ラスト・ガール・スタンディング #1
「ずっとアタイを睨んでるでしょ」「ええー……」アサリはこわごわ横目で見ながら、「あんな恐いヤンク、うちの学校で今まで見たこと無いけど……あなたみたいに、転校生かもしれないね……」ぼそぼそと小声で会話するうち、バスはハイスクール正門前に停留する。
2011-04-08 22:51:50「アタバキ・ブシド・ハイスクール」。巨大な校長彫像と進学スローガンのノボリが生徒を出迎える。「遅刻をしない」「テスト重点」「皆勤賞」。真鍮のダルマが校舎屋上から校庭を睥睨する。
2011-04-08 23:00:47授業中、ヤモトは殆ど上の空であった。あの日の恐るべき暴力衝動、シ・ニンジャという単語の意味、自分に向かって語りかけ、そしてサヨナラと言い残し消滅した声。そういったものの正体は結局わからずじまい、二週間が経っても答えが出ないままだ。
2011-04-08 23:16:40あの日発揮した人間離れした運動能力はヤモトから去らず、あれ以来、ヤモトの奥底に内在している。今ここで窓ガラスを飛び蹴りで蹴破り、そのまま校庭へ前転しながら飛び降りる事も、やろうと思えば問題無くできるだろう。まるで呼吸するように。
2011-04-08 23:21:39「ではここの一節を、コセキ=サン。ドーゾ」「ハイ。『武士は食事しないとヨウジの値段が高騰してよくない』です」「だいぶできています」センセイの質問、それへの応答は遠くで聞こえる。
2011-04-08 23:54:34「シ・ニンジャ」がヤモトの体に宿ったのは、きっとあの日より前だ。今のヤモトが手当り次第に物や人を壊して回らないのは、そうしたくないから。つまり、以前からこの力はヤモトの中にあり、収納されていたのだ。必要となった時に引き出されたのだ。……では、いつから。ヤモトには心当たりがある。
2011-04-09 00:06:02驚くほどに晴れたあの日のキョート・リパブリック、太陽の光を受け、ゆっくりと降ってくる影。校舎屋上から落下した男子生徒。それをなす術無く見上げていた自分、暗転する意識、恐怖。
2011-04-09 00:10:05あのときヤモトの中に、何かが入り込んだのだ。そしてそれが故にヤモトは生きながらえた。そして飛び下りた男子生徒も。飛び下りた男子生徒も……生き延びた……?
2011-04-09 00:24:25