鹿太郎さんのメフィスト賞感想まとめ（ランキング追加しました）

鹿太郎 @shika1111555

清涼院流水「コズミック」読んだ。読者どころか作中人物さえ置き去りにする暴走具合に唖然。マジかよ。トリックそれ自体よりも作品構造が複雑すぎて理解が追いつかない。神の座を得た九十九十九でさえ登場人物の枠組みを超えることは叶わず、作中で明かされた真実さえもすべて作者の掌の上なんだろう

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乾くるみ「Jの神話」読んだ。やりたい放題かよ。わりかしカチッとした舞台設定から始まったせいもあって話が突如変容し出したのには困惑した。後半の暴走具合に唖然としたんだけども、それはそれとして伏線回収の射程を神話にまで拡大しちゃった仰々しさは好きだ。それにしてもこのオチは……

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浦賀和宏「記憶の果て」読んだ。おお……。アンチ名探偵小説という認識で大丈夫だろうか。安藤直樹には安藤直樹の、浅倉幸恵には浅倉幸恵の、安藤浩には安藤浩の物語がある。誰しもが自分の物語を必死で生きている中で、唯一探偵だけが他人の物語に平気な顔して首を突っこむ。責任なんか取れないのに

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結局のところ、真実を得るには自分の足で歩いていくしかないのだろう。他人の語る真実が自分を救ってくれるだなんて幻想だ。自分の世界は自分のものだ。ミステリもSFも青臭い恋愛も、あらゆる要素をそぎ落とし、ただの「安藤直樹の物語」と成り果てた本作。なんだかすごいものを読んだ。

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積木鏡介「歪んだ創世記」読んだ。たいへん楽しかった。メタ小説のひとつの極北だと思う。「小説」どころか「本」全体を使って好き勝手やりながらもテーマ通りの作品としてしっかり完成させてるのがとても良い。ルールに忠実であるが故にどんどんコメディみたいになっていった終盤の展開が大好き

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新堂冬樹「血塗られた神話」読んだ。生々しく、後味が悪い。解説によるとこれでもまだヌルいみたいで。こういう話は苦手だ。信じてもいない陳腐な神話になぞらえることでしかラストに光を見出せないのがつらい。

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浅暮三文「ダブ（エ）ストン街道」読んだ。童話の切れ端をひとつひとつ拾い集めたみたいな不思議な作品だった。誰もが迷い続ける幻の島ダブ（エ）ストン。森で、砂漠で、霧の中で迷い続けながら、目的地さえわからないままに歩いていく登場人物たち。みんな憎めなくて可愛らしい。

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特別何があったわけでもなく、ひたすら誰彼の歩みが綴られているだけなんだけど面白かった。想像力の自由を見た。読後感が爽やかなのもいいね。旅人はみな迷子で、目的地どころか今いる場所さえ見失いながら、それでもきっと幸福だ。読んでよかった

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高田崇史「QED 百人一首の呪」読んだ。タイトルの通り主役は百人一首。こういう方面に明るくない僕でもちゃんと楽しく読めた。前提となる情報がきちんと与えられたからかな。「QED」ってタイトルは内容にそぐわないんじゃないかと思ったけど、西澤解説を読んでなるほどと腑に落ちた。パズルか〜

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そして本作の核を「パズル」に見出すとなれば、百人一首パズルを小説に仕立てるために諸々の工夫が凝らされているのがわかる。キャラ造形とか殺人事件との組み合わせとか、興味がない分野にも関わらずとっつきにくくなくてキャッチーでイイ感じ。読みやすさって大事よな。

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中島望「Kの流儀 フルコンタクト・ゲーム」読んだ。世紀末すぎる……。すげー強い不良がすげーやばい不良を蹴って殴ってボコボコにする話。凄まじくシンプルだ。詳しい説明をする気が一切なくていっそ清々しい。こんな高校あるわけないだろというツッコミがいつの間にか迷子になってしまった

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後半のテンションの高さが面白くてめっちゃ笑った。マジで暴力が書きたかっただけなんだろうなって一発でわかる。だってラストとか雑すぎるよ。シンデレラの魔法が解けたみたいなオチだった。まあ終わり方はともかく、道中は娯楽小説として突き抜けていてよかった。メフィスト賞の懐の深さすごい

