【ここで敏感になる】福間健二 #k2fact187

福間健二 @acasaazul

車で送るよ。いいよ、歩きたい。それが次の日だったら吹雪のなかで立往生したという入門篇。彼のこと、彼女のこと、いまどうしているかと考えることはある。使いみちの決まらない死後の朝を詰め込みすぎた空のざわめき。濃いソバミツを塗ったパンを食べる。（ここで敏感になる１）#k2fact187

福間健二 @acasaazul

キスする。愛撫する。機械のなかに機械を入れて「きのう言わなかったこと」を大急ぎで言おうとするが、時間が足りない。動いていつも見ている老いた木に近づく。芽をつけている。その下でリストをもらう。移住者たち。写真をコピーした顔。工事の音がする。（ここで敏感になる２）#k2fact187

福間健二 @acasaazul

愚か者。卑怯者。そのどっちかであるか、そのどっちでもあるかしかなかった数々の場面の先で、右肩から首のつけねにかけて痛みがある。自転車で、三月、いつ通っても、大きなマンションが建ったために一部日あたりのわるくなった旭通りはどこかが工事中だ。（ここで敏感になる３）#k2fact187

福間健二 @acasaazul

余裕がなくなると、いろんなこと、言いそびれる。見えているものにも、隠れているものにも。そのためにますます追い込まれる。大きな木のまわりの建物。人の影、窓ガラスの汚れ、青空にまで。金水園、ラーメン食べて奥さんと言葉をかわす余裕はあったけど。（ここで敏感になる４）#k2fact187

福間健二 @acasaazul

すわって考えない。立って考える。たぶん本人だろう。でも確かではない後姿が簡単には消えないように。ここまで自分を動かしてきたものと、いま張り切れない気持ちにさせることとのあいだの、無理に引いた線。使われていない道具にも次がないとは言わない。（ここで敏感になる５）#k2fact187

福間健二 @acasaazul

待っていたわけではない。かすかに赤い光。斜めに、こわれる箱。この瞬間、何が死んで、ボーダーライン、滲みだせない何を生かすのか。ソースかつ丼を食べたテーブルの上のメモ。高崎線で通りすぎた「天国の南」からの微信号をかわいい文字でなぞっている。（ここで敏感になる６）#k2fact187

福間健二 @acasaazul

証言するために見る人。その視線を感じて、足を引っ込めた。そのままを、比喩とか使わずに。途中までの構想を入れたペットボトルを動かす北風、そんなにつよく吹いていない。豚と朔太郎の前橋。ここでもまた無理な線を引かれる。ソースかつ丼食べたけど。（ここで敏感になる７）#k2fact187

福間健二 @acasaazul

遅れや運休の多い高崎線。やはり遅れて、大宮からのむさしの号を逃した。心が逃げる夜の道も狭くなる。一緒にいた二人はどうしたのか。他人の人生を覗き見する目だけになって、人としては消えている。ここに、言葉。あるけど、だれもそれを言ってない。（ここで敏感になる８）#k2fact187

福間健二 @acasaazul

歌っている。でも、人に言う言葉になってない。トントン、それでもとくに不満を抱かないオーディエンスに飼われるウサギを撫でた手で、何を制するのか。風向きの変わりやすい大久保のアジア。この裏口。「かもしれない」が溶けているスープ。足首が痛い。（ここで敏感になる９）#k2fact187

福間健二 @acasaazul

温度差による症状を引きずって、その速さ。ウサギであることに飽きたウサギ。吉祥寺からのバスは、性質の、つまり態度のちがう路線が入りくみ、気をつけてるつもりでも同じ失敗をする。ここで敏感になる。本当のことを言える友人だから本当のことを言う。（ここで敏感になる10）#k2fact187