- itabashixxx
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小学生の頃、理科の授業で「モンシロチョウの卵を育てましょう」っていうのがあった。校内の植え込みから卵を見つけてきて各自机の上の虫かごに入れて成長を見守る、というものだった。
2011-04-03 12:21:06たしか先生は「ちゃんと卵から育てましょう。幼虫を捕まえてきちゃだめですよ」と言っていた。とはいえ蝶の卵はすごく小さくて見つけにくいもの。
2011-04-03 12:26:30既に孵化している幼虫を捕まえてくる方が楽だったし、「ちっちゃい卵よりおっきい幼虫の方がえらい」みたいなガキ心理も手伝って先生の言いつけに背く奴がちらほらいた。
2011-04-03 12:27:01ともあれこうして生徒全員それぞれの蝶を育てる日々が始まった。いち早く孵化する子、なかなか孵化しない子、あるいはとうに青虫として葉っぱをむしゃむしゃしている子。クラスのメンバー同様個性豊かな発育を見せていた。
2011-04-03 12:33:35周りよりも発育の良い幼虫を持つ者は周りからすごいすごいと言われ得意げにしていた。斉藤君(仮名)もその一人。彼の幼虫は早くも蛹になろうかという段階まで成長していた。
2011-04-03 12:39:24ある朝、斉藤君の席の周りにちょっとした人だかりができていた。彼の幼虫の様子がおかしいというのだ。見ると幼虫はじっと動かなくなり体の半ばあたりにかさぶたのようなものができていた。これはいよいよ蛹になる兆候ではないかと皆が騒ぎ立て話題の中心たる斉藤君はいよいよ舞い上がった様子だった。
2011-04-03 12:45:44日に日にかさぶたのようなものは大きくなっていく。黄色いそれは緑色の幼虫の体を食い破るように大きくなっていく。蛹に変態するプロセスを外れていくように見えた。
2011-04-03 12:50:48コーヒー飲みすぎたせいか手足がしびれてきたので一旦CM http://www.youtube.com/watch?v=AnatrHxp1zE
2011-04-03 12:57:17斉藤君の幼虫に異変が起きているのは明らかだった。黄色いものは幼虫の体を包む殻に変化することなくただ膨らんでいくばかり。やがて担任の先生が言った。「斉藤君、卵から育てなかったでしょ。これ幼虫をつかまえてきたでしょ。」
2011-04-03 13:08:24「この幼虫はね、寄生虫に寄生されてるんだよ。モンシロチョウの幼虫に卵を産みつけるハチがいてね、斉藤君の幼虫はそのハチにやられたんだよ。」
2011-04-03 13:11:34飼育開始初期には周囲より大きな幼虫を誇り、つい先日にはいち早く蛹への変態を誇っていた斉藤君は今や焦燥と哄笑の只中にあった。敏腕ブリーダーの地位から転げ落ち今や教師の言いつけを破った背信者に堕していた。
2011-04-03 13:17:19そして先述のとおり背信者は彼一人ではなかった。あちらの席で、またこちらの席で幼虫に異変が起き始めた。背信者たちは斉藤君の幼虫を不安とともに見守った。それは我が子の未来に他ならなかった
2011-04-03 13:25:58@unzenkimendake 「斉藤君」という名前は、かぶとむしを連想しちゃうんですよ。「伝染るんです。」の。彼は登場時から成虫でしたが。
2011-04-03 13:28:00ぷくぷくと瑞々しかった幼虫の体は今やしなびて光を失っていた。その一方で寄生虫の卵あるいは繭はたんぽぽの花のように生命を主張していた。異様な光景だったと思う。しかしなによりも異様だったのは幼虫が黄色い異物に対して口から糸を出し慈しむような行動を見せていたことだった。
2011-04-03 13:35:48あっ、斉藤さん! RT @unzenkimendake itabashixxx ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ(飛び去る)
2011-04-03 13:39:51先生は「寄生された幼虫でもきちんと成虫になるまで育てなさい。捨ててはいけません。」と言った。予期せぬ形とはいえ生き物を育てることに代わりはない、かんたんに投げ出してはいけない、という趣旨だったのかもしれない。
2011-04-03 13:49:06しかし小学生の耳には「これは先生の言うことをきかなかった罰だ!」と聞こえた記憶がある。斉藤君一派の中には後ろめたさやら悔しさやらで泣く者もいた。言いつけを守って卵から育てた生徒の机の上ではすくすくと育った幼虫が次々に蛹への変態を遂げていた。
2011-04-03 13:54:53