【けもフレ連載小説】#けものフレンズAF

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

「あ、今日生まれたばっかりだから、まだ夜も体験してないかー」 　フェネックさんは首を傾げて、空を見上げます。空は青々と高く澄んでいて、つられて見上げたぼくはその眩しさに目を細めました。 「夜はねー、空が黒くなって、あたりが目を瞑ったみたいに暗くなるんだよー」 #けものフレンズAF

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「そ、そうなんですか？　それじゃ何も見えないんじゃ……」 「大丈夫なのだ！　アライさんは夜行性だから暗くても見えるのだ！」 「私もわりと平気かなー。まあ、夜になればわかるよー」 #けものフレンズAF

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夜ってどんなものなんでしょうか。まだわかりませんが、なんだかあまり、気分のよさそうなものではない気がしました。ぼくは息を吐いて、かばんを背負い直します。 「まあ、かばんさんが夜行性じゃなかったら夜は動けないかもだから、夜になる前にゲートまで行きたいねー」 #けものフレンズAF

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「ゲートって……？」 「ちほーとちほーの間にある場所だよー。さばんなちほーからはじゃんぐるちほーの方へ行けるんだー」 「アライさんたちはそっちから来たのだ！」 「戻っちゃっていいんですか？」 「どっちにしろ、ボスを探さないとだしねー」 #けものフレンズAF

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「そうなのだ！　ボスを見つけるのだー！」 フェネックさんはそう言って、周囲を見回します。アライさんも「ボスー！　出てくるのだー！」と声を張り上げますが、返事はありません。 「あの、ボスって……？」 「あー、えーっと、うーん……ボスは説明が難しいねー」 #けものフレンズAF

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「ボスはじゃぱりまんをくれるのだ！」 「じゃぱりまん？」 「食べ物だよー。ボスが配ってるんだー。あとでかばんさんにも分けてあげるよー」 「あ、ありがとうございます……」 「ボスについては、見つけたら説明するよー。かばんさんも、青くて丸っこいのを見かけたら教えてねー」 #けものフレンズAF

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「は、はい……」 青くて丸っこいって、いったいどんなものなんでしょう？ そうしてぼくも周囲を見回しながら歩いていると、いつの間にかアライさんとフェネックさんの背中が離れてしまっていました。追いつかなきゃ、と思って足を速めようとしましたが、思うように足が動きません。 #けものフレンズAF

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「はあ、はあ……」 ぼくが膝に手をついて息を整えていると、ぼくが遅れていることに気付いてフェネックさんが足を止め、振り返りました。 「アライさーん、ちょっと待ってよー。かばんさんがー」 「お？　かばんさん、大丈夫なのかー？」 「す、すみません……はあ、はあ」 #けものフレンズAF

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駆け寄ってくるふたりに、ぼくは顔をあげて大丈夫と伝えようとしましたが、息があがってしまって、うまく言葉になりません。ふたりは顔を見合わせ、フェネックさんが周囲を見回して、近くに立っているひとつの木に目を留めました。 「あそこの木陰で休憩しようかー。暑いしねー」 #けものフレンズAF

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「うう……すみません……」 「大丈夫だよー。太陽が暑い時間は休む方が得策だからさー」 フェネックさんがぼくに手を差し伸べます。申し訳ない思いでその手をとったぼくを、フェネックさんは木陰まで引っ張っていってくれました。 #けものフレンズAF

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アライさんと三人、木陰に入ると、太陽の光が遮られて少し涼しくなり、ほっと一息つきました。 「休憩なのだー」 ぐでんと草の上に腹ばいになるアライさん。ぼくは木の幹にもたれて座り、フェネックさんはアライさんの傍らに腰を下ろしました。 #けものフレンズAF

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「アライさんも大丈夫ー？」 「喉渇いたのだー。さばくちほーからこっち側はどこも暑いのだー」 「そうだねー。水場を探さないとだねー。かばんさんも随分汗かいてるけど、大丈夫ー？」 「え、あ、はい……」 額と首回りの汗をぬぐって、ぼくは息を整えます。 #けものフレンズAF

