戦車小話~T-80軽戦車の開発とソ連軽戦車の終焉

メジャーじゃないほうのT-80戦車についてあれこれ
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ところでT-80は対空射撃する時はどの弾種を使う事になってたんでしょうね。普通なら榴弾にしたい所ですが、しかし45mm砲の榴弾は低速低圧の長榴弾で、初速が徹甲弾の半分くらいしかありません。また榴弾には曳光剤もなくて目立たないので、相手をビビらせる目的なら速くて光る徹甲弾のほうがいいのかも

2018-01-28 17:37:08
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

弾薬互換性のある海軍用45mm砲には徹甲弾同等に高初速な普通榴弾(長くないやつ)もあったんですが、でもT-80に対空射撃させる為だけにわざわざそれを陸に割り当てる事は考えにくいでしょう。あるい陸用45mmには散弾があったので、それを対空射撃に使う手はあるかしら……

2018-01-28 17:40:43
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ともあれ。その他のT-80のテストでは、機動力はほぼT-70と判定されます。また視察能力は従来より遥かに良好。砲塔からの視界と死角はこの通りで、車長兼照準手の視界が前方95度しかない事がわかります。先述のように全周視察はあくまで装填手の仕事になる訳で、このあたり2人用砲塔の限界が見える気も pic.twitter.com/pNOjb1mGq7

2018-01-28 17:45:04
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

テストで指摘された問題はエンジンの整備性くらいのもので、総じてT-80はT-70Bをあらゆる面で上回るとされます。これを受けてT-80の量産が指示されたものの……むしろT-80はここからが問題でした

2018-01-28 17:47:49
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

まず量産車のテスト中、射撃時に仰俯機構が破損することがあると判明。特に(肝心の)大仰角射撃に問題があり、25度以上での発砲を制限される。このほか防盾やらエンジン整備ハッチの改良やら落ち着かない状況が続き、さらに工場の爆撃が加わって生産が振るわず。数が揃わないため訓練用にしか回せない

2018-01-28 17:56:18
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そして既に1943年半ば。この頃にはT-80というより、軽戦車そのものの有用性、とくに火力の無さが問題視されるようになります。このために長砲身の45mm VT-43戦車砲や76mm歩兵砲の装備が検討され。なかには従来武装に加えて、英戦車のボムスロワーめいて50mm後装迫撃砲を砲塔前面に追加装備する案も

2018-01-28 17:58:59
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

T-80に装備が検討されたのは50mm後装迫撃砲S-11。実は赤軍はヴァレンタインに付いてたやつが気に入ったのか、戦車の補助武装としての後装迫撃砲装備をかなり幅広く検討してました。IS-4の初期試作車にも付いてたり。量産車で取り入れたのは無かったような気がするので方針転換があったのでしょうが pic.twitter.com/di4xbXFfPx

2018-01-28 18:01:09
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

50mm迫撃砲や76mmは素案以上には進みませんが、VT-43搭載T-80は実際作られてます。テストしたところ精度と砲身命数は極めて良好で、半自動鎖栓には幾らか指摘がつき強化の必要があるとされたものの総じて問題は認められず。ところでこいつはVT-42付T-70と同様、小パンターめいて精悍なので個人的に好み pic.twitter.com/6u5PEW3EYk

2018-01-28 18:03:53
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

というわけでVT-43は試験に耐えたのですが、しかし時は既にクルスク戦の後。この頃にはSU-76増産のためにT-80自体作るのをやめる事が決まってしまったのです。多少対戦車能力が増したとはいえ結局45mm砲ですし、そして戦車の仕事の半分は榴弾を撃つ事ですから、だったら76mm自走砲のほうが嬉しいのです

2018-01-28 18:07:58
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

軽戦車と自走砲が同じ箱に入るのは不思議かもですが、自走砲といってもSU-76は固定戦闘室オープントップの実質突撃砲というか戦車みたいなところがあるので、生産の都合だけでなく運用面でも同じような箱に入っちゃうんですね。ヴェスペとは雰囲気似てますが、あいつとはちょっと違うのです

2018-01-28 18:12:03
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

またVT-43装備T-80でも対空射撃がテストされたのですが、対空砲としての効果は低いと判定されてます。理由はよくわかりませんが、発射速度が12~13発/分に落ちたせいかも。砲としては従来45mmとあまり変わらない筈(弾薬筒も寸法共通)なんですが、砲尾がゴツくなって作業スペースが減ったかしら? pic.twitter.com/uXszpz6WmL

2018-01-28 18:14:58
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そもVT-42, VT-43戦車砲の不採用理由がイマイチよくわからんです。広く採用されたM-42対戦車砲と同一弾道で、従来45mm砲と弾薬共通かつ専用強装弾を使ってもいいという実に都合の良い砲で。IV号戦車の修理ついでのアップデートみたいな感じで配備済み軽戦車の順次改修みたいな事も出来たろうけども

2018-01-28 18:22:02
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

「軽戦車はもう消えゆくものなのでそこまで手間かけないでいいでしょ」という感じだったのかしらね。修理ついでの改修ってのはソ連でもそれこそSU-76IやSG-122みたいな極端な例もあるんで、やろうと思えば出来ない事ではなかった筈

2018-01-28 18:25:44
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

閑話休題。SU-76の増産、工場への爆撃、労働者割り当ての不足、軽戦車自体の能力不足など様々な要素が重なり、T-80の生産はまったく振るわないうちに1943年9月には終わってしまいます。総生産数は試作車含め恐らく76両と、従来言われてたより少ない。また生産事情の悪さから品質も低かったようです

2018-01-28 18:30:27
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ただそうした困難にも関わらず、T-80それ自体は失敗作とはみなされていなかったようで、開発者アストロフはスターリン賞に叙されてます。前年のT-70開発を賞したものに加えて二度目。要求は時代遅れだったけど要求に対する設計自体は良かったので設計者自身は優秀と評していい……という事なのかなあ

2018-01-28 18:36:02
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そんなこんなで少数生産に留まったT-80ですが、多少数が揃ってからは実戦部隊にも配備されてます。活躍と損失はまあ軽戦車なりといった風で、そしてあまりに数が少ないので特段興味深い逸話も聞かれません。次第に消耗とともに(あの神戦車!)ヴァレンタイン等に置き換えられてしまいます

2018-01-28 18:51:13
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

T-80軽戦車は間違いなくソ連軽戦車のひとつの頂点ではあるのですが。しかし対空射撃能力を除けば、実質的には独ソ戦前のT-50とそう変わらない程度の戦車でしかありません。要素によってはむしろ劣るくらい。もはや1943年に欲しい戦車ではなかったのでしょう

2018-01-28 18:53:43
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

T-80は独軍戦車に負けたというより、むしろSU-76やヴァレンタインに勝てなかったというか。「小さい戦車」としてバランスよくまとまったT-80では小さくまとまり過ぎてて全てが足らずで。小さい中では何かを切り捨てて装甲や火力に振り切ったものの方がまだ状況に追いつけたのかも

2018-01-28 18:59:36