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お気に入りの敵は剣術家荒木。他のやつも大概ヤバいがコイツだけ生きる世界が違いすぎる。真剣携えた道着姿で徳利から酒を飲むアル中高校生っておかしくない？ 当たり前みたいに〇〇を斬るなバカ！

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高里椎奈「銀の檻を溶かして」読んだ。古き良き、って感じ。特殊設定ものを想像したけどそういう話ではなかった。確かにミステリかつファンタジーだけど両者が交わることはほぼなく、話は独立して進んでいく。ミステリもファンタジーも舞台に過ぎず、その上に立つキャラクターに力を入れた結果だと思う

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シリーズ追いかけてキャラに愛着を持てばどんどん面白くなるタイプの作品じゃないかな。僕としてはファンタジー設定を上手く使ったミステリを見てみたい

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古処誠二「UNKNOWN」読んだ。デビュー作とは思えないほど真摯で誠実な作品だった。描かれるのは自衛隊と密室。作者のことば通り閉じられているのは現場だけではなく、閉じた空間は淀み、淀みからはよくないものが生まれる。密室自体が物語の象徴になっているのが面白い。

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黒田研二「ウェディング・ドレス」読んだ。冒頭いきなり差し込まれる黒魔術のシーンとか、パラレルワールドの話とか、わざとらしいなぁと思いながら読んでたんだけど、気付けばしっかり術中に嵌っていた。ある程度構造を読まれることまで織り込み済みなんだろうか？ 怒涛の終盤がとても良かった

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僕が本作で一番好きなのは某トリック。構造は見えていて、メイントリックも察しがつく。それでも完全正解には至れず、しっかり作り込まれた真相は面白く満足のいくものだった。と、すっかり油断してたところに不意に打ちこまれたアレ。好きすぎる。いいよねこういうの！

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古泉迦十「火蛾」読んだ。火蛾というモチーフがとてもいい。論理は言葉のちからだから、特殊な場を持つこの物語において、推理はまったく役に立たない。だけれど、炎のように揺らぐ世界でそれでも推理すること、人が死に物語が動くこと、語り手がいて聞き手がいることには意味がある。あるはず

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正直ちゃんと読めてる自信はないが、ともかく組み立て方が抜群に上手くて面白かった。宗教に詳しくなくても問題ナシ。無駄がなくて美しい作品だった

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石崎幸二「日曜日の沈黙」読んだ。読み終わって脱力するというより読んでる最中ずっと脱力してるみたいな、そんな感じの作品。仮想殺人劇で張られていない伏線を回収しだしたのには笑ってしまった。真実が現実的な得に繋がらないなら真実の方を変えてしまえ！という意思がオチにも働いているのかも

鹿太郎 @shika1111555

舞城王太郎「煙か土か食い物」読んだ。終始文字に殴られてるみたいな感覚だった。ミステリみたいな顔をしておきながら新しい手がかりが解決編で出てくるわ物証はほぼないわと粗いつくりだが勿論そんなの些細なことで。暴走する物語の先にあるのは安っぽい破局と浄化で、そのチープさが何より愛おしい

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秋月涼介「月長石の魔犬」読んだ。正常と異常、欲望と退屈、現実と虚構（現実と推理？）、殺す者と殺される者。境界線の曖昧さをテーマにしたというところまでは分かるんだけど、それ以上がさっぱり分からない。退屈の象徴である死にたがりの少女が余ってる感じがする

鹿太郎 @shika1111555

曖昧さこそがテーマだから追いにくかったのかな。読解力があれば違うのかもしれないが、残念ながら僕に読解力はない……。あと、メインではないとしてもホワイダニットの処理はもう少し力を入れてほしかった。犬首屍体はインパクトが大きいから解決の処理がおざなりだとちょっと残念。

鹿太郎 @shika1111555

最後に、警視さんの存在で空気が重く暗くならないのはよかった。ポンコツかわいい。いくらなんでもインビジブルレフトハンドハンターって渾名はナシだろ……