部族化シリーズ 4話～ビーチや温泉のある都合のいい島でリフレッシュする話～

帽子男 @alkali_acid

ヤキソバをもぐつきながらヒゲ男が説明。 「この島のあたりは変なゆがみみたいのがあるらしくてさ。機械が動いてても大型獣なんかは寄って来ない。気づかないみたいだな」 「すごい！ここに皆を連れてくれば…」 「んー…」 微妙そうな表情になる親方。

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「ここにはあんまり、外におけない機械もあるんでな…うちの弟とかにおさわりして欲しくないようなのが」 「…な、なんです？」 「兵器だ」 ぼそっと横からスンシンが口を挟む。 「そ、それはどんな」 「まあ色々…」

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アマルはとまどう。 「親方…いやモトキ殿…あのうわさは本当なのですか、防衛団に森に住む部族を攻撃させないために…親方が邪魔をしているというのは…」 「…そんなおおげさなことは…」 「あの、ユミという女性を守るために…せ、拙者はむろん信じませんが…」

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元部族の若者が割って入る。 「いい加減にしろ」 「ぎゃぴっ、すいません」 「まあまあ。仕事仲間に隠しごとはしないよ。できるだけ話すさ。ここにある機械のほとんどは壊れてる。がらくただ。動くやつ、動きそうなやつには危険なのもある…でも僕がそういうのを集めてる理由は」

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「理由は」 キモオタが身を乗り出す。親方は昼ご飯の皿を持ったまま気弱に笑う。 「落ち着くのを待ってる」 「落ち着く」 「もうちょっと。居住区や部族が冷静になるのをさ」 「冷静…」 「僕も若い頃は頭に血が上りやすくてさ、どっちかっていうと部族を攻撃しろって意見だった」

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モトキは言葉を継ぐ。 「がらくたを集め出したのもそういう目的が多少あった。でも世界をあちこち見て回って、色んな部族や居住区を目にして、狭い範囲でドンパチやってもあまり意味ないし、むしろあとの暮らしがしんどくなるだけだなと感じた」 「はあ…」

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「だから。部族と居住区がもうちょっとお互いを冷静に見て、仲良しとまでは言えなくても、すぐ殺すの殺されるのとやらないようになったら、ここのがらくたを解放するつもりだ」 「そんなことできるのでしょうか…あの部族が…」 「多分だいじょうぶ」

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モトキはうなずく。 「弟はさ…まあこの前とんでもないやらかしをしたが、基本は頭の良いやつだ。あいつが東四居住区のトップになればだいぶ落ち着く。部族の方は…やっぱりちょっとずつ変わってる」 「えっ。どこが」 「いや昔はもっとひどかったんだあいつらほんと」

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ヒゲ男は皿を置いて、ちょっと下がって失礼と言ってから、から顎をわしゃわしゃする。 「ああ。なんだっけ。まあでもさ。森の部族や東四居住区よりずっと頭のおかしい奴等を沢山見てきた。もっとすごい勢いで意味もなく殺しまくってるのもいる」 「部族？」 「部族も、居住区の連中も」

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「まあ…言ってみれば居住区の連中も…非力だが都市部族みたいなもんだ。アマル君が会った双子が密林部族、スンシンみたいのが海洋部族…そして僕は」 パンダが投光器を明滅させる。 「夢見る部族？なんだいそれ」 またチカチカ。 「いつまでたっても甘い夢を見ている」

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「ははは…甘い夢ね…まあ正直、どうだっていいんだけどさ」 パンダは明滅させる。 「また逃げる」 「からむなあ今日は」 「応援してるだけ」 「ありがと」

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パンダはごろりとシートに横になる。 「ライライ殿はいい人…パンダなんですな」 「いや、あいつの応援は雑だからな…がんばれ人間全般。誰が生き残っても面白いからいいぞ、みたいな勢いだよ」 「そんな…」 「まあ僕も似たようなもんだ」

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パンダがくるっとまた寝返りを打って投光器。 「ぜんぜん違う」 「からむね」 「まあね」 子供達がかけよってくる。 「シメお昼寝したくなーい！」 「俺もへーき！」 「あっそ。じゃあ温泉いこ」

