(新連載まとめ16)朝の三分小説〜おかん〜(カレーにはジャガイモ編)
おかん250 「カラーひよこを売って年収一千万なんて話ある訳ねぇだろ。騙されてんのさ」 おかんは松本市内のヤクザハウスで怒られていた。 「マジか四百万なんて返せないぞ」 「そこでだ、返済は代わってやる。お前はこのDVDを返却してこい」 「どこに」 「飯田市内のレンタルショップさ」
2016-10-26 06:58:57おかん251 「ベイブのDVD?」 「そいつには強力なコピーガードがかかってる。コピーしようとした人間はネギトロ丼みたいになって死んだ。そして、返却期限から一年たった時に持ってた人間も異星人との戦闘中、緑色のおっさんにビームで敵ごと殺されてる」 「つまりベイブの呪いって訳か」
2016-10-27 06:58:49おかん252 「返却期限は今年の年末までだ。もしそれまでに返却するか別の誰かに譲渡しない限り、お前は異星人との戦いにおいてライバルの息子を庇って死ぬ事になるだろう」 「行けばいいんだろ、飯田市まで。ちょっと行ってくるよ」 「なら、途中の諏訪までは高速バスヤクザ号で送ってやろう」
2016-10-28 07:00:19おかん総集編二十八 カラーひよこを売るだけで年収一千万詐欺にかかったおかんはヤクザに四百万の借金をしてしまう。 さてベイブのDVDを返却しに行く飯田市といえば伊那市や駒ヶ根市を越えた長野県の最南端、長野県屈指の秘境である。 こんな所にリニアを通そうと考えてる企業があるらしい。
2016-10-30 10:53:38おかん253 高速バスヤクザ号の中は既に満員でおかん達は補助席に座った。すると隣の男が 「俺はジョーズだ。お前は」 「私はベイブ」 「やっぱりな、こいつはトトロであいつはランボー。このバスにいるやつはみんなそうさ」 多重債務者を乗せたバスではドラえもんの映画を見せてくれた。
2016-10-31 06:57:52おかん254 債務者達は諏訪市の南端で下ろされた。有刺鉄線のゲートの向側は伊那市である。そこにヤクザの指示で入った。あとは南へ進むだけだ。 「やったぜヤクザも帰った、俺は自由だ」 と債務者の一人が単独で抜け出そうとした時、地中から現れた巨大ザリガニに連れ去られた。 ここは自由だ。
2016-11-01 07:02:49おかん255 債務者の数人が行方不明になったが無事にその日の内に伊那市の中心地までたどり着いた。 「おい、お前達新入りか」 おかん達を囲んだのは作業着を来た数人の男だった。 「新入?」 「よし、Δ(デルタ)様の元へ連れて行け」 おかん達は河童王Δの所へ連れていかれ正座させられた。
2016-11-02 06:59:01おかん256 伊那市は既に河童族に占拠され、伊那市民は全員ミニ四駆工場で強制労働させられていた。かつてあった自由は失われている。 「よし、お前達はタイヤ製造部に配属したそうな顔だぞ」 とΔが言うとミニ四駆のタイヤ工場へ連行された。 「このままだとベイブの返却期限を迎えてしまうな」
2016-11-04 06:58:23おかん秋の主題歌 「赤とんぼ」 岩盤浴って重すぎるね 潰れそうな時 よぎる思いは Imagawa fire ラップを書けずに30秒 立ち止まった時は 一番嫌いな奴 いやがらせしよう 赤とんぼは飛んで行く もう誰にも止められないぜ あの山の上 燃える夕陽の向こう 確定申告しに行こう
2016-11-06 23:12:49おかん257 ミニ四駆工場の食堂でじゃがいもの入ったカレーを食べながら元市長に聞いた話だ。数ヶ月前に突如現れた河童軍団に町を占拠されたらしい。 「じゃあ河童王Δを倒せたら私も旅に出れる」 「そうやって若者達がΔに挑みマシンを破壊されましたじゃ」 「ミニ四駆で戦わなくてもいいだろ」
2016-11-07 07:37:24おかん258 「相手は河童なんだから頭の皿に小麦粉でもかけとけば死ぬだろ」 すると食堂を監督していた高等河童が 「馬鹿者がΔ様がその程度で倒せるか。Δ様はな牛だって沢山飼ってるし長野四天王に匹敵する力をお持ちだぞバーカバーカ」 と怒った。 それでもおかん達はΔ暗殺計画を企てた。
2016-11-08 06:56:51おかん259 河童王Δは一日に二度、工場内を視察に来る。その時に近づき皿に小麦粉をかけて殺す。それがおかん達の作戦であった。元市長も配給のビスケットを差し入れにくれた。 チャンスは翌朝にやって来た。 「河童王覚悟ォォ」 視察に来た河童王Δの皿には焼きたてのハンバーグが乗っていた。
2016-11-09 06:57:13おかん260 「えっ何お前の父さんハンバーグ?」 「私は下級河童とは違い水・炎属性なのさ。思い知れぇぇぇ」 河童王Δは口から熱で溶けた鉄を吐いてみせた。 「うわっ汚ねぇ」 おかん達反乱軍は再び囚われて収容施設に投げ込まれた。この日はコナンのビデオを見ながら反省文を書く刑になった。
2016-11-10 06:59:05おかん261 おかんは諦めていなかった。元市長とじゃがいもの入ってるカレーを食べながら今後について話し合った。 「正面から戦って勝てる相手じゃないんだ」 「やっぱりカレーはじゃがいも入りですね」 「えっなんだあの戦車」 おかんが窓の向こうに見たのはT-34/85(ソ連の戦車)だ。
2016-11-11 06:59:57おかん262 「あれはわしの戦車じゃ」 元市長は窓越しに戦車を見て驚いた。 「しかも十台全部じゃ」 戦車には山犬と納豆の紋章が描かれており、反市長ゲリラに乗っ取られていることが確認出来た。そこへ飛び込んで来たのは元市職員。 「たいへんどす。反市長ゲリラが河童達を襲撃し始めました」
2016-11-14 06:58:02おかん263 「どうも反市長ゲリラの勢力は市長派の人間を殺して回ってるようどすぞ」 「なんだと、これはいい機会だ。すぐに人を集めて返り討ちにしてやろう。反市長ゲリラも河童も皆殺しだ」 その後、河童王Δはじゃがいもが入っていないカレーを昼食に混ぜられ、誤って食べてしまい重症である。
2016-11-15 06:58:03おかん264 河童達はミニ四駆を利用して伊那市から逃げ出し、反市長ゲリラと市長派は地獄のような闘争を繰り広げた。 おかん達もまたこの騒動に乗じて伊那市を抜け出した。平和とはなにかを考えさせられたおかんだった。 飯田市はまだ遠い。 「カレーにはじゃがいも編」完
2016-11-16 06:59:41