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乱れていた呼吸が落ち着いてきて、ぼくは木洩れ日を見上げました。ぼくってひょっとして、アライさんやフェネックさんと比べても、だいぶ弱くて足が遅い動物なのかもしれません。 「フェネックさんは大丈夫なんですか……？」 #けものフレンズAF

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「私はさばくちほーの動物だからねー。こういう乾いた暑さは平気だよー。むしろ、じゃんぐるちほーみたいな蒸し暑い方が苦手かなー」 「アライさんは水がある方がいいのだー。水がないと洗えないのだー」 #けものフレンズAF

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一緒に行動していますけど、アライさんとフェネックさんはもともと違うところで暮らしている動物のようです。それじゃあ、ぼくはいったいどんな動物なんでしょうか。 「あの、アライさんとフェネックさんはどうして一緒に？」 #けものフレンズAF

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「え？　ああ、最初はアライさんが、となりのへいげんちほーから私のいるさばくちほーに迷い込んできたんだよー。それで倒れてたのを私が助けたのさー」 「フェネックは命の恩人なのだ！　あと迷ったんじゃないのだ、おたからを追いかけてたのだ！」 「おたから……？」 #けものフレンズAF

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「そのときアライさんが追いかけてたのは、単なる見間違いだったんだけどねー」 「フェネックぅー！」 「でも、アライさんと一緒にあちこち歩いて回るのが楽しかったから、こうして一緒に冒険してるのさー」 「ふたりでパークのおたからを見つけるのだ！」 #けものフレンズAF

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アライさんとフェネックさんはそう言って笑い合います。なんだかそんなふたりの姿が羨ましくて、ぼくは目を細めました。自分が何の動物かもわからなくて、何をどうしたらいいのかもわからないぼくに比べて、ふたりは……。 #けものフレンズAF

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「かばんさんも、何の動物かわかれば、きっと自分のなわばりが見つかるのだ！」 「え？」 「そうだねー。それに、このさばんなちほーで生まれたなら、ここの動物の可能性は高いと思うしー。ここのフレンズに聞いたら、図書館に行かなくてもすぐわかるかもねー」 #けものフレンズAF

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「あ……はいっ」 ぼくを見つめてそう笑いかけてくれるふたりに、ぼくは頷きました。そうです。落ちこんでる暇があったら、まずは自分が何の動物かを突き止めないと――。 #けものフレンズAF

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陽が雲に隠れて少しかげったところで、ぼくたちは木陰を出て歩き出しました。 「ゲートに向かう前に水場を探すのだ！」 「このへんに住んでるフレンズに会えれば、教えてもらえると思うけどねー」 #けものフレンズAF

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

ふたりはそう言って、きょろきょろと視線を巡らせます。ぼくもふたりの役に立ちたくて、広い草原を見回しました。あたり一面、草と木々ばかりですけど……。 「あっ！」 一瞬、草の間に白黒の影が見えました。 #けものフレンズAF

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「どうしたのー？」とフェネックさんがこちらに寄ってきますが、ぼくが指さそうとしたときには、影は草の中に隠れてしまいます。 「今、白黒の影が……」 「白黒？　それならシマウマじゃないかなー。探してみようかー。アライさーん、こっちこっちー」 #けものフレンズAF

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フェネックさんが手招きして、アライさんもこちらに駆け寄ってきます。そうして、ぼくがシマウマさんらしき影を見た方へ、三人で歩き出しました。 そのときです。 フェネックさんが大きな耳をぴくりと震わせて、背後を振り向きました。 「フェネック？」 #けものフレンズAF

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「何か、向こうからこっちに来るよー。ちょっと隠れようかー」 フェネックさんはぼくとアライさんの手を引いて、近くの茂みの中に身を伏せました。何が何だかわかりませんが、ぼくもしゃがんで身を縮めます。 「セルリアンなのだ？」 「どうだろうねー」 #けものフレンズAF