『愛人体質～恋愛体質～』

くりす @Chrith_with_luv

～愛人体質～ １. 金曜日の夕方、あなたは定時に上がる。 急いで家に帰るため。 憂うつなひとときを見たくない。 あなたに貰った部屋の鍵 あなたの匂いに包まれるために 誰も居ないあなたの部屋に行く。 モノの少なさにまるで空き部屋のよう あなたの香りがなければ。 #恋愛体質

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２. 此処であなたの匂いに包まれて 愛されていることを感じる。 あの時のを思い出しながら あなたを感じる。 ゆうが好きや と何度も囁いてくれる あなたの言葉を思い出しながら。 #恋愛体質

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３. いつものようにあなたの居ない あなたの部屋に向かう途中 見かけてしまった 居ないはずのあなたと 同じリングをしてるゆみ子さん。 アイツはこっちに来ないから って鍵を預けてくれたのに。 どうして私が隠れなくてはならないの。 #恋愛体質

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４. ひとりで過ごす唯一の楽しみまで あなたとゆみ子さんに奪われたような ますます惨めに感じた週末を あなたは知らないでしょ。 自分の部屋に籠って居れば良かったのに たった数時間のことを後悔した。 翌朝は何も無かった顔であなたに会わなくてはならないのに。 #恋愛体質

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5. ゆうがオレの居ない時に この部屋で過ごしていたとは 思いもせんかった。 アイツがこっちに来ることは 無いから自由に来てやと 鍵を渡したのは オレの精一杯の気持ちやった。 ほんの少しでもゆうが大好きやと伝えたくて。 それがこんな風に傷つけてたなんて 全く気付きもせんで。 #恋愛体質

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6. 月曜日 いつものようにあなたは私を 部屋へと誘ったけど ゆみ子さんと過ごしただろう あの部屋には行かれなかった。 私があなたを拒んだ初めての日。 スマホの電源さえ切って 街中を彷徨い歩いた。 もしかしたら見つけてくれるんじゃないか 微かな期待をしつつ。 #恋愛体質

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7. いつも仕事上がりにオレの部屋に 来ていたはずのゆう。 体調悪そうでもなかったのに。 既読にすらならへん。 何かあったんやろか。 ゆうの部屋に行っても留守やし。 こんなこと初めてや。 #恋愛体質

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８. 見つけて欲しい気持ちと 見つかりたくない気持ちとで 懐かしいBARに入った。 《お客さん、閉店ですよ。》 眠ってしまったらしい。 《彼氏、呼ぼうか？》 『え？』 《横山さんの連絡先くらい知ってるよ。》 『和くん、上司だよ。』 #恋愛体質

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９. 《じゃあ、泊まってく？昔みたいに。》 『愛さんに言える？』 元カレの和くんに甘えてしまうのは 私の悪い癖だ。 《送っていくからちょっと待ってて。》 タクシーで家の前まで和くんに送ってもらうとそこにはあなたが居て。 #恋愛体質

くりす @Chrith_with_luv

10. 《こんばんは、横山さん。》 「えっとー」 《最近はいらしてくださらないですね。 〝BAR Midnight〟です。 また、那由といらしてくださいね。》 和くんが挑発する。 #恋愛体質

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11. 目配せをして和くんは帰って行った。 あなたをそのまま帰す訳にも行かず それに帰ろうともしないので 部屋に入ってもらう。 『何かあったん？』 まだ気付いていないのはあなたらしさであり 私が泣きたくなるところ。 「何も無いよ」と言わざるを得ないじゃない。 #恋愛体質

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12. そっと抱きしめて 『ちゃんと言いや。』 そうやってまた、優しさに溺れてしまうのは計算なの？ ホントのことは伝えられないまま あなたは帰って行った。 もしも伝えたらどうなるのかな。 困らせてしまうことだけは分かってるからきっとこのままなんだろうな。 何事も無かったように。 #恋愛体質