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温泉は最高。 露天風呂。男湯と女湯が分かれているが、すでになんか崩壊してつながっている。 広々使いたいのでパンダ・子供組と、男三人組で分かれて浸かる。 「こ、これは最高ですな！ママを連れてきたかった…」 「あー先生ね。喜んだだろうな」

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湯煙のむこうからロボメイドと執事が登場。 「お背中お流しいたします」 「なんとー！そのようなサービスー！！よろしからざるのでは！？」 「衣装も含め完全防水でございます」 「しかしー！」 執事のメアリーがデブオタの背を洗ってくれる。 メイドのセバスチャンはパンダを洗う。

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「あ、これはこれでなかなか…メアリー（執事）殿絶妙な力加減で」 「ありがとうございます」 アマルの騒ぎっぷり、子供等のギャイギャイを気にせずくつろぐ親方。スンシンも目を細める。 「親方」 「ん？」 「体調がいいんだな」

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「おー。それがさ。居住区の病院で受けた健康診断の結果がよくてなー。どうもシメちゃんがビビビって不思議なパワーでしてくれたせいみたい」 「…シメの力か…」 「そうなんだよ。やんなくていいっていってんのにこちが寝てるときにこっそりビビビって何度も」 「あとで俺からも礼を言っておこう」

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ヒゲ男はちょっとおもはゆそう。 「おおげさだな」 「体調がいい親方はひさしぶりだ」 「そんなに具合悪そうだった？」 「ああ」 「うーん。やっぱ禁煙すっかなあ…」

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夜はリゾートの一部でディナー。なんかすごいものが出る。 ロボのメイドと執事が備蓄とフードプリンターと海でとれた魚や島でとれた果実や山菜で作ってくれる。 「おいしー！」 「うめー！」 「拙者感激ですぞ…でもママの料理もこんな新鮮な材料があれば…」 「アマル君ほら。デザート食べて」

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親方はヒゲを剃っている。服もちゃんとしたのに着替えている。 すごくまともに見える。実は親方、居住区では行政委員の息子さんでした。お坊ちゃんだったんですねえ。当時のお仕込みがまだ利いてるのか。わりとちゃんとしたテーブルマナーもあるし。 「あーハッパやりたい…」 品格はもうだめです。

帽子男 @alkali_acid

まだ眠くないというシメとカイをパンダがわしっと抱えて寝床へ向かう。 アマル君はロボメイド＆執事と興奮して話し続けている。 がらくた屋の親方と助手は外へ。 ほろ酔い気分も抜けておだやかな空気。 「親方。大切な話ってのは」 「ん。それだ。あのな」

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「僕達の今後だけど」 「はい」 「親方と弟子ってのはやめよう。もう君は一人前だ。パートナーってことにしないか」 スンシンは茫然。ヒゲ男じゃないただのオッサンは悠然。 「パートナー…」 「責任も半々、分け前も半々。そういうやつ」 「俺と…親方が」 「モトキでいいよもう」

帽子男 @alkali_acid

部族の若者はちょっと硬直してから、ゆっくり話しだす。 「待ってくれ…俺は親方を尊敬しているが…だが…そんな…」 「モトキでいいって」 「も、モトキ…い、いや…待ってくれ…だって、親…モトキはユミって人が」 「え、関係ある？」 「今のは忘れてくれ！」

帽子男 @alkali_acid

モトキはもう剃ってしまったヒゲのあたりをなぜる。 「うんまあ。あるな関係は。がらくた屋の今後なんだが」 「あ、ああ」 「部族とも取引をしたくてさ」 「な？」 「大陸の部族にはそういうのもいたよな。あれを森の連中や…まあそのうちスンシンの故郷の連中ともやりたい」

帽子男 @alkali_acid

「だが…部族は…」 「ああ。密林部族にはユミちゃんがいる。正直、僕は冷静でいられるか自信ない。支えてもらえればありがたい」 「…親方、俺は…」 「モトキでいいって。あのさ。スンシンもいつまでも旧人のふりしなくていい。君は部族の出だ。部族に戻ってもいい」 「そんなこと」 「でまた出る」