツムリならツノがあるはずだしー」 フェネックさんはぼくの頭を見やっていいます。どうやらぼくはカタツムリではないみたいです。なんだかちょっとほっとしました。 「うーん、これは図書館に行かないとわからないかもねー」 #けものフレンズAF

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フェネックさんは腕を組んで唸りました。 「としょかん……？」 「しんりんちほーにあるんだよー。図書館に行くと、博士が色んなことを教えてくれるんだー。たぶん、君が何の動物かも、博士ならわかるんじゃないかなー」 #けものフレンズAF

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「あ……ありがとうございます。ええと、図書館ってどっちに行けば……？」 「ここからだと、しんりんちほーは遠いよー？　歩いたら何日もかかるよー」 「ええ？　どうすれば……？」 「うーん、どうしようかアライさーん」 フェネックさんはアライさんを振り返ります。 #けものフレンズAF

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「おたからの場所をボスから聞き出さないとなのだ！」 「そうだねー。でも、それにはこの子の帽子がいるよねー」 「うぬぬ……」 「そうだアライさん、あの羽根はー？」 「あっ、忘れてたのだ！　ここにあるのだ！」 アライさんはそう言って、どこからか赤い羽根を取り出しました。 #けものフレンズAF

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そうしてぼくの方を振り向くと、「ちょっと帽子を貸すのだ！　すぐ返すのだ！」と言いました。ぼくが帽子を脱いで差し出すと、受け取ったアライさんは、帽子にその羽根を刺しました。よく見れば、反対側には青い羽根がついていて、帽子はふたつの羽根が両側についた形になりました。 #けものフレンズAF

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「これで完成なのだ！　あとはボスを探すのだ！」 「そうだねー。じゃあ、この子と一緒にゲートに向かいながらボスを探そうかー」 「了解なのだ！」 アライさんは帽子をぼくに返して、「出発なのだー！」と手を高々と掲げました。ぼくは全然話についていけません。 #けものフレンズAF

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このふたりは、どうやらぼくの帽子を手がかりに、何かを探しているみたいですが、ボスっていったい誰なんでしょうか。 「あ、そうだアライさーん。この子の名前を決めようよー。名前がないと呼びにくいしー」 と、フェネックさんがぼくを振り返ってそう言いました。 #けものフレンズAF

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「名前？　帽子泥棒……じゃないのだ」 「帽子の子だから、ぼうしさん、かなー？」 「ぼうしさ……言いにくいのだー！」 「言いにくいねー。じゃあ、かばんさんかなー？」 「かばんさんなのだ！　決まりなのだ！」 フェネックさんとアライさんが、ぼくを見つめてそう言いました。 #けものフレンズAF

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かばん。どうやら、それがぼくの名前に決まったみたいです。なんだかちょっと変な感じだったけれど、ぼくという存在が、初めて輪郭をもったような、そんな気持ちがして、ちょっとだけ心が軽くなりました。 #けものフレンズAF

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だからぼくは、自然と笑みを漏らして、ふたりに頷きました。 「はい、ありがとうございます！」 #けものフレンズAF

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（つづく） #けものフレンズAF

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というわけで新連載 #けものフレンズAF は「かばんちゃんがサーバルちゃんと出会う前にアライさんたちに追いつかれていたら」というアニメ版けものフレンズのアラフェネルート全12話になる予定です。エタらないように頑張ります。もし感想等あれば #けもフレAF タグをご利用いただければ幸いです。

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【不定期連載第2回】 『けものフレンズAF』 第１話「さばんなちほー」その２ #けものフレンズAF ログ→togetter.com/li/1177895 実況・感想等あれば #けもフレAF タグでどうぞ

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広い広い草原が、見渡す限りどこまでも続いています。その中を、ぼくとアライさん、フェネックさんの三つの影が並んで進んでいきます。ひとりぼっちで歩いているときより、いくぶんか足が軽くなったような気がしました。 #けものフレンズAF

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「このあたりにも、アライさんやフェネックさんみたいなフレンズさんが住んでいるんですか？」 「そうだねー。ここに来る前にトムソンガゼルに会ったよー。でも、今日はあんまりみんな出歩いてないみたいだねー」 「きっと暑いから寝てるのだ！　アライさんもちょっと眠いのだ……」 #けものフレンズAF

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「アライさん夜行性だからねー。私もだけどさー」 「だ、大丈夫なんですか？」 「へーきなのだ！」 「気にしなくていいよー。アライさんと冒険するようになってから、昼間に歩き回るのもすっかり慣れたからさー。かばんさんは夜行性なのかなー？」 「ど、どうなんでしょう……？」 #けものフレンズAF