あるイギリス人捕虜の語る原爆の話し~小菅信子@nobuko_kosugeさんの連続ツイート

~いまからするのは、ちょっとややこしい話しかもしれないですが、もし読んでいただけたら、さいわいです~ さいわいでした。
12
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

いまからするのは、ちょっとややこしい話かもしれないですが、もし読んでいただけたら、さいわいです。

2011-04-11 01:31:53
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

もう十何年も前のことです。私は、イギリスのケンブリッジで、太平洋戦争中に日本軍の捕虜だったイギリス人と出会いました。彼は、戦争中、日本軍の収容所で体験した悲惨なできごとを人々に伝えたい、とくに日本の若い人たちに伝えたいと、私に訴えました。ただ…①

2011-04-11 01:32:56
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

そのイギリス人元捕虜の話には、ちょっと奇妙なものもありました。彼によれば、ケンブリッッジに日本人の老人が住んでいて、自分をひどく憎んでいる、というのです。その日本人の老人が、「お前は日本軍の捕虜だった、だからお前は人殺しだ」と、彼をいきなり罵倒してきたというのです。②

2011-04-11 01:33:56
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

ケンブリッジの街中で、いきなり、日本人の老人に、「人殺しめ!」とののしられたと。何故あなたが「人殺し」とののしられなければならないのか、と私がたずねると、彼は、「私のように、日本軍の収容所に抑留されて、ひどいめにあっていた捕虜たちは、原爆によって死を免れたから」だと答えました。③

2011-04-11 01:34:50
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

「その日本人の老人の家族は、全員、ナガサキで被爆して死んだ。だから、原爆によって救われた私を憎んでいる。だから、私を『人殺し』と罵ったんだ。」④

2011-04-11 01:35:20
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

この話を聞いて、私は、なんだか変だなと思いました。そもそも、長崎の出身で、ケンブリッジに住んでいる、日本人の老人なんて、本当にいるのかしらと思いました。そこで、友人や、つてをたどって、そういう老人を探してみました。ところが、手がかりはまったくありませんでした。⑤

2011-04-11 01:36:14
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

実は、原爆投下があと数週間遅かったら、敗戦を覚悟した日本兵によって、イギリス人などの連合軍の捕虜は、皆殺しにされていたかもしれない、という説がイギリスなどにあるのです。⑥

2011-04-11 01:36:59
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

「自分は、ケンブリッジに暮らすナガサキ出身の老人に憎まれている」と語ったイギリス人は、イギリスの士官学校などで講演をしています。そういった講演のなかで、彼は、自分は原爆のおかげで助かった、けれど、日本に原爆が落ちることを望んでいた訳ではけっしてなかった、と語っていました。⑦

2011-04-11 01:37:56
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

これは、あくまでも、私が思ったことなのですが、このイギリス人元捕虜を憎んでいるという、「ケンブリッジに暮らすナガサキ出身の老人」の話は、実は、「原爆に救われた」という苦悩と強迫観念のもとに、彼自身が生みだした幻影だったのではないかと。あくまでも、私の思ったことなのですが。⑧

2011-04-11 01:38:59
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

原爆という、すさまじい破壊力のある兵器によって、おびただしい数の人々の犠牲のうえに、自分は救われたのだという罪悪感、恐怖、ジレンマが、何十年ものあいだ、彼を苦しめ続けていたのではないかと。⑨

2011-04-11 01:39:39
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

今でも、アメリカ人の6~7割が、原爆投下は正しかったと感じているといわれます。しかし、その一方で、原爆投下は正しかった、核爆弾を持つべきだという「核の勝利神話」の底には、同時に、みずから認めがたいほどの罪悪感、不安、恐怖も、沈殿しているようにみえます。⑩

2011-04-11 01:40:59
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

巨大な破壊力としての原子力は、その犠牲になった人々を、むごく苦しめ続けるだけでなく、それによって「利益」を得た(かもしれない)人々の心も苦しめ、ゆがませ、ときに閉塞的に、ときに攻撃的にしてしまうこともあると、私は思うのです。⑪

2011-04-11 01:41:38
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

原爆投下が「第1の核時代」の始まりであったとすれば、いまは「第2の核の時代」です。テロ組織の核武装への恐れ、原子力発電所が増大していく傾向などは、この「第2の核時代」の特徴的な側面です。⑫

2011-04-11 01:42:18
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

そして、核廃絶がなかなか進まない要因のひとつに、やはり、「核の勝利神話」が、いまだに根強く残っていることがあげられると思います。⑬

2011-04-11 01:42:47
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

「核の勝利神話」に、市民が対峙していく方法や手段を考えていかなくてはならないと思います。問題をあぶりだし、その重要性を指摘し、提案をおこない、その提案による解決性を示す。これらすべてを一人でできれば素晴らしいですが、そのどれかだけを論じるというのでもいいと、私は思います。⑭

2011-04-11 01:48:35
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

私は、原発をめぐる「神話」に封印され、抑圧され、他者によってしか代弁されえなかった人々の小さな物語を、ひとつ、ひとつ、解き放っていけたらと思います。もし、それができたら、原発をめぐる対話やディスカッションのための公共の地平を、もうひとつ、拓くことができるかもしれません。⑮・終

2011-04-11 01:54:04
小菅 信子 Nobuko M KOSUGE @nobuko_kosuge

市民の提案を、青年たちの提案を、政治が受けとめ、政策化していくための「回路」をひらくことが、今日の重要な課題のひとつだと思います。こういう課題に関心を持つ政治家とマスメディアが、いま、必要とされています。

2011-04-11 02:00:34