#お好み焼き屋浜風 黒潮&親潮編（前編）【艦これSS】

紅吏珠名 @chrishna_c2

私たち陽炎型の上の姉であり、呉鎮守府の中核メンバーでもある、 第三秘書艦・兼・親衛隊隊長にして陽炎型三番艦・黒潮姉さんと、 親衛隊副長にして陽炎型四番艦・親潮姉さんがお二人で来店していました。 #お好み焼き屋浜風

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陽炎型の姉三名によって結成されたyaggy評議会は、提督を新兵の頃から支えてきた功績もあり、提督と同等またはそれ以上の権限を横須賀鎮守府の司令長官より与えられていることは、すでに知られている通りです。 #お好み焼き屋浜風

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――その中でも黒潮姉さんは、私が呉の街でお好み焼き屋を開業することに最後まで反対した人でした。 #お好み焼き屋浜風

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結局、陽炎姉さんと不知火姉さんの同意が得られ、結局2対1の多数決によって私のお店を開業することが正式に認められましたが、それからも黒潮姉さんは頑としてお店にくることを拒否。 ただの一度もお店に来てはいただけませんでした。 #お好み焼き屋浜風

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その開店初日から今日に至るまで、只の一度もお店にいらっしゃらなかった黒潮姉さんが、親潮姉さんと伴ってとはいえ突然お店に姿を見せるなんて。 いったいどういう風の吹き回しなのでしょう？ #お好み焼き屋浜風

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その黒潮姉さんが店内に入るや、客席にではなく厨房に向かってヅカヅカと詰め寄るように歩いてきます。軍人然とした無駄のない足運び。 #お好み焼き屋浜風

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姉さんがそのように行動することが最初から分かっていたのか、私たちの様子を腕を組み固唾を呑んで見守る親潮姉さん。 心なしか出入口を塞ぐように立っているようにも見えました。 #お好み焼き屋浜風

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黒潮姉さんが私に向ける目。 お客さんとしてというよりは、刃のように研ぎ澄まされた、虎が獲物を見定めるような雰囲気。普段ののほほんとした笑顔とは違うどころか正反対の、まるで深海棲艦と相対している時のような殺気さえ感じられるようでした。 やだ。なんだか、こわい。 #お好み焼き屋浜風

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「なに、言うてそない手間ぁ取らせへん。ちょっと悪い噂話を小耳にはさんでもうてな。ほら、うちらかて鎮守府の役職もちやし？　お姉ちゃんとしての監督責任もあるしな？　行きがけついでに確認しとこかと思うてのことや」 「はい？　悪い噂話……ですか？」 #お好み焼き屋浜風

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「せや。うちらは姉妹や。せやから単刀直入に言うで。浜風。お前が深海棲艦とつるんどるっちゅー噂話や。心当たりはないか？」 「な……私が深海棲艦のスパイだって言うんですか！？」 「なんや周りからよーさん嫌疑がかかっとる。お姉ちゃん怒らへんから正直に話してみ」 #お好み焼き屋浜風

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「もし事実やとしたら、秘書艦として看過でけへん」 声はいつも通りのほほんとした感じなのに、嘘をついたら一発で見破るで、という鋭さが含まれていて。親潮姉さんも、この場で嘘をついたら妹であろうと一切庇いだてしません、と言いたげな厳しい目線を私に向けています。 #お好み焼き屋浜風

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そんな。深海棲艦のスパイ疑惑なんて、そんな馬鹿な話ってありません。 私はこうして蔵王通りに面した商店街の一角でお好み焼き屋を営んでいるだけなのに。 いったい誰がそんな根も葉もない噂話を広めたのでしょう。 #お好み焼き屋浜風

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名は体を表すと言いますが、黒潮姉さんからの、まるで潮のうねりのような威圧感。 それが提督を新兵の頃から支え続けてきた通称yaggyの、私たちにも知らされない本当の顔なのでしょうか。 #お好み焼き屋浜風

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いっぽう着任して日の浅い親潮姉さんは、全て承知の上で黒潮姉さんに同行しているのでしょう。 yaggyに最も近い、酸いも甘いも知りうる立場、陽炎型4番目の姉さんなのですから。 #お好み焼き屋浜風

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そんな姉さん達から向けられる疑惑の目に私は返す言葉を見つけられず、そのまま呆然と立ち尽くしていると。 「チョット　イイカ」 レジの前に現れる来客がありました。 「あっ、はい。いますぐお伺いします」 金縛りにも似た緊張をほどくように、私はレジへと走りました。 #お好み焼き屋浜風

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「艦娘　ココナラ　おーくら先生二　渡リガツクト　聞イテ来タ」 「あ、集積地棲姫さんこんにちは」 「コレヲ届ケテホシイ　集積ッチトイエバ分カル」 「この品物を妹に届ければいいんですね？　確かにお預かりしました」 「デハ　ヨロシク頼ム」 ……ぱたん。 #お好み焼き屋浜風

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そんな集積地さんとすれ違うようにして。ヲ級さんがお会計を済ませるため、よっこらせと立ち上がり、腰に手をやりながらレジまで足を運んでいる所でした。 「艦娘　今日モ馳走ニナッタ　特別二　コレヲ　オ前二預ケヨウ」 #お好み焼き屋浜風

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「あら、ドラム缶ですか？」 「れああーすダ　電子電機機器ノ開発二　役ダツ土クレ　特二　通信機器ノ開発ニ　欠カセナイ物ダソウダナ」 #お好み焼き屋浜風

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「オ前タチノ　技ノ力ガ　アレバ　ヨリ強力ナ装備ノ　開発モ可能」 「それはもう。鎮守府には優秀なスタッフが常駐していますから」 「……ソウシテ　強イ装備ヲ持ッタ　艦娘ヲ　沈メレバ　我々ノ“ちから”モ　増ストイウモノ」 ？？？ #お好み焼き屋浜風

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「モシ　強力ナ装備ガ　開発デキタラ　私ノトコロニ　持ッテコイ　直々二　出来栄エヲ　見テヤル」 「はい、それはもちろん」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「我ラ　深海ノ　無尽蔵ノ資源　艦娘ノ技術力　組ミアワセガ　アレバ　スベテノ陸地ヲ　沈メルコトモ可能」 「せくはら　ぱわはら　職場環境ガ　ツライナラ　深海ノ仲間ニ　ナルトイイ　オ前ナラ　イツデモ歓迎ダ」 #お好み焼き屋浜風

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「次ノ休暇ノ日ニハ　オ前達ノ鎮守府モ　観光シテ回リタイモノダ」 「またまた。ヲ級さんったらご冗談を」 「マタ来ル　首ヲ洗ッテ待ッテイロ」 「はい、今日もお越しいただきありがとうございました」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

……ほら、どうですか。私の完璧な接客態度は。 私とヲ級さんは、普通にお店の店長と常連さんで、こうして世間話や冗談をかわす程度の間柄です。 #お好み焼き屋浜風