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fate_limbo
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“嗚呼、こんな事なら立ち向かわなければ。苦しい、なんて苦しいのか。いつも通り、彼奴らに任せていれば。いつだってそうだ、そんなおれなんかはこうして、人知れず消えていくのも、悪くないのかもしれない。ただ、心残りがあるとすれば……一騎打ちやら、戦で死ぬやら、もっと格好のつく、”
2018-01-14 00:04:23![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
――――――男は、はて、何を見たやら。悪魔の其れ?いえ、いえ、ふふふ、ウフフフフフ!嗚呼、嗚呼!いと可笑し!萎びた脳如きで捉えられるものか。然り、然り。夢など見るだけ無駄というもの。最期の現実をとくと味わえ。
2018-01-14 00:06:04![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
“嗚呼、なに、なんだ?おれを見ている?霞む視界に誰かがおれをみていた。嗚呼、やっと、見てくれるのか?助けてくれ、もっと上手くやれた筈だ!こんな所でくたばってたまるか!”――――――ンン、ンンンン。
2018-01-14 00:07:11![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
…………見苦しいですねェ、汚らわしい。穢らわしい。何と勘違いなされているやら、運も才能の内。己が才に希望を見出せなかった時点で、貴方の負けです。
2018-01-14 00:08:10![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
そう言ったが早いか、大きく質量のある何かが男を踏み潰した!無残に首の骨が折れ、内臓は嫌な音を立てて潰れ、体を形作る骨はすべて、すべて崩れた。無意味に命を奪われる最中、今まで奪われてきたモノが走馬灯のように巡る。
2018-01-14 00:09:26![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
嗚呼、本当は自ら手放したと知っているのに。恨めしい。本当は自ら台無しにしたと知っているのに。妬ましい。逆恨み?そんな言葉は知らぬ。奴さえいなければ。彼奴さえいなければ!あの女さえ、あの男さえ、あれさえなければ!!必死に生きて、もがいていたのに!何がいけなかったというのか!
2018-01-14 00:10:29![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ああ、あああああああああイヤだ嫌だいやだいやだしにたくないしにたくないしにたくない!グ、ぁア?ひ、ッ、あ、なに、なに、おれの、おれの頭、ない、あ、あ、頭蓋骨が、砕け、砕け、ア―――ァ?ガッ、?ァ?ぁ?あ、ああ……?……ハ、ぐゥ、?ぅ、ア?ァ―――――」
2018-01-14 00:11:44![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
……あたまのなかみをぐちゃぐちゃと掻き回し、滅茶苦茶に思考回路を繋ぎ合わせて。そう、私が新たに作り変えた訳ではない。是は男の内にあるモノ。
2018-01-14 00:12:25![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
これぞ髀肉之嘆。その末路はなんとまあ、皮肉なものですか。 民の為にと捧げた命で、民を踏み潰していく滑稽さ。 国の為にと懸けた命で、国を壊し尽くしていく醜悪さ。 同志の為にと取った刀で、同志を斬り斃していく厚顔さ。
2018-01-14 00:13:03![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
悲痛な叫びが宙を舞う。怒りの咆哮が天を貫く。果たしてそれは、自らに対するモノなのか。とうに死体と成り果てておきながら、贅沢にも絶望に身を焦がし、欲望渦巻く本能に身を任せ、既に理解を越えたに憎悪に身を震わせて。文字通りの“化け物”と化した男は――――興味すらも唆らぬモノであった。
2018-01-14 00:14:07![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
化け物と化して尚!多勢の中の一人に過ぎなかった。嗚呼、悲しきや、残念無念。折角、魔に魂を売ったというのに。所詮は運に見放された男。ンン、ンッ、多少の利用価値はありましたよ?ええ、ええ。しかし、その程度。この世界に貴方は存在しようがしまいが、どうでもよかったのです。
2018-01-14 00:14:59――――――――――
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まるで演劇の幕引きを告げるかのように、ゆっくり、ゆっくりと……陽が呑み込まれ沈んでゆく。人類の希望が如く、地上を照らすモノは最早見る影も無く。ただただ、其処には、深い闇が続いておりました。
2018-01-15 00:01:11![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
是は、アーチャー・インフェルノ殿と、我らが根城より幾許離れた小さな村に偵察に訪れた際の事。……夜分は奇妙な怪異が其処彼処に出没するらしい、なるべく外出は控えるべきだ―――と、密かに陰で囁かれている頃合。だと、言うのに。
2018-01-15 00:02:09![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
然程高さのない藁葺き屋根に、ぽつりと座る齢九つ程に見える、幼き男が見えました。もしや、未だこの村には怪異の噂が届いていない?いえ、いえ、そんな筈はない。三里と離れぬこの土地に、風の噂であろうと聞こえぬ筈はないでしょう。
2018-01-15 00:02:55![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
“もし、もし。そこの愛らしい坊や。夜も更けたというのに、そんな所に居っては、風病に罹りますよ。降りなさい。” 童は嫌だと首を横に振る。
2018-01-15 00:04:22![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
拙僧は興味が失せた故に、早々に赤を写す川へと目を逸らしましたが、まあ、彼女は執拗いといいますか、何と言いますやら……数度同じ様に声を掛けた様でした。しかし小童は全く言葉を発する様子はなく。
2018-01-15 00:06:02![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
いい加減諦めたのか、インフェルノ殿は少し寂しげに、何処か悲しげに俯いて“先に行く”とだけ告げてその場を後にされました。暫し川のせせらぎに耳を傾けた後、追いかけようと片足を踏み出した、刹那。
2018-01-15 00:06:52![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
――――なんと。あの小僧は、なんと申したか?ふと足を止め、振り返れば先程私が目を遣った川を見ていた。童の瞳に写される真っ赤な月。それは、私が闇夜へ打ち上げたもの。じっと見据えていれば、今度は真っ直ぐに、澄んだ瞳が此方を見た。
2018-01-15 00:08:49![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
月光が顔を照らし漸くはっきりと輪郭の浮かび上がった童は、幼いながらも品のある、端正な顔立ちをしていました。少しばかりかさついた、形の整った薄い唇が弧を描く。ゆっくりと、ゆっくりと……暗闇を吸い込んでゆく。すれば小僧は、まるで唄を詠むかの如く。
2018-01-15 00:09:27![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
“こんなにも、きれいなお月さまなのに。 あのひとは、見向きもしない。さびしい人。 でも、あなたは違う。知っている。 夢のように大きくて、近くて、嗚呼、手を伸ばせば届きそうな――――”
2018-01-15 00:10:14