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13. そして金曜日 ひとりの時間が怖くて またふたりを見かけてしまうのもイヤで 和くんの店を訪ねた。 優しい和くんは何も言わない。 ただ、この前みたいに酔いつぶれ無いように アルコールを調整しているのがわかる。 その優しさが沁みる。 どうしてなんだろう。 #恋愛体質

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14. 私が好きになる人にはもう ちゃんとした誰かが居て それでも その人は私にも目を向けてくれて。 嬉しいけど 全てを手に入れることはなくて 手を離すのも出来なくて ズルい私はつい求めてしまう。 全てが欲しいと。 #恋愛体質

くりす @Chrith_with_luv

15. そんな関係を 心から楽しんでいるのではない。 好きになったのが遅いだけで あの人よりも早く出会っていたら と言い訳だけ繰り返して それでも傷つきたくなくて。 あなたはどう思ってるんだろう。 #恋愛体質

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16. ゆうの気持ちはもう この前のヤツに有るんかな。 情けないけど問い質すことすら 出来へん。 前のようにオレの部屋には来るけど 何処と無く心ここに在らず。 もう、潮時なんかな。 #恋愛体質

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17. 和くんはきっと気付いてる。 たぶんあの頃からずっと。 知っていて離れたんだ。 優しいからきっぱりと明確にせずに。 そして今も甘やかせてくれる。 優しさと狡さに。 あなたも和くんと同じなのかな。 いつかゆみ子さんの元へ 戻るんだろうな。 そろそろ 決めなくちゃならない。 #恋愛体質

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18. また、日常の月曜日。 何処かで覚悟をしつつ まだ心を決められず もう少しだけと 何事もなかったようなフリで あなたの部屋へ。 そういうところは勘がいい筈なのに 何も言わず 気づいてないような素振りで いつものように私を蕩けさせる。 あなたが言い出すまで 甘えてもいいのかな。 #恋愛体質

くりす @Chrith_with_luv

19. そしてまた金曜日。 今日も和くんのお店に行くと どうして？ 《お待ち合わせですか？》 ゆみ子さんのところに帰ったんじゃないの？ 『この前、誘ってもろたからな。』 #恋愛体質

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20. 和くんは気を遣ってくれる。 今はそれも心苦しい。 私の居ない間に何を話したんだろう。 『あんな、ちゃんと話さなあかん、思うたんやけど』 あぁ、とうとうその時が来たんだ。 未だ聞きたくないな。 #恋愛体質

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21. 『オレな、ゆうが好きなんや。』 ナンテイッタノ？ 『まだちゃんとしてへんから言われんかったんやけどな、ゆうと居りたいんよ。』 ユミコサンハ？ 『ゆうの気持ちを確かめたくて此処へ来たんよ。情けないけどな。』 ナンノコト？ #恋愛体質

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22. 《おめでとうございます》 和くん？ 《どうぞお幸せに》 私だけわからない顔をしている。 《那由、良かったな》 #恋愛体質

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23. 金曜日の夕方、あなたは定時で上がる。 ゆみ子さんの居る家へ帰るため。 それは今でも変わりない。 私は和くんの店で過ごす。 《横山さんは相変わらず嘘つきなの？》 和くんは何時でも私の味方。 きっともうすぐ という言葉が どれほど遠いか １番知ってるはずだから。 #恋愛体質

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24. いつかあなたがわたしを ゆうではなくて 那由と呼ぶ日が 本当に来るのか わからない。 いつか金曜日の夜も 一緒に過ごしてくれるようになるなら それでかまわない。 あなたがわたしをゆうと呼ぶ理由 きっとあなたは気付いていない。 #恋愛体質

くりす @Chrith_with_luv

25. 他にも似たような名前の人が居るの かもしれない。 それでも 私があなたを諦めるまで いつか その日が来るまで あなたを愛してるから。 私はあなたの１番近い所に居たいから。 【終】 #恋愛体質 pic.twitter.com/uhEgQpyTkp

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